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■ LD(学習障害)ニュース #358 2002/06/06 発行 登録読者(配信)数 3,592 ■
■ LD = Learning Disabilities LD親の会「けやき」編集 1997/09/10創刊 ■
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■ 小・中学校等における特別支援教育に関する作業部会(第3回)議事要旨 ■
■ 小・中学校等における特別支援教育に関する作業部会(第4回)議事要旨 ■
■ 小・中学校等における特別支援教育に関する作業部会(第5回)議事要旨 ■
□ 編集後記 ------------------------------------ 20:26 2002/06/06 □
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■ 小・中学校等における特別支援教育に関する作業部会(第3回)議事要旨 ■
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http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/018/gijiroku/002/020301.htm
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特別支援教育の在り方に関する調査研究協力者会議
小・中学校等における特別支援教育に関する作業部会(第3回)議事要旨
1. 日時 平成14年2月18日(月)10:00〜13:00
2. 場所 文部科学省仮設会議室 A11
3. 出席者
(協力者) 市川、井上、上野、大南、上林、草野、杉山、須田、高山、長
澤、本堂、山岡、吉川の各氏
(文部科学省) 池原特別支援教育課長、鈴木視学官、安藤企画官、石塚調
査官、柘植調査官ほか関係官
4. 議事内容
(1)事務局より配付資料の説明があった。
(2)杉山委員より資料に基づき高機能自閉症等について説明の後、委員か
ら意見、質問等があった。主な意見、質問等は以下のとおり。
○高機能自閉症等の子どもがいじめられていると感じる事象はどのようなものが
あるか。
○物を隠される、物を壊される、殴られる、蹴られる等の暴力的ないじめが多い。
小学校の低学年の時は、本人が対人関係は問題にしないので、いじめられたこ
とを気にしていないが、小学校高学年、中学校と進むにつれ、それらの過去の
不快なことがフラッシュバック(思い出し)して大騒ぎを起こすことがある。
○定義に踏み込みすぎても結局医学的な定義は変化していくので、教育的には子
どもを理解するための共通理解としてのある程度のところのものでよい。高機
能自閉症と高機能広汎性発達障害、アスペルガー症候群はあまり言葉として整
理できてない。
○高機能自閉症やアスペルガー症候群を診断的区分で分けても問題行動に差は出
ないので、高機能広汎性発達障害でくくっても良いのではないか。学習障害の
中でも、非言語性学習障害はほとんどが高機能広汎性発達障害である。
○発達障害を診断できる医者が少ないため、教育現場にも混乱をきたしていると
いう医療側の問題がある。
○広汎性発達障害の中には高機能自閉症、アスペルガー症候群等があり、それぞ
れ現れ方に多少違いがあるが、本質的には共通のものだと思う。アスペルガー
症候群は「知的機能の発達の遅れを伴わず、かつ、自閉症の特徴のうち言葉の
発達の遅れを伴わないもの」と定義しているが、言葉は出てると言っても、言
葉の使い方を見ていると自閉症の子どもと変わらないことも多い。
(3)事務局より「高機能自閉症等の実態、定義、判断基準について」説明の後、
フリートーキングが行われた。主な意見は以下のとおり。
○判断基準案にある「話し言葉の遅れまたは完全な欠如」は高機能自閉症では、
幼児期まで遡らないと分からない。また、「常同的で反復的な言葉の使用また
は独特な言語がある。」の「独特の言語」は教師が気づけば良いが、気づかな
いことが多い。「反復的な変わった行動をする」は青年期はあまり高機能自閉
症では出てこない。「物の一部に持続して熱中する。」は子どもの行動をかな
り細かく見て初めて分かるのことなので、気付きにくい。
○この判断基準は誰がどのように使うのか。
△専門家チーム等で使うことを想定している。
○医療だけ、教育だけで判断するのではなく、専門家チームで医療、教育両方の
面から判断してもらうのが良い。
○校内委員会でどのくらいまで気づいてもらえるかは検討する必要はある。
○校内委員会は、担任の気付きを整理するのであって、実際の判断は専門家チー
ムで行う。医学的な基準はまだまだ変化するので、場合によっては、「医学の
基準に従い医師が判断する」といった書き方もある。教育の側からは校内委員
会における気付きのためのチェック項目が必要。LDの定義は、あくまで教育
的定義だが高機能自閉症の定義も同じように教育的な定義として出すのか。
△ADHD、高機能自閉症に関しては行動の障害であり、行動上どう対応するか
という教育的視点を込めた定義としたい。医学的な基準を参考にしながら、学
校で教育する上で活かせるような定義、判断基準にしたい。
○厚生労働省の研究班では高機能自閉症等の実態調査を行っているが、言葉の発
達の遅れについては幼児期には非常に多く表れるのだが、6歳から小学校に入
る頃には、話し言葉が完全に欠如している人はいない。生まれた時からの行動
も踏まえて判断しないと誤った判断になってしまう。高機能自閉症等でも養護
学校における教育が適当と考えられる人は沢山いる。
○高機能自閉症は知的発達に遅れが無いから特殊学級で受け入れられないとされ
ると問題である。
○学齢児童に対して高機能自閉症やアスペルガー症候群の判断基準を使う時は、
現在で分かることと幼児期にさかのぼらないと分からないことを分けることが
必要。
○高機能自閉症等の子どもの判断は、幼児期の生育歴と実際に子どもを診ること
の両方が無いと自信をもって診断できない。この領域については、専門性のあ
る医師が診断する必要があり、学校で判断するのはむづかしい。
○学校で高機能自閉症等を判断するには、子どもの日常的な行動を多くの教員の
目で見て判断することになるが、その時に学校内でつかえる判断基準があると
良い。それで気付いた点を医療等の専門機関に相談しにいくことになる。高機
能自閉症を理解している教員はほとんどいないのが実態だと思うが、医者もは
っきりと判断できないことが多い。
○高機能自閉症等の判断基準をLDの判断基準と同じように並べる必要があると
は思わない。学習上の困難や行動上の困難がどの程度かなど、子ども達が何に
困っているかがチェック出来ることが大事なのであって、子どもをADHDや
高機能自閉症等にあてはめていくことは必要ない。
○高機能自閉症の子どもの場合、授業で何をやっているのか理解することに時間
がかかったり、テストの成績の良い子どもで問題が無い子どもと思われていて
も、服の着方が分からない等、苦しんでいる場合がある。こういう子どもたち
に対して少し対応してあげると、全然違ってくることを現場の教師は知らない。
○教師は、学校で扱いにくくて困っている子どもを家庭や子どものせいにするの
ではなくて、この子の背景には何かあるのかと考えることが必要である。また、
現場では、こういう子どもがいないかというあぶり出しになることに抵抗があ
る。
○教育現場で必要なことは、現場の先生がスクリーニング出来るように具体例等
があるような判断基準を示すことである。
○高機能自閉症の子どもは自分の気持ちを表現出来ず、年齢相応の言葉が出てい
ないことがある。また、IQが高くても自分本位な理屈をこねたりする場合が
ある。教師がこういう子ども達の問題をよく理解して、しっかりと見つめてあ
げることが大事。
△校内委員会でどこまで判断を行うのかということと専門家チームの役割を明確
にする必要がある。LDの指導充実事業では、チェックリストは具体的には示
していないが、7、8割の都道府県が自作でつくったりして工夫しているよう
だ。
○教員が見て気づく項目とDSM−IV等からの診断基準の項目を突き合わせると
良い判断基準が出来るのではないか。
○高機能自閉症は専門の医師に診断してもらう必要があるが、逆に医師も学校現
場に来ないと分からないことがある。医師等の専門家レベルの判断基準と教師
の気付きのチェックリストの両方が必要。高機能自閉症に対しては、他の子と
違っていることは悪くないということを本人や教師等周りの人が理解すること
が必要。
○(高機能自閉症の定義で、「知的機能の発達に遅れが認められないこと」に関
連して)IQが高くても言語理解の問題が出来ない子どもがいるのでIQ数値
だけで決めるのは危険ではないか。
○IQ75程度という基準は日本だけで、世界的に見るとIQ70程度が一般的
である。また、同じIQでも心理検査での認知能力の偏りによって全然違うの
だから、IQを一定の形でしか使えない心理士も悪い。スクールカウンセラー
がもっとこういう子どもについて理解しなければいけない。
○子どもの状態にあった教育の現場を用意することが大事であり、そのためには
子どもの状態を教師が早く察知してあげることが大事。自閉症の場合、幼稚部
から養護学校の子どもと小・中学校を経て養護学校に入ってきた子どもと比較
すると、なんらかの方策が分かるかもしれない。
○判断基準案として(アメリカにおける精神疾患の分類と手引きの)DSM−IV
をそのまま使っているが、検討すべき。
○自閉症の一番特徴的な時期は幼児期であり、学童期についてはもう少し判断基
準を工夫する必要がある。
○判断基準について、誰がどのように使い、それをもとにどのような支援を行う
かというシステムとして考えることが必要。
(初等中等教育局特別支援教育課)
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■ 小・中学校等における特別支援教育に関する作業部会(第4回)議事要旨 ■
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http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/018/gijiroku/002/020401.htm
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特別支援教育の在り方に関する調査研究協力者会議
小・中学校等における特別支援教育に関する作業部会(第4回)議事要旨
1.日時 平成14年3月4日(月)10:00〜13:00
2.場所 文部科学省仮設会議室 A11
3.出席者
(協力者)安彦、井上、上野、大南、上林、草野、杉山、須田、高山、長澤、本
堂、山岡、吉川の各氏
(文部科学省)池原特別支援教育課長、鈴木視学官、安藤企画官、石塚調査官、
柘植調査官ほか関係官
4.議事内容
(1)事務局より配付資料の説明があった。
(2)事務局より資料に基づき「ADHDや高機能等に対する支援システムにつ
いて」、吉川委員より資料に基づき「高機能自閉症の指導方法等について」
説明の後、委員から質問等があった。主な質問等は以下のとおり。
○ある軽度発達障害の研究会で、教員に高機能自閉症と思われる子供が自分の学
校にどれくらいいるのか聞いたところ、数値にばらつきがあり、高い数値を出
したのは、全て研修を受けている教員だった。高機能自閉症は、見る目を養っ
ていると見えてくる。一方自閉症に関して最近良くあることは過剰診断である。
自閉症の特徴は人と人との関わりの中で起きてくるものだから、一般的な診断
基準だけでは分かりにくい。
○校長のLD、ADHD、高機能自閉症等への理解の程度によって、それらの児
童生徒の存在に気が付くかどうかに大きな差が出た。中学校については特殊学
級を設置していない学校では、通常の学級にいる特別な教育的支援が必要な子
供に対して対応がなかなか出来ていない。
(3)事務局より高機能自閉症に対する支援状況等について説明の後、フリート
ーキングが行われた。主な意見は以下のとおり。
○高機能自閉症の子供は幼稚園、小学校、中学校で様子が違うとのことだが、発
達的な変化があるのか。
○幼稚園と小学校の違いは、小学校に入ると集団の中で生活していく決まりがあ
り、その決まりを細かく指導することによって、徐々に集団に入っていくこと
に理解を示してくる。高機能自閉症の子供は通級指導教室に通っている場合が
あるが、通級で個別指導を受けることによって落ち着くケースがある。
○自閉症の人は、多動等の行動面の問題は改善が見られるが、感情を伝えること
や相手の気持ちをくみ取ることが非常に困難であるという基本的な問題は大人
になっても多かれ少なかれ持っている。学校の中で起こる、いじめや登校拒否
等の問題は、対人関係の問題に起因している。こういう基本的な問題を解決し
ていくことが必要。
○幼児期では積極型と受動型で著しく行動が異なる。多動性があると、積極型に
なりやすく、早く診断されている場合は受動型になりやすい。受動型の場合、
小学校低学年ではあまり問題が無いが、積極型は集団行動が出来ない。どちら
も小学校高学年を超えると、心情面の成長が見られ、他者の役割を演じること
が出来るようになるが、その前後に激しいいじめの経験があると、迫害的な対
人関係が固着してしまい、その後にむしろ問題行動がエスカレートする場合が
ある。被害的な対人関係を経験した場合、青年期以降に犯罪行為に走るケース
もまれにある。
○子供が高学年になって変わってきているのに、教員は子供を「小学生」という
一括りでしか見てないため、変化に気づいていないという場合があるのか。
○小学校高学年になるまでが大事で、それまでにいじめ等を激しく受けると、高
学年で本来ならば社会的役割を学ぶところが、出来ないままになってしまう。
小学校低学年が一番大事な時期である。小学校1,2年生では、集団教育にな
じみにくい子供がいるので、ある程度、個別教育で対応してから集団に入れて
いくのが良い。
○高機能自閉症等の子どもについては小学校1,2年生の頃が大事な時期であり、
1,2年生の時にどう過ごすかで、3年生からかなり状態が変わってくる。
○障害のある子供に限ったことでは無いが、小学校低学年では高学年と違った指
導体制を考える必要がある。
○発達障害の子どもについては、根本的な症状は一生付き合っていくものであり、
1次症状の特徴は簡単に改善するものではないが、周りが理解して対応する仕
組みをつくって、2次症状をうまく解決していくことが大事。ADHDの場合、
薬の効く子供の場合だと、薬が効いている間の教育が成就感や自信をつくり、
2次症状への抵抗力になる。また、自閉症の子供に関しては、ある程度の行動
修正のプログラムが効果的である。言葉では理解する力があっても、行動にう
まくつながらない子供の指導を考える必要がある。
○小学校中学年から高学年にかけて見られる2次的な問題として、自己イメージ
を踏まえ、自分を大切に思うという自尊感情の欠如がある。低学年の時の教員
の対応やクラスでの受け入れ状況等によって自尊感情を持てないままだと、問
題が大きくなる。1次的な症状を理解して、一般の子どもに比べて自尊感情も
つことが困難な、こうした子どもに対するケアを考える必要がある。
○自尊感情については吃音の人も共通する部分があり、自尊感情が高い人たちと
低い人たちがいる。思春期にいじめにあったり、どもってはいけないと指導さ
れて、どもるまいとしてきた人は自尊感情が育っていない。どもっても良いと
指導されて、かつサポートする人がいる環境で育った人は自尊感情が育ってい
る。自尊感情が育ってくるのは思春期といわれているが、小学校の高学年から
思春期に入る子供がいるので、小学校低学年から先を見通した指導が必要。
○ADHDやLDの子供達は基本的に通常の子供と同じ感情の持ち方をしている
と思うが、自閉症の人はそれとは異なり、例えば、昔の迫害体験がフラッシュ
バック(記憶の呼び戻し)するケースなどがあり、心情の在り方そのものがか
なり違う人がいる。
○子供の良い所を伸ばしてあげることは大事なことだが、自分を支える自己制御
の心を小さい頃から養うことも必要。
○ADHDや高機能自閉症の子どもは、一般の子どもとは違った筋道を通して社
会が見えており、どれだけ彼らの側から見える社会を理解し、学齢期に抱えて
いる困難さ一つ一つを補っていけるかが重要。基本的な障害の部分を本人も周
りも受け入れ、学校を一緒に生きていくための場とする必要がある。高機能自
閉症の子どもには、自己への評価を高め、ありのままの自分を受け入れられる
ように教育的支援することが必要。
○自閉症の人達は感情が乏しいわけではなく、感情を表出することが出来ないの
だが、周りの人達がそれを知らない為に、自閉症の人の心を受け止めてこなか
った。
○自閉症の人に対して共感するだけでなく、お互いに共感しあえる環境をつくる
必要がある。
○学校で問題行動を起こさないことと将来職業に就けることは違う。問題行動を
起こす子どもについては周りが問題に気が付いて、問題に対してアプローチす
るが、逆に成績が良くて問題も起こさない子どもについては、周りがその子ど
もが抱えている問題に気づかないまま教育期間が過ぎ、結局大学まで出ても、
社会的自立が出来ないことがある。高機能自閉症等の子どもに対しては中学校
レベルから職業訓練が必要。
○普段はうまくいっていても、何かトラブルが起きた時の対応力が非常に弱い子
どもに対して、その時に適切な支援を与えられるケアシステムが必要。こうい
う子どもたちに対しては受験時の配慮も必要だが、学校に入った後もカウンセ
リング等、必要に応じた支援が必要。
○最終的な目標は社会的自立することだという共通理解を、学校や保護者で認識
していない人がいるが、その共通理解が図られていないと、ADHDや高機能
自閉症の指導方法等を示したとしても、その場だけの対応になってしまう。
○LD児の保護者の間でも、学校の先生と積極的に情報を交換したりする人と、
学校の先生が子どもの状況を伝えても、うちの子どもは障害じゃないと拒否す
る人とがいる。LD、ADHDや高機能自閉症については一生涯の問題と捉え
て、幼児期から学校卒業後まで連続した支援のもとに、社会的自立させる必要
があるが、保護者の中には、高校卒業するまで通常の教育を受けさせることだ
けを考えている人もいて、気が付くと子どもは様々なことが身についていない
ケースがある。
○自閉症の子どもも目標をうまく設定して段階的な指導を行うと他の人との共同
作業も出来るようになる。教師には、専門性を持ちながら感性を豊かに高めて
いくことが求められている。このため、各学校において教員の研修の機会の充
実を図る必要がある。
○14年4月から教育課程が変わるが、その中核には、その子らしく、自分を伸
ばしていく自己実現をサポートしていくことや人とかかわる力をどう伸ばして
いくかということが重要な目的となっており、障害のある子どももない子ども
含めて、今までの教科指導における知識優先の指導から変わってきている。
○LDに対する校内委員会や専門家チームはLDだけでなく、ADHDや高機能
自閉症等、通常の学級に在籍する特別な教育的支援が必要な子ども全体に対し
て拡充するのが良い。LDの場合は、教育側が責任を持ってその子どもの必要
なニーズを判断し、それに基づいて具体的に指導を行うという、あくまで教育
側が主導の対応であったが、ADHDや高機能自閉症等の場合は、明らかに医
学の診断領域であるので、専門家チームにおいても、LDの場合よりADHD
や高機能自閉症等の場合はさらに医師の参加の度合いを高める必要がある。
(初等中等教育局特別支援教育課)
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■ 小・中学校等における特別支援教育に関する作業部会(第5回)議事要旨 ■
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http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/018/gijiroku/002/020501.htm
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特別支援教育の在り方に関する調査研究協力者会議
小・中学校等における特別支援教育に関する作業部会(第5回)議事要旨
1.日時 平成14年3月18日(月)13:30〜17:00
2.場所 文部科学省仮設会議室 A11
3.出席者
(協力者)小林、安彦、市川、井上、上野、大南、上林、杉山、須田、高山、長
澤、本堂、山岡、吉川の各氏
(文部科学省)池原特別支援教育課長、鈴木視学官、安藤企画官、石塚調査官、
柘植調査官ほか関係官
4.議事内容
(1) 事務局より配付資料の説明があった。
(2) 事務局より資料に基づきADHD、高機能自閉症等の定義、指導方法等
の意見の整理について説明の後、フリートーキングが行われた。主な意
見は以下のとおり。
○ADHDの子供は情緒障害通級指導教室だけでなく、言語障害通級指導教室に
も通っている例があると聞いている。
○ADHDや高機能自閉症への通常の学級における指導の方法としては、「学習
障害児に対する指導について(報告)」にも示された、授業時間外に教科につ
まづきのある児童生徒が自由に学習できるオープン教室といったものも良いの
では。また、「学習障害児に対する指導について(報告)」に示された、通級
の指導に類似した指導の場を設けることを検討することも課題である。教員の
指導力や理解を進める方策として学校心理士等の民間資格やこの春から認定さ
れるLD教育士なども活用して良いのでは。
△オープン教室については、既に取り組んでいる県があり、学習障害(以下「L
D」児だけでなく、多様な子供が参加していることが多いと聞いている。
○ADHDや高機能自閉症等の子供に対して、高校や大学の受験に関する支援も
する必要があるのではないか。
○ADHDや高機能自閉症等に対する検討には、高等教育にもつながっていく視
点も必要。
○高機能自閉症の判断基準には、特定のものへのこだわりの現れのひとつとして
「ファンタジー(空想の世界)」への没頭もある。
○ADHDや高機能自閉症等の診断は医師が行うものだが、LDについては、教
育、医学、心理学の総合的な判断が必要である。
○高機能自閉症等に対する職業教育の整備が急務という事だが、普通学級で行う
のか、特殊学級や盲・聾・養護学校で行うのかが課題である。
○盲・聾・養護学校の新しい学習指導要領においても、就労体験が示されており、
最近では、中学校で、高校でどういう勉強をしたら良いのかという意識付けを
するために、新聞記者や看護婦等の実際の仕事を1日見学するような教育を行
ったり、総合的な学習の時間で、大学や老人の施設の見学を行ったりしている。
○中学校の進路指導や総合的な学習の時間の中で高機能自閉症等の子供に対する
配慮を行うことや、高等学校で具体的な就労体験ができるかが課題である。
○高機能自閉症等の子供が小学校や中学校を卒業していくまでに、適性がどこに
あるか把握して、得意とする分野で職業訓練ができないか。
○LDやADHD、高機能自閉症等の保護者は、高校まで通常の学級で教育を受
けさせようとすることが多いが、そこでは通常、身に付くはずの社会性や対人
関係等が身に付かないことが多いので、LDやADHD、高機能自閉症等に対
しては、職業教育以前に、自立する為の社会性や心構えを学ばせる必要がある。
○高等学校に特殊学級のような場を設置して、高機能自閉症等の職業教育を行う
ことも検討する課題の一つではないか。
○小・中学校の先生は、高校の先生に比べて、障害のある子供について比較的理
解がある。高等学校に対してもLDやADHD、高機能自閉症等の子供の理解
啓発を図る必要がある。
○ADHDの場合、高校でのサポートが非常に大事。高校段階になると、通常、
自分で自分の行動やスケジュールを管理できるようになるのだが、ADHDの
子供はそれができないことが多い。単位制の高校は、特に、ADHD等の子供
に対する理解と支援を行ってほしい。
○子供のデータが次の学年や転校先等に送られる、カルテのようなシステムが必
要。私立の小・中学校に対してもADHD等の子どもへの理解を深めてもらう
よう情報提供等をしてほしい。
○国立特殊教育総合研究所において個別の指導計画も含めた子供のデータのファ
イルについて研究を行っているところである。基本的には保護者がファイルを
保管し、プライバシーに関する部分は外せるようにできるものを考えている。
○現状では個人情報の保護に注意をはらいすぎて、必要な情報を伝達することが
できていない場合がある。
○子供の情報を学校のものと考えないで、あくまで保護者のものと考え、管理は
保護者が行うのが良い。
○保護者がいろいろな機関に相談に行く場合、どこに相談に行っても、子供の状
態を1から全部伝えなければならないことがある。子供の情報をずっと引き継
いでいけるファイルのようなものがあれば、手間も省けるし、昔の情報を忘れ
てしまうこともない。その子供にはどのような特別な教育的支援が必要かとか、
この時期にはどのような相談や診断を受けてきたかといったデータがまとまっ
ているものが必要。
○アメリカの場合、LDのリソースルームでは教科の補充指導が多いが、今の日
本の教育課程にあてはめると通級指導そのものをLDに適用するのは難しい。
LDの学力面に対する補充指導のようなものを行うのなら、通級による指導に
類似した場を検討する必要がある。
△現在、研究開発学校において、LDも含め、週3〜8単位時間の枠を超えた通
級指導の研究について取り組んでいる。
○通級指導としては自校通級や時間通級があるが、併せて巡回指導も効果のある
指導の一つであると考えられる。
○通級指導の制度ができた時、対象としてLDやADHDは含まれていなかった
ので、LDやADHDに対する通級指導について、週3〜8単位時間が適して
いるかどうか検討する必要がある。また、現状としては年間280単位時間だ
が、均等に週3〜8単位時間で行うのが良いのか、学期ごとに時間を変えるの
が良いのかも検討する必要がある。
○教員の指導力や理解の向上が必要。また、現場の先生がすぐに専門家に相談出
来るような体制づくりが必要。都市部は通級による指導で良いが、対象の子供
が集まらない地方では巡回指導を行う必要がある。
○通常学級に在籍するADHDや高機能自閉症等に対して各学校に情緒障害特殊
学級を設置する等の支援方策が具体化される条件整備を検討してほしい。教員
の指導力向上の為の研修等を充実する必要がある。
○教員の指導力の向上はもちろん必要だが、条件整備も会わせて検討する必要が
ある。中学校において職業教育に向けた就労体験等が必要である。
○個人ファイルのような子供の情報を学校が全部持っていると問題が起こるが、
母子手帳のように保護者が持っていて必要に応じて関係機関に提示できるよう
にすると良い。ただそのようにした場合、保護者がその情報を確実に学校や相
談機関等に提示するかが心配ではある。
○特殊学級の担任にも特殊教育免許を保有している教員を配置する必要がある。
また、ADHD等の医療サイドの専門家も少ないことが問題である。
○教育職員免許法施行規則第6条において「教育の基礎理論に関する科目」に
「障害のある幼児、児童及び生徒の心身の発達及び学習の過程」を含めること
が必要とされていて、LDやADHD等に関する内容を含めている大学が見ら
れはじめている。
○LDやADHD等の子供の保護者の中には、自分の子供を障害のある子供と見
ないでほしいと言う人がいる。そのような保護者には、理解を求めるというよ
り、その子供にこういう指導をすると、こういう効果があったという実績を示
す方が良い。ADHD等の子供に対して本当に効果のある教育を行う必要があ
る。
○教育委員会の特殊教育担当部署から小・中学校に文書を出すと、そのまま特殊
学級の教員だけに渡されてしまうようなことがあり、障害や特別な教育が必要
と書くと、小・中学校の通常学級の教員が自分たちで考える問題では無いと思
うことがある。
○「学習障害児に対する指導について(報告)」が出た時、LDの子供は基本的
には通常の学級で指導していくことを打ち出し、通級指導に関しても類似した
場の検討の必要があると示された。そのように学校の中で工夫して考えなけれ
ばいけないという方向性が示されると、学校全体でLDの問題を検討するとこ
ろが増えた。ADHD等の子どもに関しても、こういう子供たちは通常の学級
に在籍していて、学校全体で対応していかなければならない問題だと最初に打
ち出すことが必要である。
○教育システムの中で保護者のニーズがどこでくみとられるかを検討する必要が
ある。
○個別の指導計画を作成する時、保護者とともにつくるのが基本である。ADH
D等の実態を把握する段階で、判断基準をつかう時も保護者の考えや家庭での
状況を加味することが大事である。
○個別の指導計画は、作成する途中で保護者の意見をくみ取る必要があるのは基
本原則である。しかし専門的なことを保護者が全部分かっているかというとそ
うではないので、必要な部分について保護者の意見をとり入れ、コンセンサス
を得ることが必要。
○保護者は、子供の状況をよく理解しないで、なにがなんでも通常の学級という
ことも多い。親の判断が全てではなく、子供の利益が一番大事である。
○通常の学級の中に明らかに個別の配慮が必要な子供がいた場合、担任の先生は
通常の学級の問題としてその子供の対応を考える必要がある。
○例えば40人の子どもがいる通常学級にLD等の特別な支援が必要な子供が1
人いて、その子供をサポートをする教員等が配置された場合、そのLDの子供
への対応はそのサポート教員の範疇で、他の39人の子供とは別の問題だと担
任が考えることがある。サポートがついても、担任はあくまで40人の学級の
中の問題として考えていくことが必要。
○特殊教育の対象の子供は全体の約1%なので、通常学級の先生には自分たちに
は関係の無い世界だと思っている人もいることがある。特殊教育と通常学級の
教育の垣根を低くする必要がある。
○保護者自身にLD、ADHD、高機能自閉症等の子供のことを積極的に理解し
てもらう必要がある。
○保護者の中には、養護学校や特殊学級に子供を入れたくないという人もいるが、
例えばその子供を通級指導教室等で指導し、その様子を見てもらうと、その子
供には養護学校等の方が良いのかもしれないと納得する場合もある。現場の先
生と教育委員会で保護者と良く話し合いをしながら、保護者に理解してもらう
必要がある。
○専門家チームが子供をLDと判断すると、その判断は変わることが無いと思わ
れがちだが、定期的に判断等を行って、子供の状態が改善されたなら、対応は
変わっていくシステムを打ち出していると保護者も安心する。
△LDの場合では専門家チームの判断は、2〜3年のスパンで考えられているが、
ADHDや高機能自閉症の場合、もう少し短いスパンで考える必要があるかも
しれない。
○校内委員会とは別の役割として、特別支援教育をコーディネートする立場の者
が必要だが、実際には、校内にいた、経験のない者がコーディネーターとして
の力量を持つまでになるのは困難だと思う。
△特殊学級等がある学校では、特殊担当の先生がコーディネーターの役割を果た
している事例もある。
○学校の規模によっては、設置できる委員会等の数にも限界があるので、学校規
模を考えながら支援体制をつくる必要がある。
○新しく委員会等をつくることばかりではなく、今ある委員会を活用する等の工
夫が必要である。
(初等中等教育局特別支援教育課)
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□ 編集後記 ------------------------------------ 20:26 2002/06/06 □
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★ 6月9日東京で開催予定のNHKフォーラムに関するお問い合わせを受ける
ことがございます。申し訳ありませんが、すでに定員に達したため締め切ら
せていただきました。
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★ LDニュースへ講演会等のイベント情報の掲載を希望される方へ・・・ ★
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親の会「けやき」連絡先 E-mail: keyaki@box.club.ne.jp [1999.03.12 から]
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