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□ LD・発達障害等関連図書 → http://www.ne.jp/asahi/hp/keyaki/books/ □ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ LD(学習障害)ニュース #646 2006/04/28 発行 登録(配信)読者数 3,539 ■ ■ LD = Learning Disabilities LD親の会「けやき」編集 1997/09/10創刊 ■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▼ LD親の会「けやき」の正会員・通信会員・賛助会員・ボラ会員募集中! ▼ ▲ 入会方法等はこちら → http://www.ne.jp/asahi/hp/keyaki/join.html ▲ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ 第164回国会 参議院 文教科学委員会 会議録抜粋(3) 2006/04/20 ■ □ 編集後記 ------------------------------------ 07:05 2006/04/28 □ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■□■□■ この LDニュース は「等幅」フォントでお読みください ■□■□■ ■ LDニュースへ講演会等のイベント情報の掲載を希望される方へ・・・ ■ ■ 詳細は下記サイトをご覧下さい。原稿は適宜編集する場合があります。 ■ ■□■□■ http://www.ne.jp/asahi/hp/keyaki/HTML/sample.html ■□■□■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ 第164回国会 参議院 文教科学委員会 会議録抜粋(3) 2006/04/20 ■ ------------------------------------------------------------------------ http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kaigirok/daily/select0106/164/16404200061009c.html −−−−−−−−−−−−−−−−−− ○委員長(中島啓雄君) ありがとうございました。  以上で参考人の皆様からの意見の聴取は終わりました。  これより参考人に対する質疑に入ります。  各参考人にお願い申し上げます。  御答弁の際は、委員長の指名を受けてから御発言いただくようにお願いをいた します。  また、時間が限られておりますので、できるだけ簡潔な御答弁をお願い申し上 げます。  それでは、質疑のある方は順次御発言願います。 ○大仁田厚君 どうもおはようございます。  参考人の皆様方、本当に御苦労さまです。  先日、学校視察などを行ってきたんですけれども、やっぱり現場の大切さや大 変さを痛感いたしました。また、何か障害を持っている子供たちと接したんです けれども、明るく前向きに生きている姿がとても印象的でした。また、障害を持 っていてもいろんなことに努力し頑張っている姿を見て、今後将来こういう方々 があらゆる社会、一般社会においてやっぱり働ける場、そしてまた活動できる場 が開けることを本当に僕らやっぱり大人社会が頑張らなきゃいけないなというの を痛感いたしました。  御質問なんですけれども、済みません、限られた十五分の時間で手短にストレ ートな御意見をお伺いしたいんですが、特別支援学校の形態については地域の実 情に応じて設置者が判断することになっておりますが、今回の法案について特に 評価する点、あるいはまだまだ不足している点について、各参考人の御意見をお 伺いしたいと思います。 ○委員長(中島啓雄君) それでは順次、大南参考人から。 ○参考人(大南英明君) 特別支援学校の在り方は、例えば現在の盲学校、聾学 校、知的障害養護学校、肢体不自由養護学校、病弱養護学校のように障害別に今 後も続けていく、そういう形態もあると思いますし、知的障害養護学校と盲学校 を併せた学校をつくっていく、あるいは京都市のように、総合養護学校と呼んで いますが、肢体不自由、知的障害、病弱の子供たちが同じ校舎で学べる学校をつ くって、現在もうスタートさせておりますが、それぞれの都道府県、設置者が考 えている最も子供たちにふさわしい学校をつくっていかれるのが私はよろしいん ではないかというふうに考えております。 ○参考人(嶺井正也君) 障害種別を超えた総合的な学校にするということにつ いては賛成であります。ただし、そのことによって規模が拡大して、地域から離 れるような学校であっては困ると思います。むしろ、分散化するような方向でや っていただければいいのではないかと考えております。 ○参考人(三浦和君) 通学上の便利さが学校を統合することによってあるとい う、これまで遠かった子供たちが近いところで特別支援教育を受けるという、最 大のことだと思います。  以上です。 ○参考人(山岡修君) 私は、じゃセンター化のことを申し上げます。  養護学校にはこういう特別支援教育に関するノウハウがたくさんございます。 それを、地域の小学校や中学校ではなかなかノウハウがないところでございます ので、センター化ということで地域の学校に対する支援だとか相談業務とかを是 非やっていただきたいという意味で、大変評価をしております。 ○大仁田厚君 ありがとうございます。  大南参考人、三浦参考人にお伺いしたいんですが、今までの盲学校、聾学校、 養護学校ではどこが不十分だったのか、そしてまた特別支援学校になるとどこが 期待できるのか、お伺いしたいと思います。 ○参考人(大南英明君) 先ほどもちょっとお話し申し上げましたが、盲学校、 聾学校は多くの県では一県に一校しかございません。ですから、寄宿舎に入って 勉強しなければならない。これ低学年あるいは幼稚部でいいますと、幼稚園の段 階からそれをせざるを得ないという、そういう状況が長い間続いていました。そ のことが許容されていた時代もかなりあったと思いますし、専門的な教育を受け ることによって家庭から離れることを否定はしなかったわけですけれども、しか し時代が変わってきて、家庭からということが基本になってきますと、やはり通 学できる範囲で盲学校、聾学校を設置をしていければ一番これは理想ではないか。  それから、養護学校につきましては、先ほど重複障害のところでお話ししまし たが、例えば知的障害養護学校にも肢体不自由を伴う、あるいは病弱を伴う児童 生徒が学習をしています。一方では、肢体不自由の養護学校にも知的障害を伴う 子供たちが学習をしている。そういうことを考えますと、例えば県内に知的障害 と肢体不自由の学校が五つあったとすれば、現在は基本的には障害別に通学をし なければならない。ですから、うちの近いところに肢体不自由の養護学校があっ ても知的障害であれば、その学校を越えてバスで例えば九十分掛かるところまで 通わなければならないという、そういう実態がございますので、できるだけ児童 生徒が通いやすいことを考えれば、障害を超えた学校を設置した方が私は望まし いのではないかというふうに思います。 ○参考人(三浦和君) 今の話にダブると思うんですけれども、盲・聾学校にお いては、専門性を構築するという意味では大変一つの明快な形のものがあった。 ただし、広がりがないために、今言ったように学校が一つしかないというような 形で行きにくいと、こういう問題が一つ。  それから、重複化への対応が、どちらかというと単一の障害の、盲なら盲、聾 なら聾という視点でそこを突っ込んでいる。言語指導とか、そういう形のように して突っ込んでいくけれども、じゃダブり、重複であって盲であるという場合の ことについては極めて後れた形の指導を、私も目の当たりに見たことありますけ れども、あったという、それが解消されるだろうと、今度は。いろんな人たちが 出くわせばですね。  以上でございます。 ○大仁田厚君 嶺井参考人にお伺いしますが、日本は国際的に後れているという ことですが、日本と同レベルの先進国はありますか。また、改正案は不十分だと はいえ一歩前進と受け止めることができると思うんですが、嶺井参考人にお伺い したいと思います。 ○参考人(嶺井正也君) 後れているという中身は、ちょっと申し上げたいと思 いますが、イタリアもそうなんですけれども、障害のある子供たちがかなり通常 学校や通常学級で学んでいるということについては結構進んでいるんではないか と思います。ただし、それがどういう形で進んでいるかということが問題であり まして、これは、この間のいろんな国際的な権利条約の流れからしますと、やは り当事者や保護者の意見というものが基本的にベースにあって、それに対してフ ォローしていくという制度にはなっていなくて、どちらかというと流されてやっ てきたという、そこが後れているのではないかというのが考えております。  私がモデルとしていますのはイタリアの例でございまして、イタリアでもまだ 障害児学校が少し残っておりますが、特殊学級はなくなっております。通常学級 に籍を置いた上で、必要があれば特別支援教室的なところで学べるようになって いるという、そういうことを私はずっと考えてまいりました。  以上です。 ○大仁田厚君 山岡参考人にお伺いしたいんですが、LD等軽度発達障害の子供、 そしてまた特別支援教育の対象となりますが、自分の子供は障害児だということ をやっぱり認めたくないですよね、保護者の方々は。そういった保護者に伝えた い点、また一般の保護者に訴えたい点をお伺いしたいと思います。 ○参考人(山岡修君) 特に軽度の発達障害の子供でいくと、本人も認めたがら ないし、保護者が認めたがらないケースがあると思います。  実は、従来の障害児教育は一・数%ですから、本当にみんなとは違う世界だっ たと思うんですけれども、このLD、ADHDの子供たちが入ってきて六%、七 %というふうになってきますと、結構周りにいるということになってきます。  これは卵が先か鶏が先かになりますけれども、こういうふうに世の中が、こう いう違ったものが周りにいてそういうことを認めていくんだといいますか、違っ てもいいというような考え方が広がっていくこと、そして子供たちも、そういう ことに対していい教育を受けれるんだということで、いい教育をしないと駄目な んですけれども、ここに行くといい教育が受けれる、効果があるんだというもの にしていくこと、そして世の中が変わっていくこと、それが両方で整っていくん だというふうに思っております。 ○大仁田厚君 山岡参考人にお伺いしたいんですけど、通級指導の拡充により、 今までの特殊教育とは余り関係がなかった一般の教員も専門的な知識が必要にな ると思うんです。そういった部分で、通常の学級や特別支援学級の教員に対して の期待することは何ですか。 ○参考人(山岡修君) 通常の学級で、特に大きな専門知識があるわけでなくで きることというのは、こういう子供たちがいるということが分かっていただくこ とですね。そういう発達障害が遠因にあって、例えば字がうまく書けない、計算 ができない、サボっているわけではないということですね。そういう理解をまず していただくことが第一。  そうすると、その上で、もう少し通常の学級の先生とかにも専門的な知識は付 けていただきたいと思っておりますので、それらは研修をしていただくとか、あ るいは教職、普通の免許のところで、ある一定の時間障害について学んでいただ くとか、そういうことをしていただくことによって、子供たちはどんどん良くな ってまいります。  子供たちは、軽度の子たち、特にそうなんですけれども、学校の先生から怒ら れ、友達からも仲間外れにされ、家庭でも怒られるということになりますと二次 的な障害を起こすケースもあるんですね。ですから、学校の先生が、今までは障 害があると私の受持ちじゃないということで、どこか特別な場へ行ってください という形だったんですけれども、そうではなくて、この子供は私の担任の生徒な んだと、私が対応しなくちゃいけないんだという気持ちで是非接していただけれ ばというふうに思っております。 ○大仁田厚君 どうもありがとうございます。  先ほどから参考人の皆様方が言われるところが、やっぱり生まれたところで近 所の幼なじみと一緒に学校生活を送るのが理想だと僕は思うんですよ。しかし、 実際には障害のため、市町村の教育委員会での判断で離れた盲学校や聾学校、養 護学校を指定されることがやっぱり多いわけです。幼なじみには入学通知が来る のに自分には来ない、障害があるためにほかの学校に行けないというのは、こう いうのはやっぱり残酷だと思うんですよ。  そしてまた、今回の法改正により、小中学校においても特別支援教育を行うこ ととなります。これを機に、すべての就学予定者は普通の小中学へ入学すること を原則としつつ、それができない特別の事情がある場合、障害の程度に応じて普 通校の特別支援学級や特別支援学校に行くという選択をさせることが理想と考え ますが、最後に各参考人の御意見をお伺いしたいと思います。 ○委員長(中島啓雄君) 大南参考人から、簡潔にお願いします。 ○参考人(大南英明君) 基本的には、私は障害の程度に応じて通常の学級に籍 を置いていくというのは基本に考えたいと思います。  ただ、諸外国を見ても、特別な教育を行っている学校への就学率というのは日 本は少ない方なんですね。例えばイギリスは一・五%ありますし、ドイツは四% もありますし、アメリカ合衆国は〇・六%。我が国が〇・五%ぐらいですので、 これはやはり必要に応じて特別な場でということは考える必要があるだろうとい うふうに思っています。 ○参考人(嶺井正也君) 基本的に賛成でございます。御指摘のとおりだと思い ます。  今おっしゃいましたけれども、その必要に応じてというのは、本人や保護者の 必要に応じてというのが原則ではなかろうかと思うんです。今はそういうふうに なっていないところに制度的に大きな問題があると考えております。 ○参考人(三浦和君) 先ほどからお話をいたしましたように、漸次ということ であろうと私は思います。今ここでそのことをインクルージョンという形で即座 に、例えば明年度とか明後年度にやるとなったら、恐らく今度はそこの中で課題 が必ず出るだろうと思います。それほど障害児の教育というのはそう簡単にさっ とやれるものではないという、深みのある教育であるということを認識しなけれ ばならないと、かように思います。  以上です。 ○参考人(山岡修君) 長期的には賛成でございます。  ただ、要するに、どういうときにその特別な場でということでございますけれ ども、長い目で見て、その本人にとって何が必要かということをきちっと判断を していただいて、その上で必要に応じて特別な場で指導できるというのが一番良 いというふうに思っております。 ○大仁田厚君 短い時間でしたが、ありがとうございました。 ○鈴木寛君 四名の参考人の皆様、本当にありがとうございました。  時間もございませんので早速質問させていただきたいと思いますが、嶺井参考 人にお伺いをいたします。  先ほどのプレゼンテーションの中で、障害のある人の権利に関する国際条約の ことについてお話をいただきました。時間の関係でさっと飛ばされましたが、私 が漏れ聞いておるところによりますと、この議長案に対して日本の対応といいま すか反応というものが少し残念な対応で、そして、と同時に、この会議あるいは この作業グループに参加しておられる他の国からも、正に障害のある人の権利、 とりわけ教育の充実を国際的にリードしていこうと、そういう観点からはいかが かという声もあったやに聞いておりますが、この問題、ずっとフォローされてお られる嶺井参考人に少し詳しい状況と、そして参考人の御意見、日本はこの問題 にどう取り組むべきか、お答えをいただきたいと思います。 ○参考人(嶺井正也君) 今回の問題につきまして、直接私がその場で確かめた わけではございませんので、私もまた聞いた限りでございますので、その観点か らお話をさせていただきます。  ただ、この間、国際的な動きに対しましてはやはり少し消極的な対応があるか なと思っておりますのは、一九九三年に障害者の機会均等化に関する国連決議の 中で教育の条項が議論をされたときにも、統合教育を原則とするということに対 して日本の方からそれでは困るといったようなクレームが付いたという経緯がご ざいました。それは文書等で確かめることができます。  同じようなことが今回の権利条約に関しましても言えるかなと思っております。 特に、障害のある人たちの教育を一般教育に含めるということについてクレーム が付いたと、外してほしいというのが日本側の代表だったという、代表だったか 関係者だったかはちょっとはっきりしませんが、そういうことを漏れ聞いており ます。それはやはり大きな流れとしましてのインクルージョンについての非常に 大きな無理解があるというふうに考えております。 ○鈴木寛君 ありがとうございました。  嶺井参考人に更にお伺いしますが、その無理解というのを、これ、どのように 日本全体のコンセンサスにしていくか。とりわけ、私はやっぱり、政府内でのコ ンセンサスづくりというものにどのような問題があり、そしてそれをどうしてい ったらいいのかというのも私自身も考えているわけでありますが、その点につい て参考人から、何かお考えがあればお聞きしたいと思います。 ○参考人(嶺井正也君) 子どもの権利条約が批准をされまして、子どもの権利 委員会から日本政府に対しまして勧告等がなされております。そのときにも、で きるだけインクルーシブな社会にしていくようにという勧告がございました。し かし、それがなかなか実現をしない、今回の改正案にも反映されないということ を見ますと、やはり国際的な権利保障の流れについて政府として積極的にどうか かわっていくのかという基本的な姿勢が問われているのではないかと思います。  改めて、国連等でどういう議論がされているのかということを正確に外務省等 でも伝えていただき、日本側の意見を大きな流れの中に持っていくようなまとめ にしていただきたいというふうに考えております。 ○鈴木寛君 今の点は、むしろ我々にボールをいただいたというふうに受け止め まして、これからの質疑等々で更に頑張ってまいりたいというふうに思いますの で、また御指導をお願い申し上げたいと思います。  続きまして、山岡参考人にお伺いをしたいと思います。  実は私も、議員になる以前は大学で教鞭を執っておりまして、まあ今でも執っ ておりますが、私が以前担当しておりましたゼミナールに実はLDの学生さんが おりました。大変に苦労もいたしましたけれども、私自身も大変に勉強になりま したし、あるいはゼミのほかの学生も非常に成長をして、そこで特に頑張ったと いいますか、そのゼミをまとめていこうとして頑張ったリーダー的な学生は大変 に今、社会的にNPO活動あるいは社会活動で大きく貢献をし、例えば万博の試 みなどにも重要な位置を占めるようなことに成長しておりますので、そういう意 味で、今回の学教法は主として初中等段階の話ではありますけれども、さらに、 その高等教育段階、あるいはその以前である就学前教育、そこも含めて、インク ルージョンといいますか、インクルーシブ教育というのは私は非常に重要な課題 だということを肌身で痛感をしたわけであります。  そういうことを本当に実り多きものにしていくためにも、私も当時、正に学生 を指導する中で気を付けたといいますか心したことは、やはりそのLDないし、 まあ私の場合はLDの学生でありましたが、に対して、やっぱり本当に人を張り 付けて、まあ私自身ももちろん目配りをさせていただきましたけれども、完全に 一対一で、マンツーマンで、もちろんゼミは一緒にやっているわけでありますが、 マンツーマンでケアをするといいますか、サポートをするということが正に私は かぎだというふうに感じたわけであります。  山岡参考人にお伺いをしたいのは、特別支援教育、正に通級でやっていくとい ったときに、しかもそれが六から七%いるといったときに、通級の中でもう一人 きちっとマンツーマンで対応する体制とかが不可欠だというふうに思いますが、 正に親の立場から見て、そのことがどういう意義があり、またどういう必要性が あるのかということについて、私どもに補足的に教えていただけることがあれば、 先ほども御説明いただきましたが、補足していただければというふうに思います。 ○参考人(山岡修君) アメリカで特別な教育の支援を受けている人たちは一一 %いまして、一一%のうちの約半分、五・五%がLDというカテゴリーでありま す。じゃ、その子たちがすべて通級のようなところに行っているのかというとそ うではなくて、通常の学級にずっといながら、個別の指導計画のような計画の下 で支援を受けているケースもあります。  ですから、六・三%の子たちがすべてが通級に行くわけではないと思うんです けれども、ずっと一〇〇%通常の学級にいながら、今、鈴木先生がおっしゃった ようないろんな支援を受けていくわけでありまして、場合によっては、例えばT Tのような形で、先生が教室に入り込んで御指導いただくのが効果的なお子さん もいます。  それから、あるお子さんにとっては、やっぱり一対一の指導で抜き出しをしな いと効果が上がらないお子さんもいますし、あるいは小集団のような形、やはり 社会性を身に付ける上では、大集団では無理で小集団の中で身に付けるようなこ と。ですから、そのお子さんに合った方法、教科によってはお一人だとか小集団 がよかったり、あるいは一斉の授業をやっている中に一人補助の先生が付いてた まに支援をするというような、いろんな方法が考えられるということであります。 ○鈴木寛君 ありがとうございました。  できれば全員の参考人にお答えいただきたいんですが、大南参考人、三浦参考 人、嶺井参考人、山岡参考人の順番でお答えをいただきたいと思うんですが、あ と五分ということでございますので、もうお二人に限らざるを得ないんですが。  今日、四人の参考人の皆様方から共通して出たお話は、要するに、その特別支 援教育に一歩踏み込むけれども、要するにそのための体制が全く不十分であると。 皆さん理想は同じ、恐らくここにいるメンバー全員同じだと思うんですね。しか し、そこの理想にどれだけ早く近づいていくかと。先ほど三浦参考人からも段階 的にというお話がございました。これは、すべての方がやっぱり段階的にせざる を得ないと、現状と理想のギャップを見たときに。  そこで、最も重要になるのは、正にその教職員を含めた体制、人的体制の問題 だというふうに思いますが、今回、先ほどもお話がございましたように八次定数 改善が見送られました。そして、一年間の手当てということでも、私は本当の必 要な人的体制に比べるともう全然焼け石に水に近い状況ではないかというふうに 思います。  特に、大南参考人、三浦参考人は学校現場の責任者として長年の経験をお持ち でございますが、どういう考え方で定数というのは算定をしていったらいいかと。 今まではどうしても財務省の圧力がありますので、そういう数字が表に出ないま ま何か結論がぽっと出てくるわけですね。今日は財務省も文部科学省もおりませ んので、本来はやっぱりこれぐらい必要なんだということの考え方について御指 導いただければと思います。  では、大南参考人と三浦参考人の順番で。 ○参考人(大南英明君) まず一つは、先ほど特別支援学校の役割のところで二 つ大きく申し上げたわけですが、それぞれの学校にいる重度・重複障害の子供を 含めたすべての子供にこたえられる教員を配置をする。私は、人数だけではなく て、やはり専門性の高い人、ある意味でいえば免許状をきちっと持っている人を 確保できるようにしていただきたいと。  それからもう一つは、新たに法令が改正されることによって、小学校、中学校 あるいは幼稚園、高等学校への支援が必要になってきますので、その支援ができ るより高度の専門性を持った教員の養成とそれから配置ですね。ですから、今い る人数で全部やりなさいというのではなくて、小中学校への支援については、そ こに必ずプラスされる人数が必要だなというふうに思っております。 ○参考人(三浦和君) 先ほどもお話しいたしましたけれども、段階の問題もさ ることながら、結局、こんなお話を聞いたことがあるんですね。  三十人学級の中に一人ないし二人の障害があって、要するに特別なニーズを必 要とする子供がいた場合の配慮の点はどうかという問題。例えば、その特別なニ ーズを持った人たちが五、六人から十人集めちゃうというのは特殊教育ですよね。 そういう子供たちの場に教員の定数はどうかと。例えばそういう問題の比べ方。  だから、どうしたって、特殊教育、特別支援教育の場合の教員定員は、今足し た分だけでも五倍、例えば四倍ぐらい掛かるんだよと、こういうことですから、 そういう推し測り方を。そこへ、例えば今もいろいろ、段階的と私が言っている のは、必ずそこには医療的ケアの子供がどんどん入ってくるんですから、だから、 一つの学級、学級そのものも医療の方にどう考えるかという問題にまで入るんだ と僕は思うんです。  だから、今の条件に近いようなことで小中学校も変わらずに、大体、ほとんど 変わらずに皆やっていったらやっぱりどこかで無理が生じるだろうと。抜本的に、 やっぱり教育の問題というのはもう一度子供一人一人のニーズに本当に対応する ときにはどうだかということで考えて大人を配置しないといかぬという、私はも う固い信念ぐらいまでになっております。  以上でございます。 ○鈴木寛君 まだ時間ありますから、一分ずつで。 ○参考人(嶺井正也君) 根本的な教育制度の組替えをすることによって、条件 整備の仕方はいかようにも工夫できると私は思っています。今の枠組みだとやは り追加を取るしかない、もっと違う根本的な議論が必要じゃないかと考えていま す。 ○参考人(山岡修君) ただ人数を増やせばいいということではなくて、恐らく、 私民間企業に勤めているんですが、ここ十年ぐらい、人数は増えない、予算は減 らされる、でも売上げ上げろという世界で生きておりますので、工夫ができるん じゃないかというふうに思っております。 ○鈴木寛君 どうもありがとうございました。 ○山下栄一君 今日は四人の参考人の先生方、本当に貴重な、短い時間の中でご ざいますけれども、御意見賜りまして、感謝申し上げております。  正に教育を受けているなという感じがするわけですけれども、幾つか御質問を させていただきたいと思います。  条件整備の面で、理念は分かったと。しかし、特に人的な、専門性を持った人 の配置、施設整備もあるわけですけど、特にこの人的な配置の面での抜本的な取 組がないとなかなか理念はあっても進んでいかないということは審議の中でも、 今日の御意見ちょうだいしても実感しておるわけですけれども、今、山岡参考人 もおっしゃいましたが、限られた財政の中で、限られているけれども、余りにも この分野における予算の配分の優先順位が低過ぎたのではないかという、こうい うことは指摘できると思いますし、特別枠をつくってでも、一般歳出の全体的な 削減の中で、これは違うんだという、そういう取組が国においても自治体におい ても必要な、そういう時代なんだということを今回の法律の理念転換は示そうと しているというふうにとらえたいわけですけれども。  私は、これは国民の支持がないとこの特別支援教育というのは進んでいかない と。先ほどからも教えていただいておりますように、世界的な人権の保障の流れ からこの部分はエアポケットのように後れておるんではないかということを私も 実感しております。  その国民的な支持を広げるために、この特別支援教育というのは学校を中心に やっておるわけですが、様々な連携が特に大事な分野ではないかと。教員免許の 観点も大事なんですけど、地域に様々な、NPOも含めまして人材がいらっしゃ ると。それをやはり地域ぐるみで特別支援教育を支えていくんだという、そうい う流れが必要であろうと。  そういう意味で、私はこの特別支援教育コーディネーターというのは非常に大 事な役割ではないかと。これは特別支援学校だけじゃございません。一般の、一 般といいますか、通常の学校でもそうだというふうに思います。  このコーディネーターが問われる、要求される能力というのは、私は教員免許 がなかったらいかぬというものでもないんではないかと。学校においても校内委 員会をつくっていく必要あると思いますけれども、そのかぎを握るキーマンとし てのコーディネーターというのは、地域のことがよく分かってなきゃ駄目だと。 そして、福祉との連携、医療との連携、場合によっては就労支援の、労働との連 携、そういうことをよく分かった上で、そして、なおかつ保護者や生徒の気持ち もよく分かると、それは教員免許が必要なのかと。まああった方がいいかも分か りませんけど。そういう観点からのコーディネーターのとらえ方も必要ではない かというふうに思っておるわけです。様々な経験がだけど大事だと。御自分のお 子さん、また身内でそういう方がいらっしゃったというふうなことも含めて、こ ういうコーディネーターの位置付けをちょっとやはり重視して、どんな人がふさ わしいかということはいろんな議論があっていいのではないかと、こういうふう に考えておるわけです。これが一点です。  もう一つは、地域の連携という意味で、教員OBや福祉施設での御経験ある方、 場合によっては看護師、保健師のOBの方も含めまして、こういう特別支援教育 における地域の人材、まあ支援員と言ってもいいのかも分かりませんけど、教員 サポーターといいますか、そういう方々を登録して、そういう方々に応援してい ただくと。特に発達障害の対応のためにはこういうことが特に必要ではないかと いうふうに思うわけですけれども、この二点、それぞれの参考人の皆さんに御意 見ちょうだいしたいと思います。 ○委員長(中島啓雄君) じゃ、大南参考人から。 ○参考人(大南英明君) 今、先生が二点についてお話しになったわけですが、 これまで特別支援教育の中で考えてきているコーディネーターというのは、学校、 小学校、中学校あるいは盲・聾・養護学校で一体、学校から地域なり関係機関に 発信をしていく、そのまとめ役を考えてきたわけですが、今御指摘のように、地 域の中で医療、福祉、保健、労働等に非常に造詣の深い方がコーディネーターと しておられれば、その方と学校とがうまく連携を取っていけばまさしく地域ぐる みのことができるんではないだろうか。  この考え方の一つとしては、東京都の検討委員会が出しました報告の中では、 エリアネットワーク構想というのがございます。東京都を十幾つかのエリアに分 けて、その中で教育と福祉と医療、保健が連携をしていく。ただ、これ教育委員 会が出しているものですので、先生が御指摘のような形のコーディネーターでは なくて、やはり学校の中にいるコーディネーターが外へ向かってということでご ざいますが、その逆の立場が当然あっても大変学校としては喜ばしいことだし、 特別支援教育の推進には役立つんではないかというふうに思います。 ○参考人(嶺井正也君) 国民的な支持を広げるためにということを最初におっ しゃいましたが、そのことについては、まず私は、だからこそ子供同士が一緒に 学び育つという関係をつくった方が、そこから共生社会が広がっていくというふ うに思いますので、是非、早くからそういう育ちの場を設定することは大事だろ うと思います。  もう一つは、やはり高齢化社会と言われる中で、私たち自身が様々な障害を持 つようになってまいります。私たち自身の問題としてこれをどう考えるんだとい うことを問題提起していく必要があるんじゃないかと思います。  御指摘の点ですが、私はやっぱり学校の中のコーディネーターは、障害がある 子供の姿と、その子供と周りの子供たちの人間関係、それから学級の様子などを 知った上で、なおかつどういう手だてが必要かということを考えるとしますと、 やはり私は教員免許が必要だろうというふうに考えております。  それから、最後におっしゃいました地域支援員、これは従来、これまでも様々 な形で開かれた学校づくりという中でやられておりますので、その充実、発展を していく中に入っていけばいいのではないかと判断しております。 ○参考人(三浦和君) ただいまのところと同じなんですが、地域支援人材をつ くっていくということは大変大事だと思う。  二、三日前に、ちょっとあれですが、銀行の方で、要するに、私立学校に助成 をする銀行がありまして、そこに委員として出たんですが、その方、定年を迎え たら必ず学校の子供たちのためにやるんだということを楽しみにしているという こと、そういうように登録制、そういう方々が一杯いるんだな、最近はいるんだ なと、この団塊の世代の方は。だから、登録制か何かでもってどんどんそういう 開拓を一方で、学校の先生になるとかなんとかじゃなくてやることが必要だと思 うんです。そういう人材をNPOの方々がやっていけば、どんどん増えるんじゃ ないかと。  それからもう一つは、やっぱりコーディネーターのところ、私ちょっと迷うの は、確かにいわゆる会社の方でいろいろと営業をなさった方などはこういうとこ ろについては非常にうまい方が一杯いると思うんです。ただ、教育の世界という のは、教育のそのほかの担任の先生方との連動で一体どういうことを、うまくい ろんなことをやっちゃったからその人がいいというふうにはなりにくい。どうも その学校の一つの特異なる言わば姿があるんですね。ああ、だからそこがちょっ と心配ですけれども。でも、そういう開拓もできれば。  以上でございます。 ○参考人(山岡修君) 大変いい御質問をいただきまして。この子供たちの場合、 教育だけではないということですね、福祉、就労、医療ということで。  実は文部科学省は平成十五年から特別支援教育体制推進事業を行っておりまし て、十七年度からは厚生労働省が発達障害者支援の事業をやっております。これ が多少連携が取れておりまして、いずれも地域での、厚労省の方も発達障害の支 援コーディネーターのような相談員のようなものをつくろうということを考えて おります。  それから、厚労省の方では、三、四年前から発達障害者支援センターといいま して、各都道府県に一か所ぐらい地区をつくろうとしていまして、こういったよ うな、一つの省庁だけでなくて、文部科学省、厚生労働省、いろんな省庁が重な ってこういった支援の体制をつくっていくことが大事だというふうに思っており ます。 ○山下栄一君 教員免許の件ですけども、教員の資質向上が叫ばれておるわけで すけど、私は、教育実習なんですが、これは別に特別支援学校の教員免許だけじ ゃなくて、基本的に教員免許を取る場合に、こういう障害を持っておられる方に 対する理解を、教員になる人がやはり基本的に現場で経験があった方がいいので はないかと。限られた単位数の中ではあるんですけど、私は、教育実習というの がますます重要な時代になってきている、現場における臨床的なことを抜きに教 員免許というようなことはなかなか難しい、そういう時代じゃないのかなという ふうに思っておりまして、この教育実習の在り方ということも教員免許制度その ものの中でちょっととらえ方を大幅に拡充するようなことで考えるべきではない かなというふうに思っております。  教育実習の場が、もちろん通常の学校でも発達障害の方もいらっしゃるでしょ うし、特別支援学級もあるでしょうし、通級指導もやっておられる、また養護学 校等のそういう特別支援学校でもいい、場合によっては、先ほど山岡さんがおっ しゃったように発達障害支援センターでそういう経験を、教員免許の、教育実習 という形がいいかどうか分かりませんけど、経験してみると。場合によったら作 業所等に経験をすることも踏まえて教員免許も考えるというふうなことも非常に 大事な時代になってきたのではないかというふうに考えておりまして、ちょっと もう時間がなくなってしまいましたですけど、大学の先生どちらかと三浦先生に お願いしたいと思います。 ○委員長(中島啓雄君) どちらに、大南先生ですか。 ○山下栄一君 大南先生で。 ○参考人(大南英明君) 教育実習の期間については、現在、教育職員免許法で 決まっておりますが、例えば私が今勤めております大学では、二年生の時期から 八王子市等の市の教育委員会と学校インターンシップという契約を結んでおりま す。それで、一週間に一回なり二回、曜日を決めて小学校、中学校へ出掛けてい く、あるいはその中にいる障害のある子供の支援をするとか、そういう教育実習 プラスアルファの部分でやっておりますが、今の御指摘の点は是非今後の教員養 成の審議の中で取り上げられると大変うれしいことだというふうに思います。 ○参考人(三浦和君) 教育実習の期間と機会というのは大変大事であるという こと、今、同感でございます。この期間と機会というのが、今はっきりとした、 明快な形で教育実習やってない。教育実習の期間になったからという、いわゆる 機会も期間も本人がどうだというよりも、これをやらないと免許状取れないから というような感じになってしまう。ただ、一方では、大学、私も教えたことは随 分あるんですけれども、その教育実習やった後、学生は一生懸命勉強する。気持 ちが全然違っちゃうんですね。そこで、やっぱり教育実習はもう少し長いともっ と目覚めるだろうと。  それからもう一つは、昔、私は師範学校出なもんですから、半年以上教育実習 なんです。本科三年というのは、もうほとんど行って、来たらあと免状もらって 行くという、その代わり、子供と接して自分が今まで勉強したことがそこで、あ っ、足りないなということが分かるんです。だから、これは今のはしようがない けど、四年間でよくまあ免許状を渡せるなと思って感心しているんですけどね。  以上でございます。 ○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。今日はどうも参考人の皆さん、あり がとうございます。  最初に大南参考人にお聞きをいたします。  今日は各委員から、やはり教員の人的体制なしにこの課題が進まないんじゃな いかということが出されておりますし、先ほどもお話がありました。それで、大 南参考人は中教審の特別支援教育特別委員会にも所属をされていたわけで、当然 その議論の過程では、教員定員の配置というものは言わば前提としての議論があ ったんではないかと思うんですが、その辺の経過と、結果として十分な配置がさ れてなかったことへの御意見、それから、先ほどは特別支援学校のいわゆるセン ター的機能についての人的配置の必要性を述べられましたけども、いわゆる特別 支援教育、小中学校等における、ここでの人的配置の必要性についてはどういう ことをお考えか、まずお聞きしたいと思います。 ○参考人(大南英明君) まず第一点目の人的な配置を含めた条件整備の件でご ざいますが、これは、審議の過程の中では話としては出てまいりまして、現在こ ういう状況なので、これを更に進めるためにはこれぐらい人数は、具体的な人数 は出ておりませんけれども、より多くの人的な配置が必要であろうという話は出 ておりましたが、最終的には、条件整備を答申の中に入れるというのはどうもふ さわしくはないだろうということで、今回の答申の中には出てないわけです。  それから、二点目の特別支援学級、特別支援教室への人的な配置でございます が、まず特別支援教室が目指すところでいきますと、先ほど山岡参考人が図を出 されておりましたが、一週一時間程度から二十八時間程度まで非常に幅のある教 室を用意をしていかなければならない。としますと、一つは現在の特殊学級に配 置をされている教員プラスアルファぐらいのところで教員が配置されることが必 要だろうと。今一学級八人で一人の教員しか配置されていませんので、複数の学 級で複数人配置をされるようなことが考えられる。  それから、通級による指導が現在行われておりますが、これも人数がかなり多 いところで、一人の教員がかなりの人数を負担しなければならないということが あるわけです。それから、東京のように交通機関が発達しているところでは児童 生徒が移動してまいります通級による指導というのは可能なんですが、交通機関 が発達をしていない、人口の集約していない地域では、むしろ児童生徒が動くん ではなくて教員が動く巡回による指導、訪問教育とは違うんですけれども、児童 生徒は学校にいて教員が動く、これに対して新たに教員を付けていくことが私は 必要なんではないだろうかというふうに思っております。 ○井上哲士君 ありがとうございます。  次に、山岡参考人と三浦参考人にお聞きをいたします。  先日、NPO法人の大人のADD&ADHDの会というのがアンケート発表さ れていたのを非常に興味深く読んだんですが、既に大人になられているADHD 等の方なんですが、学校に通うのがつらいと感じたことがあるかということに八 四%の方がそう答えられ、そのときに先生は理解してくれましたかというのには、 九二%が理解してくれなかったと、こういうふうに答えておられまして、先生の 理解がちょっとしたことでもあれば随分違うんじゃないかなということはここか らも見て取れるんです。  同時に、これで興味深かったのは、ADHD等の診断を、要するに気付いてか ら、それから診断を受けるまでの期間が平均で四十一・四か月ですから、三年以 上掛かっているんですね。この人たちは既に一定の年齢になっていますから、今 とは少し状況は違うのかもしれませんけれども、なかなか親が認めたくない、本 人も認めたくないとさっきお話ありましたけれども、そういうことも少し表して いるんじゃないかなという気がしております。  一方、今回そういう人たちをきちっと位置付けるということでの前進はあるわ けですが、これも全国LD親の会が二〇〇四年十月に出されたいろんなのを見て いますと、プライバシーへの配慮がないと。懇談会で保護者の承諾なしに先生が 子供の診断名を出してほかの親に子供の話をされてしまったというような苦情と いいますか、出ております。ですから、特別な配慮はしてほしいけれども、ほか の親や子供に知られたくないという、こういうお気持ちもここにはあるんだろう と思うんですね。  ですから、今回、LDやADHDの子供たちに特別な支援をする場合に、それ を言わば知られるということも出てくるわけですね。これは根本的にはやっぱり いろんな社会的認識が上がらなくちゃいけないという土台はあると思うんですが 、しかしそれを待つわけにはいかないわけで、うまくこのことが機能していく上 で、親の側、そして学校の側で具体的配慮をしたりする点で何が必要かというこ とをそれぞれからちょっとお聞きしたいと思います。 ○参考人(山岡修君) まずは、おっしゃったとおり、先生が理解できない。例 えば忘れ物が多いとか、それからだらしないとか、授業に集中できないとかいう ところの背景にADHDがあったりするわけですけれども、その背景にあること が分からないので、ふざけているんだとか、辛抱が足りない、家庭のしつけが悪 いということに、誤解を受けるわけです。そうすると、先生は立たせるとか叱責 に入って、かえって逆効果になってしまうと。まずは先生がそういったものが背 景にあってそういうふうなことになってしまうということを理解してあげること。  それと、今おっしゃったように、クラスの中で、例えば目が悪ければ眼鏡掛け るじゃないか、あるいは背が低ければ台に上がって物を取るじゃないかと、それ と同じなんだよと。要するに、この子供たちは、今は学校の先生はすべての子に 同じように手を掛けることが公平と言っていますけれども、そうではなくて、必 要な子にはちょっと手を掛けてあげる、それこそが公平なんだということで、ク ラスの中でもそういういろんな違いのある子がいるということがあって当然だし、 そういう子に必要であれば助けてあげようねというような雰囲気をつくっていく ことが大事だと思います。  それから、学校の中で、保護者も実は認めたがらないことが非常に多くありま す。そこのところが非常に難しいんですけれども、今おっしゃったとおり、社会 全体での理解というのを高めながら、並行して進めていくしかないなというふう に私は思っています。 ○参考人(三浦和君) 子供と会うとき、あるいは子供と話をするとき、子供の 目の高さに合わせることということがよく言われますね。教師と子供との関係も 密度の濃い形でどうつながるかということの姿形というのがやっぱりあると思う んですね。それと似たように、親御さんと、今度は親御さんとの理解者であろう とする人たちがどのような形で接触するかというのも大変大事なことで、これな んかもやっぱり、丁寧な言葉ばっかりお互いに使っていると丁寧な形でしか付き 合えないと。ぞんざいな形がいいかどうかはこれも別ですけれども、いずれにし ても、何といいますか、同じ目の高さ、同じ心の高さというか、同じ気持ちとい う、そういう共有する場がどうであるか。  それから、どんなことをお互いに経験したか、特に経験の仕方というのは私は とても大事だと思うんですね。あなたと似たような経験を私もどこかでしていま すということが言い切れるか言い切れないかによって親御さんとの関係は成り立 つと思う。全く知らない人とはつながらないと、こういう形。私はそんな気持ち で、分かったような分からないような言い方しましたけど、分かってください。  以上でございます。 ○井上哲士君 分かりました。  次に、嶺井参考人にお聞きをいたしますが、最初のお話の中で、今回LD、A DHD等を支援対象として位置付けたけれども、まだまだ範囲が狭いではないか というお話があったかと思います。  諸外国のいろんな施策とも比較しまして、さっきもありましたように、すべて の子供に、教育というものは一人一人ニーズに合ったものにするというのは必要 なんですが、特に今回のことで言いますと、まずはここまでは広げるべきだとい うようなことが諸外国との関係も含めましてありましたら、お話しいただきたい と思います。 ○参考人(嶺井正也君) 障害の種類とか程度とかいう問題よりも、私が申し上 げましたのは、先ほどもありましたように、地域の学校で、兄弟と一緒に入りた いという子供たちがいろんな形で学校に入っているわけですね。その中には身体 障害の子もいれば、発達障害の子もいれば、知的障害の子もいると思うんです。 そういう願いが受け止められるような通常学級のシステムにしてほしいというこ とが基本でありまして、こういう障害があるから特別支援教育が必要なんだとい うことではなくて、基本的に場を共通する中に手だてを受ける、そういう要求が あったときにこたえるような柔軟なシステムにしていただきたいというのが私の 基本的な願いです。 ○井上哲士君 次に、大南参考人と三浦参考人にお聞きをいたしますが、特別支 援学校でどういう教育課程を今後していくのか、構築をされていくわけですが、 私も京都市がやっている総合養護学校なども見てきたわけですけれども、既に個 別指導計画というのも作られ、そして障害の種別の違う子供たちをグルーピング をしまして、クラスとは別に授業はグルーピングでいろいろやるということがや られておりました。それはそれで必要だと思うんですが、ただ、場合によっては、 どうも担任の先生がいても週のうち半分も授業を見ないというようなこともある ようなことがありまして、結果として一人一人の発達をトータルにきちっと見る ということがおろそかになるんじゃないかというような声も先生方からはお聞き をしたわけですけれども、そういう今後の教育課程の在り方についてどうお考え か。  あわせて、その個別指導計画も、幾つか聞きますと、長期目標、短期目標とい うのがあるんですが、短期目標の中で具体的に分かりやすいことが余りにも強調 されて、どうも総合的な発達がおろそかになるんじゃないかと、こういう声もお 聞きしたんですが、その辺の今後求められる教育課程の在り方等について御意見 をお聞きしたいと思います。 ○参考人(大南英明君) まず第一点ですが、学年にもよると思うんですが、低 学年のうちはできるだけ特定の教員が特定の子供にかかわる時間を多くしていく、 学年が進むあるいは発達が進んでいきますとほかの教員のかかわる時間を増やし ていくという、こういうことが私は指導の基本になっていくんではないかという ふうに思います。  そのベースになりますのが、今先生が個別の指導計画というお話をなさいまし たが、今後考えられるもっと大きなプランといいますか計画は、個別の支援計画 という構想がございます。  これは、障害が分かった時点から学校を卒業した後までの長いスパンで、例え ば、大南が障害が分かったのが二歳の段階だとすると、まず医療が私の医療の支 援計画を作ってまいります。それから、両親が保育所へ入れたとしますと、これ で福祉がかかわって私の療育計画を、あるいは保育計画を作る。そして、学齢が 近づけば、教育がかかわって、学校へ入った後どうするか。で、学校へ入ります と、今度はそこで個別の教育支援計画。まあ支援計画が変わるわけではなくて教 育という言葉が入るわけですが。そして、今度は卒業する時期になりますと、例 えば労働関係機関とかかわって、最後に卒業した後、今度は私は労働関係機関の 支援を受けながら仕事をしていくという、そういう非常に大きな個別の支援計画、 それを基にしながら個別の指導計画が作られていきますと、先生が御心配になっ ております、例えばコップから水をこぼさず飲むという、本当に具体的で、この ことが一体将来の何につながるんだという、先生方心配をお持ちかもしれないん ですが、それは私の個別の支援計画の中の日常生活の基本的な動作をマスターす るという中のほんの一つであるという、そういうふうな理解ができてきますと、 個別の支援計画を基にいい教育ができるんではないかというふうに思います。 ○委員長(中島啓雄君) では、三浦参考人、簡潔にお願いいたします。 ○参考人(三浦和君) 発達をトータルに見ることができたかどうかという、見 てなきゃこれは本当にお粗末の限りだと思いますね。この場合には、やっぱり計 画と指導の実際と評価という三つのサイクルをきちんと、その担任の集団がきち んと持っているかどうかにかかわってくると思うんですね。  そういう計画がどれだけできるか、そういう気持ちがどれだけできるかという ことと、特別支援計画を立てること、あるいは、要するに計画を立てることが、 幾ら立派な計画を立てても、それを実際にどの場で、どういう時間帯で、どんな ふうな周りの支援も受けながらやるかというのは、そんな指導の構造、指導その ものの構造をどれだけチームで、チームティーチングといいますけど、その集団 の教師がどれだけ練っているか、そういう問題が大変大事なのではないかと。  最近は、そういうところが、どちらかというと、やっぱり大事なのはその教師 集団がどれだけ綿密な形で連携を取っているかということが、私も最近現場を離 れてよく分からなくなっているんですが、多少その点が不足しているのかなと思 ったりもするんですが、いかがなもんなのでしょうか。もう少し今度、もう一度 この機会にのぞいてみたいと思います。  ありがとうございます。 ○井上哲士君 ありがとうございました。 ○委員長(中島啓雄君) 以上で参考人に対する質疑は終わりました。  参考人の皆様に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがと うございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。ありがと うございました。(拍手) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ □ 編集後記 ------------------------------------ 07:05 2006/04/28 □ ------------------------------------------------------------------------ 久方ぶりのすっきりした青空です。(3) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ LDニュースの記載内容に関する質問には原則として回答いたしかねます ■ ■ 編集に際し正確を期していますが最終保証責任は免責とさせて頂きます ■ ■ LDニュースの記載内容を転載される場合には必ず下記までご連絡下さい ■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 親の会「けやき」連絡先 E-mail: keyaki@box.club.ne.jp [1999/03/12 から] ホームページ URL : http://www.ne.jp/asahi/hp/keyaki/ [1998/07/31 から] LD 関連の情報交換・意見交流・質問は下記の「LDフォーラム」をご利用下さい LD-FRM URL: http://www.ne.jp/asahi/hp/keyaki/LD-FRM/ [2000/08/17 から] ★ 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