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□ LD・発達障害等関連図書 → http://www.ne.jp/asahi/hp/keyaki/books/ □ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ LD(学習障害)ニュース #666 2006/08/07 発行 登録(配信)読者数 3,488 ■ ■ LD = Learning Disabilities LD親の会「けやき」編集 1997/09/10創刊 ■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▼ LD親の会「けやき」の正会員・通信会員・賛助会員・ボラ会員募集中! ▼ ▲ 入会方法等はこちら → http://www.ne.jp/asahi/hp/keyaki/join.html ▲ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ 第164国会 衆議院文部科学委員会 議事録(抜粋)(4) 2006/06/13 ■ □ 編集後記 ------------------------------------ 21:19 2006/08/07 □ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■□■□■ この LDニュース は「等幅」フォントでお読みください ■□■□■ ■ LDニュースへ講演会等のイベント情報の掲載を希望される方へ・・・ ■ ■ 詳細は下記サイトをご覧下さい。原稿は適宜編集する場合があります。 ■ ■□■□■ http://www.ne.jp/asahi/hp/keyaki/HTML/sample.html ■□■□■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ 第164国会 衆議院文部科学委員会 議事録(抜粋)(4) 2006/06/13 ■ ------------------------------------------------------------------------ http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/009616420060613019.htm −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− ○遠藤委員長 石井郁子さん。 ○石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。  きょうは、参考人として御出席いただきまして、本当にありがとうございます。 皆様方から、発達障害についての、長年取り組まれていらっしゃる御経験、そし てまた知見もお聞かせいただきまして、大変勉強させていただきました。今回の 法案改正に本当に生かしていきたいと思っているところでございます。  私自身も、特別支援という形で言われているように、一人一人のニーズに合っ た教育ということが、ようやくというか、言われるようになりまして、これは障 害を持った子供さんにはそのことは本当に大事ですけれども、それはすべての子 供たちに当てはまることだろうと私は考えているんですね。そういう意味で、そ のような教育の環境をぜひつくっていきたいなということを強く思っているとこ ろでございます。  それで、最初に市川参考人に伺いたいと思いますけれども、軽度の発達障害に ついて、その概念だとかその実態、実情をいろいろ整理していただきまして、あ りがとうございました。それで、軽度の発達障害が増加している、その中でも特 に高機能群の著しい増加だ、比率として四倍、十年間に四倍というのは大変な数 だと思うんですけれども、等々をお知らせいただきました。  それで、私ちょっと一つ、きょうの話に出てきませんけれども、今子供の事件 などで、この十年の間に出てくることでいいますと、行為障害だとか人格障害だ とかそういう概念が出てきていますよね。これは私たちはなかなかなじみがない、 まだ日本でも研究が十分されていない分野かと思うんですけれども、こういう軽 度発達障害、先生も、中教審ですか、の専門委員としても加わったと思いますけ れども、そういう中では、こういう障害というのは、どのように議論されて、あ るいは今回の中には入っていない、入っていないと言ったらいいのか、これはど のように考えたらいいのかということについてちょっとお知らせいただければと 思いますが。 ○市川参考人 軽度発達障害という言葉は、障害が軽いという意味ではないんで すね。知的障害が軽い発達障害というふうに理解いただければいいので、これは 造語だと思います。はっきりした定義はないんですが、その代表例として、きょ う論議になっておりますLDあるいはADHD、高機能自閉症等がある、こうい うことになっております。  それから、今マスコミ等では、確かに、子供さんの場合ですと触法行為ですか、 そういうものとの関係ということが言われておりますが、直接的な結びつきは証 明されていないと思いますが、ほかの人とのコミュニケーションをとりにくい、 あるいは意味をとりにくいようなところがございますので、思春期以降になりま して、どうして自分はこんなに努力しているのにみんなに認めてもらえないんだ ろうということが続いていきますと、普通、子供さんに限らず、だんだん自信が なくなっていったり、いらいらしてきたりする方がいらっしゃるわけですね。こ れは私見ですけれども、発想が逆転しますと、世の中が悪いんじゃないかという ふうに思う方が出てくるかもしれませんね。そうしますと、その中の一部ですね、 やはりマスコミ等で取り上げているようなことにつながる方があるかもしれませ ん。  逆に言いますと、先ほど申し上げましたけれども、すばらしい業績を残してい る方もいっぱいいらっしゃいますし、医者の中にも実はその関係者は多いと言わ れておりますし、学校の先生にも、もしかすると議員さんにも多いと言っている 方もいらっしゃいますので、決してそれが悪いことではないわけでありまして、 いい方向に行くと、すごくエネルギッシュですばらしい業績を残す。ただ、思春 期以降になりまして、つまずいてしまって、社会からの疎外感ばかりが積み上が っていきますと、逆な方向に行く方もあるんではないかというのが今の一般的な 考え方だと思います。  逆に言いますと、思春期以前の、特に低年齢のころに、先ほどちょっとこの文 書の中では自己有能感という言葉を使っておりますが、自分はこういうことで自 信がある、自分はこういう点はほかの人よりできるというところをどれだけふや せるかということが、逆にいい方向に行くということだと思います。  そういう点でいえば、この法律の改正によって学校の先生方の対応が少しでも よくなって、いい方向に行く方がふえたらすばらしいなと私は考えております。 ○石井(郁)委員 どうもありがとうございました。  いずれにしても、やはり教育的な関係というか、働きかけというか、それが大 変大事だ、こういうふうに思うんですね。そういうことで、教育関係者がやはり 発達障害についての深い認識をもっと広げる必要があるなというふうに私も感じ たところでございます。  それで、上野参考人に伺いますけれども、先ほどお述べになりました中で、今 回の特別支援教育については、通常の学級に在籍する特別な教育支援を必要とす る児童生徒の全国実態調査で六・三%という結果が出た、しかし、そのときに、 通常の学級に明らかに知的発達のおくれを持つと推定される児童生徒は少なくと も二%はいたと。これは大きな数だというふうに思うんですね。  それで、先生は、LD学会の会長さんでもいらっしゃいますけれども、そのL Dの子供への指導という点では、今回の法改正というのはどういうことが期待さ れるんでしょうか。もちろん十分ではないということはお互いにわかっているわ けですけれども、本当にさらにどういう点が改善というか、必要と認められるか ということについてお聞かせください。 ○上野参考人 一九六三年にアメリカでLDという概念が教育用語、法律用語と してブレークしていったんですね。そのとき、軽度のお子さんたちを広くとらえ る、アンブレラ、傘の概念と言われました。その後、だんだん、例えばADHD のようなお子さんは、重なりやすいけれども、別の障害であろうとか、あるいは 自閉症の高いお子さんは自閉症として診断すべきであってLDと分けておいた方 がいいんじゃないかとかというようなこともありまして、そういう最初の広い傘 から少し厳密になってきております。そういうことの中で概念というのは変化し ていくわけですね。  学校の中で大事だと私が思うのは、特にこの軽度のLD、ADHD等のお子さ んというのは、見ようによってはできることがある。あるいは、逆に言えば、過 集中といいますか、よく言うんですけれども、二倍集中して二倍疲れる、自分の 好きなことだと集中するというような特徴もあって、これは他の障害とは少し違 った様子ですね。したがって、先生の方も、それをお子さんの方の発達の特性と してとらえないで、努力とかあるいはしつけとかそういうふうにして考えやすい ということがあります。ですから、まず何といっても、そのお子さんたちのきち んとした発達の特性ということを先生自身がまず知るということが基本ではない かというふうに思うわけです。そのことが、ただいま議員が、これは障害という ことだけではなくて、すべての子供に広がることだというのは、いろいろな子供 さん、これからもいろいろな名前で支援が必要だということで出てくる可能性が あります。だから、そういうようなことも含めて、私たちは常に、子供たちがど んな状態で何を求めているのか、何が提供できるのかということに対して敏感で あるべきではないか、まずそのスタートは学校ではないか、そのように思います。 ○石井(郁)委員 どうもありがとうございました。  私も、小学校のときに特定の能力分野だといえば書くとか読むとかあるいは計 算とか、そこで非常につまずいてしまうという場合を指しているように思うんで すけれども、それでもってもう学校全体についていけないということで、別なと ころへ行かなきゃいけなかったという子供さんを知っておりまして、しかし、そ の子供さんは音楽でまた大変能力を発揮されたということもあるんですね。それ は本当に、おっしゃるように、子供というのは多面的な能力を持っているわけで すから、決められた枠だけではかってはいけないなというようなことを感じてい るものですから、今のお話、そのとおりだというふうに思いました。  高原参考人に伺いたいと思います。  先ほど、私も親として、本当に胸が詰まる思いで、お子さんの歩みを聞かせて いただきました。十年前というのはまだまだ社会的にこういうLD、ADHDに ついても本当に認識が広まっていないという中での大変御苦労があったと思いま す。最後に、しかし今日なおこの子たちの居場所がないと言われたのに私ははっ としまして。今回の法改正では何が一歩前進になるのか。  私たちは、今度の法改正を契機に、本当に、こういう軽度発達障害についての 社会的な認識、関心がもっと高まって、そしてその対応をちゃんとしなきゃいけ ない。ただ知っているだけではだめですよね。対応しなきゃいけないということ だと思うんですけれども、本当に今学校それからまた関係機関でいろいろ、連携 等々、努力をされていると思いますけれども、現状について、どこをどういうふ うにまず手がかりとして直していくべきなのかというような点について、もう少 しお聞かせください。 ○高原参考人 私の子供がちょうど中学三年生で、ですから、小学校六年間、中 学三年間という中で一番感じた居場所がないという発言の大もとは、まず、担任 の先生がかわった場合に引き継ぎがどうも何かスムーズにいかない。人によって 対応が変わってしまうわけですね。本来であれば、教育の場なわけですから、人 がかわって対応が変わるというのは何か変じゃないかなと思います。  ですから、今言われたとおり、きちんと理解をされて対応していただく先生も いらっしゃるわけです。そうかと思うと、逆に、よく言うのは、学校全体で、校 内委員会ですとかコーディネーターですとか、そういったものを配置するという ようなことも今は言われていますけれども、まず先生方同士の共通認識を持って その子に当たるというのがどうもできていないんじゃないのかなというふうに思 います。  なぜかといいますと、実際、私なんかもよく先生とお話をする際には、実を言 うと、お母さん、職場の中で職員同士の共通認識を図ることの方が実際問題大変 なんです、中には理解をされて対応された先生が逆に非難をされてしまっている、 前の担任が甘やかすからこういう結果になるんだと。これは、とりもなおさず発 達障害の認識が甘いというか、薄いのではないかなと思います。  それと、やはり子供というのはその場その場だけではないと思うんですね。継 続してずっと、例えば就学前、幼稚園、保育園、そして小学校、中学校、そして、 まあ、今うちはまさに高校という問題を控えていますけれども、年を追うごとに 何か受け入れ間口が狭くなってしまう、これも感じています。  特に学校の先生というのは転任されてしまうのがあります。担任の先生も、何 か今は一年でかわってしまう。子供は、もともと順応性がいい子でもないわけで すね。やっと先生になれた、一年かかってなれた、先生も一年かかってこの子の 対応わかりましたと。それで担任がかわってしまうんです。そのときの引き継ぎ というのが、ですから、みんな親御さん、新年度早々は、まず先生がだれになる のか、だれになったら、また脈々と今までの経過をお話しする、先生がかわるた びにそれを繰り返す。それでも、何か、同じように一貫して受けられない、でこ ぼこが、非常に波があるというのを一番実感しています。  ですから、できることであれば、先生、いわゆる個人の質ということではなく て、教育全体の中で位置づけていただきたいというのがまずなんですね。個々の 先生方の努力だけではなくて、全体として、制度としてそこをきちんと位置づけ ていただきたいな、そういう意味で、やはりこの子たちの居場所がないというの を実感しています。 ○石井(郁)委員 ありがとうございました。  残りの時間、ちょっと角度を変えまして、先ほど来、幼少期というか、低年齢 のときにきちんとした診断が大事だということはお聞かせいただいたとおりです けれども、高原さんの子供さんももう今度高校というところにきていると思うん ですが、やがて思春期に入ってなおまた難しさも出てくるかなと思いますし、そ れから高校に入ったけれどもその先はどうなんだ、あるいは受け入れてくれる高 校自身が非常に限られているというお話もあったかと思うんです。  その問題でちょっと伺いたいんですけれども、今回の法改正には高校でも特別 支援教育をということが明記されているという点は私は大変評価をしているんで す。それで、ここは姜参考人に伺いたいと思いますけれども、たしか高校から通 常学級へ入ったというふうに聞いているところでございますけれども、その高校 での生活を振り返って、苦しかったことや、よかったことや、それからまたその 後の進路、障害を持っていらっしゃる皆さんにとっては、その後の進路について、 何か御要望等々あればお聞かせください。 ○姜参考人 私自身は高校での生活というのは、先ほども少し述べさせていただ きましたけれども、最初は頑張る頑張るでやってまいりました。ただ、その頑張 るは、自分一人ではどうにもできないことに関して、やはり自分が無力であると いうことを思わざるを得なかったですね。自分は一人ではこの社会ではやはり生 きていけないんだということ。その中で、ふと気がついてみれば、自分が声を出 して協力してもらえる人、あるいは自分が困っているときに、これちょっと手伝 ってくださいと言えるような関係が、なかなかつかめなかったことがやはり一番 しんどかったことです。  それがようやく三年目にして、周りの雰囲気もよくて、先ほど来申し上げてい るように、一緒に出かけたり遊びに行ったりする同級生ができたことは、私自身 が、健常児と言われるクラスメートの中でいろいろなことを感じて、この社会で 生きていくにはどうすればいいのかということを身にしみて感じてきた結果だろ うと思っています。  高校卒業後の進路、私は幸運にも大学へは行かせていただきましたけれども、 今現状、大阪では、知的障害を持つ高校生の人たちが卒業後どうなるのかという こと、非常に大きな問題となっておりますし、現に、定時制高校やそういったと ころに通っている障害を持つ子供たちが、やはり行き先がなくて困っているとい う現状があります。どうしても先生たちは、学校側は、簡単に、作業所はどうか とか、デイサービスに行ったらどうかというような形での答えを出してしまうん ですけれども、私たちの経験の幅を広げる、あるいは可能性に挑戦するというこ とであれば、やはり普通のクラスメートと一緒に職場実習をしたり、あるいはそ の職場開拓をしていただいて、ちゃんとした働く前の経験を積んでいく必要があ るんではないかと思っているわけです。  そのためには、まだまだ一般企業や受け入れ側の事業主の理解というのは不可 欠なわけですけれども、徐々に今労働施策の中で実習の場が広がりつつあります けれども、養護学校の生徒さんについてはかなり制度化されているんですけれど も、やはりまだ通常学校の中に通っている障害児、通常学校の中に通う生徒さん については、なかなか就職へのパイプが強くなっていっていないという現状があ りますので、ここら辺も少し是正をしていただきたい点ではあります。  以上です。 ○石井(郁)委員 大変貴重な、というか、重要な御提案をいただいたと思いま す。ぜひ、そういう御要望を受けとめて、私たちはしっかり取り組んでいきたい というふうに思っております。  きょうは、本当に、それぞれのお立場から貴重な御意見、どうもありがとうご ざいました。 ○遠藤委員長 保坂展人君。 ○保坂(展)委員 社民党の保坂展人です。  まず、市川参考人に伺いたいんですが、きょうのお話でも、軽度の障害を持っ ている、発達障害のお子さんだとか、十年前と比べて大変ふえているんだという お話を聞かせていただきました。他方、梅ヶ丘病院も含めて、では、ますます医 療の現場でも子供の心や発達にかかわる取り組み、もっともっと増強されなけれ ばいけないと思うんですが、これも例外なく行革の波でいろいろ大変なところだ と思いますが、この分野で、今実際にそれだけお子さんたちがかつてよりふえて いる中で、研究ないしは治療の取り組みについて体制はどうなのかということに ついてお聞きしたいと思います。 ○市川参考人 何人ぐらいいるかというのはなかなか難しいところなんですが、 現在、治療についてお話しいたしますと、関係しているのは、小児科でこの分野 に非常に興味を持ってくださっている小児神経科の先生あるいはアレルギー科の 先生、それから精神科の分野でこの発達障害の部分を扱っている子供の精神科と いうものでございます。専ら専門に扱っているという医師の数は、恐らく全国で も三けたか、もうちょっと多いかぐらいだろう。ただ、ふだんはほかのことをし ているけれども、そういう方も診察するという方はもっと数が多いと考えており ます。  現実問題として、今回のこの特別支援教育でも、専門家チームという格好で医 療の方の方もということで話はありますけれども、大都市はともかくとしまして、 地域によりましては、実はその専門家のドクターが足りないというようなことも 言われておりまして、この養成ということは我々は前からお願いしておりました し、人数が限られた中でやらなきゃいけないということで、受診まで相当お待た せしなきゃいけなかったような事実もございます。  今は実は、この委員会のあれかわかりませんけれども、厚生労働省の方の母子 保健課の方で、子供の心の問題を専ら専門にする医師の養成を早めようというこ とで、現在、検討会が進んでおりまして、中間報告が三月の時点で出ていると思 います。この中では、そういうドクターを三つの段階に分けて養成していくとい うことで、まず小児科と精神科の中で、その分野に興味を持つドクターをふやす というかレベルアップを図るということ。それからもう少し定期的に、規則的に といった方がいいんでしょうか、そういう方を診察するドクターをふやす。それ からもう一つ、専門的に診られるドクターをふやすという三つの段階で今は行っ ておりますので、今すぐ答えは出ないかもしれませんけれども、今後、少し長い スパンで見れば確実にふえていくだろうというふうに思っておりますが。 ○保坂(展)委員 ありがとうございました。  続いて、上野参考人に伺いたいと思います。  この法案の審議でも、世の中全体がインクルージョンの世界的な趨勢にあって、 分離ではなく統合、なるべく一緒に教育を受けていく。教室も、なるべく一緒に いられる時間は一緒にいるようにする。例えば、今、特殊学級に籍を置いてとい う形で、これが制度が変わりますけれども、普通学級にむしろ籍を置いて、必要 のあるときに出かけていくみたいな形がいいのではないかという文科省とのやり とりをしているんですが、なかなか文科省の方は、学級として現在ありますので というところにとどまってはいるんですけれども、先生のお考えで、特別支援教 室へ移行していく、これはどういうふうに実現していくといいのか、そのイメー ジについてもう少しお話しいただけないでしょうか。 ○上野参考人 私の資料の中に図がございます。これは、中教審の答申の最後の ところにある図の一部でございますけれども、結局、特殊学級というところで、 知的なお子さんたちはそこを中心にというのがこれまでの考えでした。  ただ、今回、制度上、特殊学級にたとえ籍を置いたとしても、通常の学級にほ とんどの時間いながら必要に応じて通うというような、交流するという形での知 的障害の方に対する交流及び共同学習の促進ということを一つ掲げたわけですね。 これと、それからもう一つは、これまでの言語や情緒の一部のお子さんたち、そ れから新たにLD、ADHD等に関しましての通級による指導教室という、この 二つの形態を次の段階、まあこれからですけれども、そういったことをやるとい う次の段階へ入ったわけですよね。  ただ、本当のことを言いますと、これもやはり二重構造でして、そういうふう にいっても、軽度のお子さんたちが、ほとんどの時間、通常学級に籍を置くとい いながらも特殊学級に籍を置くという形で、これを利用できるかどうかというと ころが大きなかぎになるのではないか。  そういうふうに考えますと、やはり最終段階の、すべての子供さんは、小中学 校において一つの通常学級に籍を置きながら、必要に応じてそれこそ一時間から 二十数時間までいろいろなサービスを、子供にとって必要なサービスを受けられ るような形、これが非常に子供にとってはよいのではないかというふうに考える わけです。  ただ、これまでも特殊学級という形でやってきた歴史がありますので、そこの ところを丁寧に移行していかなきゃいけないということは確かですし、また、こ こで先ほど、親御さん、保護者の意思の尊重ということはありましたけれども、 明らかにこれは、子供さんの将来を見ていて、今この子にこういうような社会自 立の力をつけた方がいいなと思う例でも、親御さんの方は結構だと。通常の学級 で、例えば、一つの教科書で、一人の先生で、みんなと一緒にということで望ま れる場合があります。そのお気持ちの出てくる背景というのは私たちは十分理解 しなきゃいけないんだけれども、でも、そういうふうなことで、逆に言えば、子 供さんのある種の教育権は奪われていく姿も少なからず見るわけで、そういうと きにもっとお互いにわかり合って利用しやすい特別支援のあり方というのはある のではないか。  そういう意味で、私は、現行は現行として、一気に変えていくということの中 で子供が犠牲になってはいけませんので、丁寧に考えながら、なるべく早く最後 の特別支援教室の構想の実現へというところへ向かうこと、これが恐らく我が国 におけるインクルーシブな教育のまた一つの形ではないか、そんなふうに思いま す。 ○保坂(展)委員 続いて、姜参考人に伺います。  先ほどの御発言でも、インクルージョンの趨勢そしてサラマンカ宣言の一部を 紹介していただきましたけれども、大変はっきりした宣言で、各国政府にこれを 求めていて、非常に大きなエポックというか、この宣言というのは非常に貴重な ものだというふうに私は思います。  ただ、実際、姜参考人の経験あるいは障害を持っているお子さんやその親御さ んなどの経験で、この宣言が、例えば自治体の窓口や、あるいは学校や、教育委 員会や、実際に障害をお持ちのお子さんが教育にアクセスするというときに、で は、頭に入っているかどうか、どのくらい浸透しているんだろうかというところ が問題だろうと思います。  その点についてお感じになっていることを述べていただけないかと思います。 ○姜参考人 私自身の経験はまだ狭くて、大阪という地域に限られたりしていま すけれども、現状、インクルーシブ教育というものについて、理念的には、言葉 のいかんにかかわらず広がっている部分があると思います。ただ、それが制度的 に、あるいは、学校に入る子供たちの側、親御さんとの間でちゃんとしたリンク をとって一緒に進めていこうという状況にあるかといえば、まだまだないのでは ないかなというふうに思うわけです。  例えば、先ほど来出ている特別支援教室をめぐっての問題ですけれども、今引 き続き、この学校教育法の改正案では学級という形で残ると言われておりますけ れども、現状、大阪でもどのような事例が出ているかといいますと、学校が生徒 の管理をしやすいように、一日何時間は特殊学級に入ってください、来てくださ い、そうしないと、人手が足りなくて大変なんですよというような形で、暗にあ るいは直接に親御さんにそのことを申し出てしまう学校の管理者がいるわけです ね。  ということは、私たちがきょう述べさせていただいた中で言われている本人の ためあるいは保護者の意思、そういったものではなくて、学校側の管理の都合で 子供たちが行き先を決められてしまう、あるいは行くことを求められてしまうと いう状況はなかなか改まらないのではないか、有効な手段を別に求めないといけ ないのではないかということがあると思います。  ですから、この教室への移行ということも、やはり私としては、具体的に筋道 をつけていってほしいことでもありますし、子供たちに、先生方の都合や学校の 都合ではなくて、本人がどこでの学びを求めるのかということを前提にした支援 のあり方をぜひとも考えていっていただけるような内容であってほしいと思って います。 ○保坂(展)委員 もう一問、姜さんにお聞きしたいんですが。  普通学校でぜひ学びたいという、障害をお持ちの子供さんたちの声、当事者の 声は、ずっと長いこと、長い道のりをかけて歩んできたと思うんですね。今ここ に資料でいただいたいろいろな声の中にも、まだまだ苦労されている、壁がある という感じもするんですけれども、ここ十年とか十五年とか長いスパンで見ると、 やはりこれは統合教育に向けて一つの流れはきちっとできているというふうにお 感じでしょうか。 ○姜参考人 社会全体の流れからいうと、そういう方向に確かにあるのではない かと私は思います。ただ、それが円滑にあるいはうまくかみ合って進んでいって いるのかといえば、決してそうではなくて、現場現場あるいは学校学校では親御 さんが苦労を強いられたりしているわけですね。そういった中でいえば、まだま だ、理念もそうですけれども、内容を伴った支援策というものを具体化していか ないと、大勢的には大きく変わらないのではないかなという気持ちがあります。  ですから、まず、原則をどこに置くのか、やはり私たちは地域で生きることが 中心になるわけですから、地域での受け入れということを原則としていただいた 上で、特別な支援をどう、一人一人の子供たちを大切にする支援をつくっていけ るのかということを考えていっていただきたい、そういうふうに思っています。 ○保坂(展)委員 続いて、高原参考人に伺いますが、当事者の親として、やは りいろいろな形で苦労されていらっしゃると思います。その声を上げるといって も、ふだん、声を上げるというようなことで、大勢の人に対して、子供の学ぶ権 利、それをしっかり保障してもらうために、時として、学校あるいは周りの父母 たちにも聞いてもらわなきゃいけないときもあるかと思いますね。  この制度、この問題の中で、統合教育、一緒にいるということの楽しさと意味 と、また個別に支援を受けていく、その部分の大切さと両方あると思うんですけ れども、そういった親たちの声を、我々国会もそうですけれども、きちっと聞き 込んでいくというか、意見をしっかり述べていただき、また、それがきちっと反 映されるということが必要だと思うんですが、その点についてお感じになってい ることを率直に述べていただきたいと思います。 ○高原参考人 私も、今まで何度となく、行政サイド、最初は市教委から始まり 県教委、そういった場にお願いというか、まあ、陳情ですね、時には議員さんも、 お願いをして、上がっていく。その中では、確かにその必要性はあります、ただ 現状の中でどうにもならないんですと、実際のところ予算的なものとか、そうい ったものが必ず返ってきてしまうんですね。  それと、あと、実際の学校現場でも、やはり今は、この発達障害に関して言う と、保護者の方、非常に知識をお持ちの方が非常に多いんです。下手をすると先 生以上に知識はお持ちなんですね。それを、学校と家庭というのは役割は違うと 思います。学校というのはあくまでも集団の場ですし、家庭というのは個の場で すから、そこを多分わきまえていないというか、わからない状態で、こういうこ とが何で先生はできないのかというような話の持っていき方をしてしまうと、逆 にそこでマイナスの結果に行ってしまうと思います。  そうではなくて、お互いの立場を理解するような発言の仕方をしていくですと か、それと同時に、やはり私は今まで、まず、こういう場で審議されてこなかっ た、これは十年間の中で、今日本という国の中でやっとこの発達障害というもの を考えられるようになってきた時期だと思います。だから、これですぐ変わると は思いませんが、ぜひ、こういう場ですとかいろいろ、皆さん議員さんですから、 地元のそういう保護者の方、こういった方々の声というのをつぶさにまず拾って いただきたいと思います。  そして、まず、保護者のサイドとしては、私、これは保護者の立場で思うんで すけれども、やはりそこも保護者はきちんと学ぶ必要があると思います。ただ単 に発達障害の知識だけではなくて、全体的な物の見方ですとかとらえ方ですとか、 そういったものも含めて、あわせて話を持っていける、そこで対等に、行政の立 場の方ですとか、もちろん学校の先生方ですとか、きちんとそういった方々と話 の場があれば、もう少しスムーズに流れるかなと。  お互いに話に行くまでに壁ができてしまっているとか、当然何か、よく行政の 方なんかは、保護者が来ると、また苦情を言いに来たかと。そういうような対応 が多いんですね。まあまあ適当に聞いておけばいいかと。中には、要望書だけも らって、はい、わかりましたと。それで門前払いじゃないんですけれども、そう いったこともあります。  ですから、やはりお互いに意見を述べられる場というのはもっともっと広げて いく必要もあると思います。それをもっともっと、地元というか地域でできたら いいと思っております。 ○保坂(展)委員 ありがとうございました。  地域でそういう声を聞くとともに、これは大きな流れというわけで、制度が看 板のかけかえであってはならないという言葉、非常に受けとめて、しっかりした 制度になるように我々も努力をしていきたいと思います。ありがとうございまし た。 ○遠藤委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。  参考人の皆様には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがと うございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  この際、暫時休憩いたします。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ □ 編集後記 ------------------------------------ 17:08 2006/08/05 □ ------------------------------------------------------------------------ 台風が三つも発生し、本土を狙っています。ご用心下さい。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ LDニュースの記載内容に関する質問には原則として回答いたしかねます ■ ■ 編集に際し正確を期していますが最終保証責任は免責とさせて頂きます ■ ■ LDニュースの記載内容を転載される場合には必ず下記までご連絡下さい ■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 親の会「けやき」連絡先 E-mail: keyaki@box.club.ne.jp [1999/03/12 から] ホームページ URL : http://www.ne.jp/asahi/hp/keyaki/ [1998/07/31 から] LD 関連の情報交換・意見交流・質問は下記の「LDフォーラム」をご利用下さい LD-FRM URL: http://www.ne.jp/asahi/hp/keyaki/LD-FRM/ [2000/08/17 から] ★ 挿入された広告内容や広告主と親の会「けやき」は一切関係ありません ★ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ □ LD・発達障害等関連図書 → http://www.ne.jp/asahi/hp/keyaki/books/ □ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  LDニュースは「まぐまぐ」 http://www.mag2.com/ を利用して発行してます ------------------------------------------------------------------------

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