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□ LD・発達障害等関連図書 → http://www.ne.jp/asahi/hp/keyaki/books/ □ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ LD(学習障害)ニュース #644 2006/04/28 発行 登録(配信)読者数 3,539 ■ ■ LD = Learning Disabilities LD親の会「けやき」編集 1997/09/10創刊 ■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▼ LD親の会「けやき」の正会員・通信会員・賛助会員・ボラ会員募集中! ▼ ▲ 入会方法等はこちら → http://www.ne.jp/asahi/hp/keyaki/join.html ▲ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ 第164回国会 参議院 文教科学委員会 会議録抜粋(1) 2006/04/20 ■ □ 編集後記 ------------------------------------ 06:14 2006/04/28 □ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■□■□■ この LDニュース は「等幅」フォントでお読みください ■□■□■ ■ LDニュースへ講演会等のイベント情報の掲載を希望される方へ・・・ ■ ■ 詳細は下記サイトをご覧下さい。原稿は適宜編集する場合があります。 ■ ■□■□■ http://www.ne.jp/asahi/hp/keyaki/HTML/sample.html ■□■□■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ 第164回国会 参議院 文教科学委員会 会議録抜粋(1) 2006/04/20 ■ ------------------------------------------------------------------------ http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kaigirok/daily/select0106/164/16404200061009c.html −−−−−−−−−−−−−−−−−− ○委員長(中島啓雄君) ただいまから文教科学委員会を開会いたします。  学校教育法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、本案の審査のため、参考人として帝京大学文学部教授大南英明君、専 修大学経営学部教授嶺井正也君、全国特別支援教育推進連盟理事長三浦和君及び 日本発達障害ネットワーク代表・全国LD親の会会長山岡修君の四名の方に御出 席をいただいております。  この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ、本委員会に御出席いただき、誠にありがとうござ います。  参考人の皆様には忌憚のない御意見をお述べいただきまして、本案の審査の参 考にさせていただきたいと存じますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。  本日の会議の進め方でございますが、まず大南参考人、嶺井参考人、三浦参考 人、山岡参考人の順でお一人二十分程度で御意見をお述べいただき、その後、委 員の質疑にお答えいただきたいと存じます。  なお、御発言は、意見の陳述、質疑及び答弁のいずれも着席のままで結構でご ざいます。  それでは、まず大南参考人から御意見をお述べいただきます。大南参考人。 ○参考人(大南英明君) 御紹介いただきました帝京大学文学部の大南でござい ます。この委員会におきまして参考意見を述べさせていただく機会を与えていた だきまして、ありがとうございます。  法案の改正にかかわる意見を申し上げますことにかかわって、若干私の経歴を 紹介させていただきます。私は、現在は大学におりますが、今年で九年目でござ います。小学校、中学校で特殊学級を十五年担当いたしました。それから、養護 学校、知的障害の養護学校へ移り、東京都教育委員会で指導主事で仕事をして、 現在の文部科学省で十年仕事をしてまいりました。そして、また東京都へ戻り教 育委員会で、公立学校の教員としての最後は都立の養護学校の校長でございまし た。こういうことで、四十数年間、知的障害児の教育、自閉症児の教育にかかわ ってまいりましたが、東京の盲学校、聾学校、養護学校、あるいは特殊学級だけ ではなくて、全国各地の盲学校、聾学校、養護学校、あるいは特殊学級を見る機 会がございました。  そういうことを踏まえながら、今回の学校教育法の改正に当たって、特別支援 学校という形で新たな転換をしてまいるわけでございますけれども、各都道府県 によって設置の仕方あるいは学校の運営の方法がそれぞれ特色があるということ を踏まえる必要があるというふうに思っております。  それでは、お手元に資料が配付してございますので、それに基づきまして話を 進めてまいります。  まず、特殊教育から特別支援教育への転換ということでございます。  これは、先生方もう既に御承知のことと思いますが、特殊教育という言葉、五 十年以上使われてきたわけでございますが、いろいろなところで特殊教育という、 スペシャルエデュケーションの日本語訳ではございますけれども、特殊というと ころに違和感を感じておられた方々もたくさんおられたわけでございます。今回、 といいますか、平成十三年一月に二十一世紀の特殊教育の在り方という最終報告 が出されまして、その中で特別支援教育という言葉が使われてまいりました。こ の言葉は特殊教育に代わる言葉として現在では全国各地で使われております。ま だ今後、法が整備されることによって更に徹底をされるということになろうかと 思います。  特別支援教育になりますと、障害のある幼児児童生徒一人一人のニーズに応じ た教育が展開をされていくわけでございますが、現在の盲学校、聾学校、養護学 校あるいは特殊学級等がなくなってしまうという心配が一方であるわけですけれ ども、決してそういうわけではなくて、特別の教育の場は当然必要に応じて継続 をしていく、そしてその上に障害のある幼児児童生徒一人一人のニーズに応じた 教育を展開をしていこうという、そういうことでございます。  お手元の資料の三枚目にカラー刷りの特別支援教育の対象の概念図というのが ございます。現在の特殊教育の対象となりますのは盲学校、聾学校、それから小 学校、中学校の中に設置をしてございます特殊学級、さらには通級による指導と いうのがございますが、ここで七つの障害を対象としてきております。そして、 義務教育段階の児童生徒の約一・七%の児童生徒を対象としているわけでござい ますが、今後、特別支援教育に転換をすることによって、現在通常の学級にいる LD、ADHD、高機能自閉症等、この数が約六%程度ございますが、それを合 わせた約七%から八%を対象にしていこうと、現在の特殊教育の五倍の児童生徒 を対象にして考えようという、非常にスケールが大きなものになってまいります。  二つ目でございますが、そのうちの、現在の盲学校、聾学校、養護学校を特別 支援学校にということでございますが、それが可能になることの意義といいます のは、まず第一点は児童生徒の障害の重度化、重複化への対応でございます。  最後のページに重度・重複学級在籍率の推移というのがございます。昭和五十 五年から取ってございますが、昭和五十四年、この五十五年の一年前の年に養護 学校教育の義務制が実施をされております。このことによって我が国の義務教育 はほぼ完成をしたと言うことができるのではないかと私は思っております。  一番上の線が肢体不自由の養護学校でございますが、全体の四分の三、七五% が重複障害で二つ以上の障害を併せ持っている子供たちであるという、そういう ことで、ほかの障害につきましても大体三〇%から四五%程度の重複障害の子供 たちが在籍をしているということです。  それから、この特別支援学校は、これまでの盲学校、聾学校、養護学校のよう に障害別に分けた学校ではなくて、障害の枠を超えた学校として設置ができるよ うになりますので、児童生徒の通学の便を有利にすることができるんではないか と思っております。例えば、盲学校、聾学校は県によっては一県に一校ずつしか ないという状況もございます。そういう点では、特別支援学校、障害の枠を超え た学校を設置することを可能にすることによって、幾つかの学校の中で、視覚障 害の子供も、聴覚障害の子供、知的障害の子供、肢体不自由の子供たちが学べる 学校をつくっていく、そのことによって通学が便利になる。  それから、小学校、中学校等への支援の充実でございます。現在も盲学校、聾 学校、養護学校は小学校、中学校等に支援を若干はしておりますけれども、専門 性の高い教員がおりますので、その教員の専門性を生かして小学校、中学校等へ 支援をしていくという、そういうことが必要になってまいります。  実は、そのことにつきましては、三番のところで特別支援学校の役割というこ とを書いておきましたが、そのセンターとしての機能の中で小学校、中学校等へ 具体的にどのような形で支援をするかと、これは後ほどまた若干述べさせていた だきます。  それから、特別支援学校、現在の盲学校、聾学校、養護学校ですが、これを今 後、設置者がいろいろな形で学校のありようを変えていくと思われますが、その 施設設備を有効に活用することができるのではないかというふうに考えておりま す。  三番目が特別支援学校の役割でございますが、障害のある幼児児童生徒への専 門性の高い指導の徹底をしていく、これが特別支援学校の大きな役割でございま すが、その次にはそれを、二つ目の役割としては、地域の特別支援教育のセンタ ーとしての機能の充実を図っていくことが大事であると思います。  小学校、中学校等の教員に対する支援がありますし、小学校、中学校におりま す障害のある幼児児童生徒への指導あるいは支援ということもございますし、小 学校、中学校の教員に対する研修に協力をしていくという。二番のところでも若 干申し上げましたが、障害のある幼児児童生徒が特別支援学校の施設設備を活用 していく、これは、特別支援学校にいる幼児児童生徒はこれは当然でございます が、幼稚園、小学校、中学校あるいは高等学校にいる幼児児童生徒も特別支援学 校の施設設備が使えれば大変うれしいことだというふうに思います。  四番目は、小学校、中学校等における障害のある児童生徒に対しての適切な教 育を実施をしていくということでございますが、現在、特殊学級は全国の小学校、 中学校の約半分の学校に設置をされてございます。これが特別支援学校、さらに は中教審の答申の中で特別支援教室という形に目指していきますと、多くの学校 といいますか、すべての小学校、中学校に特別支援教室を設置をしていく、これ は将来の夢といいますか構想でございますが、そのような形になっていきますと、 障害のある児童生徒が一番身近なところで教育を受ける機会が確保できるという ことになろうかと思います。  二つ目は、特殊学級を特別支援学級という形で今回の法改正の中で書かれてお りますが、私は一九六〇年から特殊学級を担当してきましたが、その当時から、 この特殊学級という言葉に対する、何というんでしょうか、違和感といいますか、 少し別の言葉にしてもらえないだろうかという思いが保護者の方から寄せられた ことも記憶の中にございますし、今もそういうことを言われてきております。  都道府県によってはそれを条例等で養護学級あるいは障害児学級、東京の場合 には心身障害学級という言葉で特殊学級の名称を置き換えております。実際は、 例えば私が小学校に勤めておりました場合には平仮名でふたば学級という呼び方 で、特殊学級という呼び方は実際にはほとんど使っていないといいますか、役所、 書類を出すときに特殊学級ということを使うんであって、ふだんはふたば学級等 の、愛称というんでしょうか、そういうものを使ってきたこともございます。  そういう点では、特殊学級が特別支援学級に名称を変えていくという、これも 大変多くの方の賛同を得られることではないかというふうに思います。  そして、三番目は、LD、ADHDという新たな障害ということでございます が、もう十数年あるいはもっと前から研究はされてきた障害でございますが、学 校教育の中で取り上げられてくる、さらには適切な教育を展開をしていくという のはこれからの課題になろうかと思います。  それから、特別支援学校の教員免許状でございますが、現在、盲学校、聾学校、 養護学校の別に出されております免許状でございますが、これは幼稚園、小学校、 中学校、高等学校の免許状を取った上で盲学校、聾学校、養護学校の免許状を取 るという、こういう二重構造に、二重構造といいますか、たくさん単位を重ねな ければいけないということがございます。特別支援学校教員の免許状についても やはり同じような形で、専門性を確保するという点で単位を多く取っていただく、 そのことによっていろいろな障害への対応ができるように考えていこうという、 そういう構想が現在のこの特別支援学校の教員の免許状でございます。三つの種 類に分かれていた免許状を一本化をしていく。特別支援学校という障害の枠を超 えた学校の中で使えるようにしていこうと。小学校、中学校等への支援をしてい くには、やはり特別支援学校に勤務をされる先生方は特別支援学校教員の免許状 を必ず取っていただくということが今後必要になってくるのではないかと思いま す。  二枚目のところで、課題をというのは、これまで特別委員会で検討してきまし たメンバーの一人としては課題を出すのは何だということを言われそうでござい ますが、いろいろなところで考えてみますと、次の三つの点が大事な、今後の課 題として出されるのではないかと思ってまとめてみました。  まずは、教員の意識改革が必要であると思います。これは、先ほど申し上げま したように、現在の特殊教育の対象である子供の五倍の児童生徒の教育をこれか ら展開していくわけでございますので、小学校、中学校、高等学校、さらには幼 稚園の先生方の障害に対する考え方を変えていただかないと、障害児の教育は専 門家に任せればいいという、そういうことではなくて、私もそこに加わっていく んだという、そういう思いを持ってほしいというふうに思っております。それか ら、そのためには、まずは特別支援学校の教員が、自分が専門とする障害だけで はなくて、今後、特別支援教育の対象となってくる障害についての理解と認識を 深めていくことが大切であるというふうに考えます。  それから、二つ目は、都道府県教育委員会あるいは市町村教育委員会が特別支 援学校の設置を今後どのように考えていくのか。できるだけ早い時期に各都道府 県ごとのプランを作ってほしいというふうに願っております。もう既に検討委員 会で報告をまとめている都道府県もございます。さらには、市町村では、特別支 援学級、将来は特別支援教室でございますが、これをどのような形で設置をして いくのかという、その将来構想もそろそろまとめていただく必要があるのではな いかと。  三番目は、中央教育審議会の答申の中にも書かれてございますけれども、障害 のある幼児児童生徒、あるいは障害のある方々に対する国民全体の理解と認識を 深めていく、こういう活動が大事になってくるのではないかというふうに思って おります。  以上、時間の中で私の考えを述べさせていただきました。  どうもありがとうございました。 ○委員長(中島啓雄君) ありがとうございました。  次に、嶺井参考人にお願いいたします。嶺井参考人。 ○参考人(嶺井正也君) 御紹介いただきました専修大学の嶺井と申します。  私は、障害児を普通学校へ全国連絡会という保護者や当事者の団体と一緒に活 動をしております。その関係で、統合教育やインクルーシブ教育が進んでおりま すイタリアの事例などをこの間研究してまいりました。大学では教職課程を担当 しております。  それでは、私の意見をこれからパワーポイントを使って紹介させていただきた いと思います。(資料映写)  今、大南先生の方からは日本のこれまでの障害のある子供たちに対する教育の 歴史を踏まえたお話がありましたけれども、私の方は少し視野を広げまして、国 際的な流れがどうなっているのかというところからお話をさせていただきたいと 思っております。  なお、今日、私、呼んでいただきまして有り難いんですが、かなり審議が進ん だ段階で呼んでいただくよりも、もう少し前に、当事者の方たちも含めて呼んで いただくと、より深い審議になったのかなと思っておりますので、御参考までに 申し上げておきたいと思います。  私の今回の法改正への基本的な立場なんですが、私は、この間ずっと、ともに 生き、ともに学び、ともに育つという、これは日本の障害のある子供たちの教育 の中で培われてきた言葉なんですけれども、この立場に立って、障害のある子供 たちだけではなくて、日本の子供たちの教育全体を考えてきました。そのことは 国際的には私はインクルーシブ教育というふうに表現されてきたのではないかと いうふうに考えております。この点は、十二日の本会議で神本議員が質問された ことに対しまして外務大臣が答弁をされた答えの中にも、国際的にはインクルー シブな教育だというお話がございました。それはお手元の資料に掲載しておりま したので、ごらんいただきたいと思います。  私はこの立場に立って今回の法改正についての意見を述べさせていただきます。  インクルーシブ教育といいますのは、御存じのように、一九九四年にサラマン カ、スペインの古い町でございますが、そこでユネスコとスペイン政府が開きま した特別なニーズ教育に関します世界会議で採択をされたものでございます。そ このポイントは、非常に簡潔に宣言にも書かれておりますけれども、その宣言を 実施するための行動計画、フレームワークというのがかなり長く書かれておりま して、各国政府にこういう点を踏まえてやれば実現するんだよというようなこと が具体的に書いてありますので、私はそれを見ましたときに、ああ、非常に優れ たものだなというふうに思いました。日本からも六名ほどの方が参加をされて採 択に、採決にかかわっていらっしゃいます。  そこの基本的な立場は、特別な教育ニーズのある子供たちも基本的には通常の、 レギュラーと言っていますが、インクルーシブな学校にアクセスすべきであると いうふうに宣言をしております。なぜそうなのかといいますと、できるだけ早い うちから障害のある子供とない子供が一緒に育ち合う、そういうことがその後の 共生社会、インクルーシブな社会を実現していく上に不可欠なんだと、そういう ことを提起したものでございます。  この提起につきまして、いろいろな評価があるかと思いますが、私が知ってお りますのはイギリスの、先ほど私が日本の、障害児を普通学校へ全国連絡会とい う会があることを申し上げましたけれども、それと大体同じようなことをやって おりますイギリスのCSIEという団体がございます。そこの団体が出しました パンフレットを訳したことがございます。「障害児とともに学ぶ」ということで ブックレットで出したんですが、お手元の資料に掲載をしておきましたけれども、 その団体もサラマンカ宣言を高く評価しておりまして、これは非常に、今後の障 害のある子供たちの教育の原則を規定したものだというふうに主張しています。  そのCSIEは、インクルーシブ教育につきましてはこういうふうに提起して います。障害や学習困難のある子供とない子供とがともに適切な支援網を得て通 常の幼稚園、学校、カレッジ、大学で学ぶこと、これがインクルーシブ教育であ ると言っております。このCSIEは、ホームページで世界の動向等についても 詳しく報告を、資料等を掲載しておりますが、その中の一つに、幾つかの中に提 言をしております。インクルージョンを求める十の理由、教育インクルージョン の定義、なぜインクルージョンが必要かということを定義しております。その資 料につきましては、お手元の資料の二枚目辺りに列挙しておりますので、ごらん をいただきたいと思います。  さて、国際的に目を向けますと、今、御存じのように国連では障害のある人の 権利に関する国際条約が議論をされておりまして、昨年の十月には議長草案が示 されております。その資料につきましては、DPIのホームページを参考にさし ていただきまして、二ページから三枚目に仮訳を掲載さしていただいております。  そこのところをかいつまんで申し上げますと、障害のある人たちの教育は一般 教育から、ジェネラルエデュケーションから排除されてはならないと、そのため にはインクルーシブ教育へのアクセスが必要なんだと。ただインクルーシブ教育 が実現するのではなくて、その子供たちのニーズに合った合理的な配慮が必要だ と。ニーズという言葉よりも、どうやら国連では合理的な配慮という言葉を使う ようになってきているようであります。そして、そういう配慮をした上で、やむ にやまれぬ理由があった場合に、どうしようもない場合には別の代替的な支援、 例えば一般教育とは違う教育の場も考えられるということですので、基本は一緒 の教育、その基本、一緒の教育をやるには適切な支援網と合理的な配慮が必要で あるというふうに提起をしているかと思います。  さて、今回の改正案の基になりました、先ほど大南先生もおっしゃいました中 央教育審議会の答申でありますが、私は評価している部分としていない、疑問に 思っている部分、二つがございました。  評価できる点でございますが、一つは、先ほど大南先生もおっしゃいましたよ うに、特殊教育、これは特別の場で行う教育であったものを特別支援教育へと転 換をするんだと、一人一人の子供たちのニーズに合った教育へと変えていくんだ というふうに言われております。この点は私は評価をしておきたいと思います。 ただ、もうちょっと具体的に中身を見ますと、うっと思うところがないわけでは ございません。その点についてはまた後で申し述べたいと思います。  それから、通常学級で今、文部科学省の調査でも分かるように、就学認定を受 けた子供たちだけではなくて、多くの障害のある子供たちが学んでおります。そ ういう子供たちを含めた特別なニーズのある子供たちに対する教育支援も視野に 入ってきているのかなと、その点は評価したいというふうに思いました。  それから、学籍を通常学級へ一本化し、そして特別支援教室という固定的な学 級ではない手だてを考える、この点も私は評価をしております。これも先ほど大 南先生がおっしゃったところでございます。  そして、特殊教育諸学校の総合化でございます。  しかし、疑問点ももちろんございます。特別支援教育は従来の特殊教育の継承、 発展というふうにおっしゃっているんですけれども、場からニーズへの転換とい うのは私は大きな転換だというふうに思います。そこだと、単なる継承と発展で いいのかなというのが一つの疑問でございます。  二つ目。通常学級で学ぶ子供への支援は視野に入ってまいりましたけれども、 どうも答申を見ますと具体性がちょっと足りない。特に、そういう子供たちを引 き受ける教職員への条件整備といったようなところにも踏み込みが足りないとい うことで疑問符を付けております。  また、特別支援学校での教員免許を全員持たせるということでございますが、 私は、従来、特殊教育諸学校は専門性をうたいながら半数以上が教員免許を持た なかったという歴史を考えますと、この点は非常に大きな進歩だと思いますけれ ども、特別支援教育は通常の学校や通常の学級での教育も視野に入ってくるわけ ですから、通常の学校や学級で教員をしている先生たちにも是非特別支援教育に ついての知識やスキルを身に付けなければいけないのではないかと。そういう意 味では、教員免許が特別学校だけになってしまったということはやっぱり問題が あるんではないか。中教審の答申の中でも、たしか特別支援教育免許状というの が議論された経緯があるかと思います。その点が突っ込みが足りなかったのでは ないかと考えております。  それから、就学指導につきましてですが、この点が一番今回の法改正の中では 焦点になってくると私は思っております。できるだけ多くの子供たちが通常の学 級で学ぶようなことに世界的に見ても日本はなっていると思いますが、ただしそ れは、就学を本当に希望したところに行けるようになっているかというとそうで はなくて、いろんな状況の中で保護者や当事者の意見が進まないままに措置が行 われていると。そういう中での制度的な問題が残されているというふうに思って おります。この点については、答申は今後検討するというふうに言っております ので、今後の検討に是非早急に手を付けていただきたいと思っております。  疑問点の続きは、もうお手元に私の方でこのパワーポイントにありますものは 打ち出しておりますので、ごらんいただきたいと思います。これは重複しており ますので省きます。  さて、今回の法改正でございますが、いただきました資料等を見ますと、どう も中教審答申よりは後退しているんではないかなというふうに思っております。 先ほど申しましたように、私は評価できる部分と疑問点があると申しましたけれ ども、評価していたところが消えてしまって、しかも疑問点は残ったままという ところが非常に後退しているのではないかというふうに考えております。  その後退点の第一点でありますが、先ほど大南先生も出されました資料では、 「LD・ADHD・高機能自閉症等」というふうに「等」がそこに付いていたん ですが、いただきました資料の、参議院調査室の資料の中では、十六ページにな るんですけれども、「LD児等、発達障害児への通級指導」と書いてありまして、 どうも通常学級にいる子供たちが発達障害のある子供たちだけを対象にしている ようなニュアンスになってしまっております。LDの子供たちに対する特別な配 慮というのはもちろん必要でございますが、私はそこから漏れてしまうような傾 向にある子供たちをどうしてくれるんだというところを是非強調したいと思いま す。中教審答申では発達障害以外の子供たちにも目配りがなされていたと思って いるんですが、それが後退して、発達障害児だけになってしまっているような印 象があります。そこを是非議論をしていただきたいと思っております。  二点目ですが、やはり特別支援教室であったのが特別支援学級へというふうに 固定になったことでございます。これは恐らく財政的な問題を考えてということ だと思いますけれども、現在も通級指導等では加配等でやっていらっしゃるわけ ですから、その点での十全な拡充があれば固定的な学級にする必要はなかったの ではないかと思っております。この点は、日本特殊教育学会もかつて、学籍を一 本化して、そして必要に応じて必要な手だてを受けられるような教室の方が望ま しいという提言をされていたかと思います。中教審でもその点での議論があった のに、そこが踏み込めなかったのは残念でなりません。  それから、そういうものを踏まえまして、今後の審議への注文でございます。  一つは、通常学級で学んでおります認定就学者を含む身体障害、知的障害のあ る子供のニーズに応じて必要な学習環境、支援、これができるように是非してい ただきたいと思います。現在は盲・聾・養護学校等だけの就学奨励しかございま せんが、そういう就学奨励の在り方もこの際見直していただきたいと思います。  二点目ですが、就学措置に関しまして、この間もずっと学校保健法や学校教育 法施行令が保護者や当人たちの意思を無視して就学を措置するための制度として 機能してきた経緯がございますので、この点も是非具体的に検討していただきた いと思います。  三点目ですが、特別支援学校が新たに地域の支援センターになるという役割を 担っておりますが、その条文に関しまして見ますと、小学校などの要請に応じて 教育に関し必要な援助又は支援となっておりますが、これは学校の要請とは書い てありますけれども、当人や保護者たちが本当に望んでそういう支援を必要とす るかどうかというのは、これは正に当事者性の問題であります。そこのところ、 是非、当事者性が通るような形での議論をしていただきたいと思います。  四点目は、もう先ほど申し上げましたように、本来であればすべての教員が障 害のある子供たちの教育について学ぶべきであります。今後、是非、教育職員免 許法等の改正に関しましても、すべての教員が学べるような内容にしていただき たいと思っております。  五番目でございますが、先ほど紹介いたしましたように、障害者の権利条約が 審議をされております。審議をされた暁には恐らく日本では批准という状況にな っています。批准に際しまして、権利条約の方はインクルーシブ教育を原則とし て掲げているわけですから、当然国内法との整合性をどう付けるかということが 大きな課題になってまいります。そういう意味では、是非今後、必要に応じて法 を見直すというような、附則でありますとか附帯決議でありますとか、是非そう いう措置をとっていただかないと柔軟に対応できないのではないかというふうに 考えております。  参考までに、私が見てまいりましたイタリアの教育の例について幾つかの文献 をそこに挙げておきましたけれども、実際に資料に紹介さしていただきましたの は、特殊教育総合研究所の事例を、論文を資料に載せてございます。私とちょっ と意見の違うところがありますけれども、イタリアでは、通常学級に在籍し、必 要に応じてその子のニーズに合った手だてを特別の場でやっているというのが一 般的であるというふうに紹介をされております。  最後になりましたけれども、今回の法改正で、ちまたでは今回の特別支援教育 に関する法改正では、いわゆる発達障害と言われる子供たちだけが必要な手だて を受けられて、そうでない子供たちが通常学級で学んでいる場合には無視されて しまいそうな傾向があると心配をしている向きが多々ございますが、是非そうい うことがないようにしていただきたいというふうに思います。  私は今、特に障害のある子供たちの教育ということで話をしてまいりましたけ れども、実は障害がある子供とない子供が育つということは、障害のない子供た ちにとってもその人間性や人間的な関係性をはぐくむ上で必要不可欠なことであ ります。障害のある子供たちの教育の問題は実は障害のない子供たちの教育の問 題でもありますし、日本の教育の全体の問題であります。ひいては、それは、今 日本が目指しております共生社会の基礎をつくるものだというふうに考えており ますので、是非そういう観点で審議をしていただきたいと思います。  「参考までに その二」というのは、特に文部科学省が日本では多くの子供た ちが既にもう普通学校や普通学級で学んでいるんだよというふうによくおっしゃ るんですけれども、であれば、それを原則として認めて必要な手だてをするとい うふうに方向転換をしていただければいいのではないかと思っております。  最後は急ぎ足になりましたけれども、私の意見とさせていただきます。 ○委員長(中島啓雄君) ありがとうございました。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ □ 編集後記 ------------------------------------ 06:14 2006/04/28 □ ------------------------------------------------------------------------ 久方ぶりのすっきりした青空です。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ LDニュースの記載内容に関する質問には原則として回答いたしかねます ■ ■ 編集に際し正確を期していますが最終保証責任は免責とさせて頂きます ■ ■ LDニュースの記載内容を転載される場合には必ず下記までご連絡下さい ■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 親の会「けやき」連絡先 E-mail: keyaki@box.club.ne.jp [1999/03/12 から] ホームページ URL : http://www.ne.jp/asahi/hp/keyaki/ [1998/07/31 から] LD 関連の情報交換・意見交流・質問は下記の「LDフォーラム」をご利用下さい 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