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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ LD(学習障害)ニュース #259 2001/05/13 発行 登録読者(配信)数 3,125 ■ ■ LD = Learning Disabilities LD親の会「けやき」編集 1997/09/10創刊 ■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ 講演会 LD児家庭での対応の在り方 札幌 05/20 講師事情により中止 ■ ■ 講演会 LD児家庭での対応の在り方 旭川 05/19 講師事情により変更 ■ ■ 講演会「LD及びその周辺児への理解と対応」/横須賀市 2001/06/16 ■ ■ 佐々木正美先生 講演会「私の中の自閉症療育論の歴史」 2001/09/23 ■ ■ よこはま発達クリニック 『夏期集中講演会』  2001/08/02-03-04-05 ■ ■ 京都教育大/コミュニケーション障害を考える 2001/10/6-13-20 11/10 ■ ■ 『アスペルガー症候群とは』 よこはま発達クリニック 内山 登紀夫 ■ □ 編集後記 ---------------------------------- 00:15 2001/05/13 □ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■□■□■ この LDニュース は「等幅」フォントでお読みください ■□■□■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ 講演会 LD児家庭での対応の在り方 札幌 05/20 講師事情により中止 ■ ------------------------------------------------------------------------ 主催者より下記のお知らせがありました。 ----------- 講師中川先生のご事情により、講演会は中止となりました。 00:10 2001/05/13 主 催 : 北海道LD親の会連絡協議会 日 時 : 2001年5月20日(日) 午前10:00時開演 会 場 : 札幌市生涯学習センター ちえりあ  6階 講堂       札幌市西区宮の沢1条1丁目1−10  TEL 011-671-2200 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ 講演会 LD児家庭での対応の在り方 旭川 05/19 講師事情により変更 ■ ------------------------------------------------------------------------ 主催者より下記のお知らせがありました。 ----------- 講師中川先生のご事情により、講演会は講師並びに内容を変更して実施します。 詳細が分かり次第再度お知らせいたします。 00:10 2001/05/13 主 催 : 北海道LD親の会連絡協議会 日 時 : 2001年5月19日(土) 13:30開演 会 場 : 旭川市市民文化会館  大会議室 旭川市6条7丁目 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ 講演会「LD及びその周辺児への理解と対応」/横須賀市 2001/06/16 ■ ------------------------------------------------------------------------ 日 時  2001年6月16日(土)  13:30〜15:30 標 題  「LD及びその周辺児への理解と対応」 講 師  柘植 雅義先生 国立特殊教育総合研究所知的障害教育研究部室長 会 場  横須賀総合福祉会館 視聴覚室 構 成  13:00〜       受付             13:30〜15:00  講演      15:00〜15:30  質疑応答 対 象  保護者・教育関係者・保育者・学生など70名 参加費  会員:無料  非会員:¥500 申し込み・問い合わせ Eメールアドレス tokirou@aol.com  * 保育有り(申し込みは5月末まで 保育料¥500) 主 催  神奈川LD親の会「にじの会」 後 援  神奈川県教育委員会  横須賀市教育委員会  三浦市教育委員会      逗子市教育委員会  葉山町教育委員会  財)横須賀YMCA ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ 佐々木正美先生 講演会「私の中の自閉症療育論の歴史」 2001/09/23 ■ ------------------------------------------------------------------------ よこはま発達クリニックの許諾を得て転載します。転載もとは下記。 http://www.ypdc.net/kouennkai2.htm --------------------------------- 佐々木正美先生は自閉症の支援プログラムとして世界的に高い評価を得ているT EACCHプログラムを日本に初めて紹介された方で、現在もその普及に精力的 に努めておられます。今回は、『わたしの中の自閉症療育論の歴史』というテー マで、長年の臨床やTEACCHとの出会いを通して、自閉症の療育に対する先 生ご自身のお考えがどのように変わってこられたかをお話ししていただきます。 常に自閉症の人とその家族の立場に立ち、暖かいまなざしで臨床や教育活動を続 けてこられた佐々木先生のお話は、21世紀の自閉症療育を実り豊かなものとして いくために、きっと役立つことでしょう。皆様のご参加をお待ちしております。 【講師紹介】 佐々木 正美 先生 1966年 新潟大学医学部卒業 1969〜1971年 ブリティッシュ・コロンビア大学医学部児童精神科(レジデント) 現在、よこはま発達クリニック・顧問,川崎医療福祉大学医療福祉学部・教授、 横浜市総合リハビリテーションセンター・参与、ノースカロライナ大学医学部精 神科・臨床教授 著書:自閉症療育ハンドブック(学習研究社)    自閉症のトータルケア(共著、ぶどう社)    自閉症の療育者(共著、神奈川県児童医療福祉財団)    子どもへのまなざし、続・子どもへのまなざし(福音館書店)    育てたように子は育つ(相田みつを.書、小学館)ほか 訳書:自閉症のコミュニケーション指導(ワトソン他著、監訳、岩崎学術出版社)    自閉症発達単元267(ショプラー他著、監訳、岩崎学術出版社)    自閉症スペクトル 親と専門家のためのガイドブック    (ウィング著、監訳、東京書籍) 【開催日時】 2001年9月23日(日・秋分の日) 午前10時〜12時 【開催場所】 メロンディアあざみ野 東急田園都市線・横浜市営地下鉄「あざみ野」駅徒歩5分 JR新横浜駅より地下鉄で15分 【聴講料】 6,000円 【お申し込み・お支払い方法】 銀行口座振込:下記口座に聴講料をお振り込みいただいたうえ、葉書またはファ ックスに  1]「佐々木正美先生講演会申し込み」、2]氏名、3]連絡先住所、4]連絡先電話 /FAX番号、5]振込人名義、6]振り込み日を明記して、よこはま発達クリニックあ てお送りください。お申し込みおよび入金確認後3週間以内に入場券と会場地図 をお送り致します。 ※ご都合でキャンセルされる場合は講演日の2週間前までにご連絡いただければ、 お振り込みいただいた料金を返金致します。 【お申し込み・お問い合わせ先】 振込先:富士銀行港北ニュータウン支店 普通・1417748     口座名義:よこはま発達クリニック 〒224-0032 横浜市都筑区茅ヶ崎中央 7-7 レスターテ港北2F       よこはま発達クリニック 電話:045-942-1077  ファックス:045-942-1099   ホームページ:http://www.ypdc.net  e-mail:info@ypdc.net ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ よこはま発達クリニック 『夏期集中講演会』  2001/08/02-03-04-05 ■ ------------------------------------------------------------------------ よこはま発達クリニックの許諾を得て転載します。転載もとは下記。 http://www.ypdc.net/kouennkai2.htm --------------------------------- よこはま発達クリニックでは下記のとおり『夏期集中講演会』を開催いたします。 実際に療育や就労支援にあたっている専門家が、発達障害の医学的な基礎知識、 幼児期から成人期に至るまでの具体的な支援方法などについて、わかりやすく解 説します。 1. 診断の意義/自閉症スペクトラム入門 2001年8月2日(木)午前10時--12時30分 講師:吉田友子(児童精神科医師) 2. 自閉症スペクトラムの療育概論 -TEACCH入門- 2001年8月2日(木)午後2時--4時30分 講師:内山登紀夫(児童精神科医師) 3. 自閉症 -特性理解から生活支援へ- 2001年8月3日(金)午前10時--12時30分 講師:藤岡宏(児童精神科医師) 4. 自閉症スペクトラムに併存することの多い障害/医学的対応 2001年8月3日(金)午後2時--4時30分  講師:吉田友子(児童精神科医師) 5. 高機能自閉症スペクトラムの子どもへのコミュニケーション支援 -幼児期から学童期を中心に- 2001年8月4日(土)午前10時?12時30分 講師:飯塚直美(言語聴覚士) 6. 発達につまずきのある子どもの学校生活 2001年8月4日(土)午後2時--4時30分 講師:水野薫(セラピスト) 7. ジョブコーチによる就労支援 2001年8月5日(日)午前10時--12時30分 講師:小川浩(仲町台発達障害セ) 8. LD・高機能自閉症の青年・成人期の支援 〜就労支援を中心に〜  2001年8月5日(日)午後2時--4時30分  講師:梅永雄二(明星大学) 【開催場所】 メロンディアあざみ野 東急田園都市線・横浜市営地下鉄「あざみ野」駅徒歩5分 JR新横浜駅より地下鉄で15分 【聴講料】 8回分一括申し込みで40,000円、1回ごとのお申し込みは1回につき 6,000円 【お申し込み・お支払い方法】 銀行口座振込:下記口座に聴講料をお振り込みいただいたうえ、葉書またはファ ックスに 1]ご希望の講演番号(「1〜3、7」のように、必ずご記入ください)、 2]氏名、3]連絡先住所、4]連絡先電話/FAX番号、5]振込人名義、6]振込み日 を 明記してよこはま発達クリニックあてお送りください。 お申し込みおよび入金確認後3週間以内に入場券と会場地図をお送り致します。 ※ご都合でキャンセルされる場合は講演日の2週間前までにご連絡いただければ、  お振込みいただいた料金を返金致します。 【お申し込み・お問い合わせ先】 振込先:富士銀行港北ニュータウン支店 普通・1417748     口座名義:よこはま発達クリニック 〒224-0032 横浜市都筑区茅ヶ崎中央 7-7 レスターテ港北2F       よこはま発達クリニック 電話:045-942-1077  ファックス:045-942-1099 ホームページ:http://www.ypdc.net   e-mail:info@ypdc.net ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ 京都教育大/コミュニケーション障害を考える 2001/10/6-13-20 11/10 ■ ------------------------------------------------------------------------ http://www.kyokyo-u.ac.jp/KOUKAIKOUZA/HEISEI13/0113.html ----------- 主催:京都教育大学/京都府リカレント教育推進協議会 コミュニケーション障害を考える 知的障害・難聴・口蓋裂、自閉性障害児の発達・教育・コミュニケーションにつ いて、教育及び福祉関係職員と共に臨床的検討を加え問題解決に貢献します。 講義と話し合いの形式をとり個人相談にも応じます。   募集期間 8/7〜9/8 対 象 教育・福祉施設関係職員保健婦 受講料 5,800円 (申し込み時必ず確認して下さい) 募集人数 20人 場 所 本学講義室 開講日  15:30〜17:30  計5回 10月 6日(土) 脳から見た障害児の発達・教育・コミュニケーション           友久 久雄 本学教授 10月13日(土) 学習障害とその援助           萩尾 藤江 高槻市立障害者福祉センター発達相談員 10月20日(土) 自閉性障害児のコミュニケーション           滋野井一博 城陽市心身障害児通園施設ふたば園長 10月27日(土) 障害児のコミュニケーション           小谷 裕美 本学助教授 11月10日(土) きこえとことばの発達 川野 通夫 本学教授 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ 『アスペルガー症候群とは』 よこはま発達クリニック 内山 登紀夫 ■ ------------------------------------------------------------------------ http://www.ypdc.net/asuperugar2.htm から全文を転載。 ------------- はじめ ------------- ● アスペルガー症候群とは(V1.00) ● 最近豊川の事件と関連してアスペルガー症候群が大きく報道されました。アスペ ルガー症候群という一般にはほとんど知られていなかった障害が、このようなか たちで知られるようになったことは非常に残念なことです。新聞によっては見だ しに大きくアスペルガー症候群とありましたから見だしだけを読む多くの読者は なんとなくアスペルガー症候群と犯罪は関連が深いという印象を受けたのではな いかと思います。しかし実際には一般の人と比べてアスペルガー症候群の人が犯 罪を犯す確率が高いわけではありません。ここではアスペルガー症候群を正しく 理解していただくことを目的に解説させて頂きたいと思います。 ● 筆者について ● まず本稿を書いている私の立場を明らかにしておきます。この文章に関する責任 の所在をはっきりさせるためです。私はよこはま発達クリニックという発達障害 を対象にするクリニックで診療をおこなっている児童精神科医です。発達障害に 関しては児童精神科の専門病院や知的障害者のための福祉施設で約10年間臨床に たずさわっていました。その間ノースカロライナ大学医学部精神科TEACCH 部に短期留学し自閉症の療育について学びました。1997年9月から1年間全英自 閉症協会の運営する診断部門(The Centre for Social and Communication Disorders、別名エリオットハウス)で主にアスペルガー症候群の診断アセスメ ントについてローナ・ウイング、ジュディス・グールド両氏に学びました。ノー スカロライナ大学留学時は朝日新聞厚生文化事業団の、エリオットハウス留学時 は田中徳兵衛国際ロータリークラブ奨学金の援助を頂きました。どちらの留学も 日本自閉症協会の推薦を頂いています。このような自分自身の経歴からも、今回 の事件報道で誤解されがちなアスペルガー症候群について意見を表明することで 児童精神科医としての社会的な使命を多少なりとも果たしたいと考えています。 ● アスペルガー症候群とは ● 以下アスペルガー症候群についてローナ・ウイング博士(以下ウイング)の考え を中心に解説します。ウイングの考え方はイギリス、ヨーロッパでは広く受け入 れられていて、全英自閉症協会ではウイングの考えにそってアスペルガー症候群 の援助を行っています。 アスペルガー症候群を正しく理解するためには先ず自閉症を理解しなければなり ません。遠回りのようですが、まず自閉症の解説からはじめます。 ● 自閉症とは ● 現在自閉症と呼ばれている障害を医学・心理学的な視点から検討し、世界で最初 に論文として報告したのはアメリカの精神科医レオ・カナーでした。カナーは 1943年に11例のユニークな行動パターンを示した子どもを報告し、翌年の論文で 「早期乳幼児自閉症」と名づけました。現在自閉症、自閉性障害、小児自閉症と 呼ばれる障害は、基本的にカナーの論文の内容を引き継いでいます。カナーは 「早期乳幼児自閉症」の特徴として5つにまとめました。以下に順を追って説明 します。 1. 人生の始まりから普通の子どものような方法で人や状況と関わりあうことが   できない。   一人でいるのが苦にならず幸せそうで、赤ちゃんの頃はいわゆる「手のかか   らない」子だったりします。周りに人がいても関心を示さず、まるで人がい   ないかのように振舞ったりします。 2. 言葉がないか、あっても他人に意思を伝えるために言葉を使わない。例えば   子守唄、祈りの文句、大統領の名前などは覚えますが、コミュニケーション   の目的で言葉を使わないで聞いた言葉をオームがえしをしたり、独り言を言   うことが多いのです。自分のことを”you”, 相手のことを”I”というなど   代名詞を逆転して使用することもあります。 3. 物事をいつまでも同じにしておこうとする欲求が強く、そうでないと非常に   不安になる。いわゆる「こだわり」です。物事の手順や家具の配置の変更な   どで不安になり必死に抵抗したりします。活動は単純な繰り返しになりがち   で、自発的に行動することが少なく、興味の幅が狭かったり、物をくるくる   回すような繰り返し行動に何時間も浸ったりします。 4. 人に対する興味は少ないが、物に対しては強い関心を示し、物を器用に操作   する。 缶のふたとか、枯れ葉など一般的にはあまり価値が無いものに強く   執着し集めたりします。 5. 知的な障害があるとみなされやすいが、潜在的な認知能力は優れている。知   的な賢そうな顔つきをしていることや、型はめなどを巧みにすばやくやった   りすることなどから潜在的な知能は優れている、知能テストなどの点が低い   のは協調性がないからだとカナーは考えました。現在ではこの第 5点は修正   が必要で、知的な障害を合併することが少なくないことが明らかになってい   ます。しかしその他の4点については基本的には変更の必要がないとされて   おり、国際的な診断基準やアメリカ精神医学会の診断基準に引き継がれてい   ます。この第5点目を修正した4点を満たす場合をカナー症候群とか古典的自   閉症と呼んで、以下に述べるアスペルガー症候群と区別する場合があります。 ●● アスペルガー症候群と自閉症スペクトラム: アスペルガー症候群の歴史はオーストリアの医師、ハンス・アスペルガーが1944 年に「小児期の自閉的精神病質」と題した論文を発表したことで始まりました。 アスペルガーの報告した子ども達はカナーの報告した子どもたちと良く似ていま したが、少し違うところもありました。アスペルガーが重要とみなした特徴を以 下に列挙すると、社会性に乏しい異様な行動、コレクションなどにみられる物へ の執着、表情と身振りによる表現が乏しいこと、物まねをしているような不自然 な言語表現、計算などの特定の領域で優れた能力を発揮すること、などでした。 アスペルガーの提唱した「自閉的精神病質」の概念は、第二次大戦中にドイツ語 で発表されたこともあってか、国際的にはほとんど注目されませんでした。例外 的に日本では1960年代から一部の専門家が注目していましたが、日本の学会でも 自閉症といえばカナーの自閉症を指すのが通例でした。国際的に注目されるよう になったきっかけは1981年にイギリスのウイングがアスペルガーの論文を紹介し 再評価を行ったことでした。その後英語圏を中心に活発に議論されるようになり 現在ではアスペルガーの報告を一部改変した内容で国際的診断基準でも「アスペ ルガー症候群」、「アスペルガー性障害」などと規定されています。 ウイングがアスペルガーの報告に注目したのは理由がありました。1962年イギリ スでは「自閉症児の親の会」が結成されました。当初はカナーの記述に沿った 「自閉症」を中心にサポートをしていたのですが、カナーの記述には合わないけ れど、類似した行動を示す一群の子ども達がいて必要なサポートもカナータイプ の子どもとほとんど同じだったのです。ウイングと共同研究者のグールドはロン ドンのある地域で障害がある子どもを対象に調査しました。典型的なカナータイ プの自閉症の子ども以外にも「自閉症的な」行動特徴を持つ子どもが大勢みつか りました。この「自閉症的な」行動特徴を持つ子どもが実はアスペルガーの記述 した子ども達に似ていたのです。 アスペルガータイプの子ども達はカナータイプと比較すると知的な能力が高い、 表面的には文法的に正確な言葉をしゃべる、一方的になりがちだが対人関心はあ る、などの相違点がありました。しかし言葉を話すことができても微妙な皮肉と か冗談がわからないなどコミュニケーションの障害や相互的な対人関係がとれな いなどの社会性の問題、興味の範囲が限られているなどの問題が明らかでした。 そのためウイングはカナータイプの自閉症と連続した障害としてアスペルガー症 候群を捉え、自閉症としての援助が必要であるとしました。現在ではイギリスを 中心にウイングの考え方が広く受け入れられています。 ウイングらはカナーの基準を厳密に満たす子ども達を「カナータイプの自閉症」 あるいは「典型的自閉症」と呼ぶことにし、カナーの報告したケースよりアスペ ルガーの報告に近い子どもたちを「アスペルガー症候群」あるいは「アスペルガ ータイプの自閉症」と名づけました。どちらのタイプの自閉症も社会性・コミュ ニケーション・想像力の障害がありました。この3領域の障害が同時にみられる 場合を自閉症スペクトラムと呼ぶことにしたのです。自閉症スペクトラムにはア スペルガータイプとカナータイプの自閉症の両方と、どちらの基準も厳密には満 たさないが前記の3領域の障害がみられる場合も含まれます。「スペクトラム」 とは連続体という意味です。アスペルガータイプとカナータイプは連続した一続 きのもので、その境界は曖昧です。幼児期にはカナータイプの行動特徴を示して も、年齢が長ずるとアスペルガータイプに近くなる子どももいます。中にはアス ペルガーの特徴とカナーの特徴を同程度に併せ持っている子どももいます。そう いう場合にアスペルガータイプかカナータイプか二者択一的に議論するより自閉 症スペクトラムと幅広く捉えて援助の方法を考えたほうが有効です。自閉症スペ クトラムか、そうでないかの診断は大変重要ですが、アスペルガータイプかカナ ータイプかどちらか区別することはそれほど意味がないのです。 ● 以下によく受ける質問についてお答えします。 ● ○ アスペルガー症候群の人はどのくらいいるのでしょうか? 日本での詳細なデータはないようです。イギリス自閉症協会はアスペルガー症候 群の人が一万人に36人、自閉症スペクトラム全体としては一万人に91人と推定し ています。 ○ アスペルガー症候群と犯罪は繋がりがあるのでしょうか? アスペルガー症候群の人が、そうでない人々より犯罪を犯しやすいというデータ はありません。私はアスペルガー症候群の人を日本、英国合わせて200人以上診 てきましたが、重大な犯罪に関与した人はいませんでした。彼らの多くは他者を 疑うことを知らないために、いわゆる非行少年たちの手先として利用されて、警 察が関与するということはありえるでしょう。また学校などでは、いじめの被害 者となっていることが非常に多く、警戒するよりも守らなければならないことの 方がはるかに多いといっていいでしょう。  ○ アスペルガー症候群は性格の障害だから20歳以前に治療を開始しないと治ら   ないと言う専門家もいるようですが? アスペルガー症候群は現在では発達の障害と考えられています。アスペルガー症 候群の人は一般に社交が苦手だったり、特定の領域のことに強い関心を示したり することが多く、多数派か少数派かという視点からは少数派といえるでしょう。 「非社交的な性格」などと周囲からみなされることもあるかもしれません。しか しすべての人が社交的でなければならないわけではないでしょうし、広い趣味を 持たなければならないというわけではないでしょう。アスペルガー症候群の人の 「治療」というものがもしあるとしたら、その人の長所を活かして、苦手な所を カバーする方法を一緒に見つけていくことだと思います。「20歳以前に治療する と治る」ということの意味する所は私には理解できません。 以上です。豊川事件も含めて個別のケースにコメントはできません。なぜなら豊 川事件に関しては新聞報道以上のことを知らないからです。専門家として診察し ていない人のことをコメントすることはできません。また他のいかなる個人の問 題についてもお答えすることは不可能です。ここで示したのはアスペルガー症候 群一般についての理解を深めていただくための全体的解説と考えてください。リ ンク、引用、転載、印刷した上での配布については次の3条件を満たしていただ ければ歓迎します。1.全文(「はじめ」、から「終わり」まで)を掲載し、一部 分のみを引用しないこと、2.よこはま発達クリニック、内山登紀夫宛てメイル、 ファクス、郵便などで個人あるいは団体名などを明示して連絡すること、3.営利 の目的としないこと、の3点です。アスペルガー症候群全般に関する質問に対し てもホームページなどでお答えしていきたいとは思いますが、多忙のため無理な 場合もありますのでご理解ください。なお京都自閉症協会のホームページにアス ペルガー症候群に関する私の講演の記録がありますのでご参考にして頂ければ幸 いです。(http://web.kyoto-inet.or.jp/org/atoz3/ask/utiyama/index.html) 〒224-0032 横浜市都筑区茅ヶ崎中央7-7レスターテ港北2F        よこはま発達クリニック        ファクス:045-942-1099        http://www.ypdc.net E-mail:info@ypdc.net 内山登紀夫 ------------- 終わり ------------- ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ □ 編集後記 ---------------------------------- 00:15 2001/05/13 □ ------------------------------------------------------------------------  各地の親の会では、新年度の総会等が終わったところも多いと思います。各地 の様子などお知らせください。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▼ LD親の会「けやき」の正会員・通信会員・賛助会員になってください! ▼ ▲ 入会方法等はこちら → http://www.ne.jp/asahi/hp/keyaki/join.html ▲ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ LDニュースの記載内容を転載される場合には必ず下記までご連絡下さい ■ 親の会「けやき」連絡先 E-mail: keyaki@box.club.ne.jp [1999.03.12 更新] ホームページ URL : http://www.ne.jp/asahi/hp/keyaki/ [1998.07.31 更新] i-mode 版 URL : http://www.ne.jp/asahi/hp/keyaki/i/ [2000.05.10 更新] LDニュース 最新号バックナンバーについては下記のサイトから閲覧が可能です URL: http://backno.mag2.com/reader/Back?id=0000000592 [2000.12.21 更新] LD 関連の情報交換・意見交流・質問は下記の「LDフォーラム」をご利用下さい LD-FRM URL: http://www.ne.jp/asahi/hp/keyaki/LD-FRM/ [2000.08.17 更新] 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