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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ LD(学習障害)ニュース #528 2004/12/09 発行 登録(配信)読者数 3,406 ■ ■ LD = Learning Disabilities LD親の会「けやき」編集 1997/09/10創刊 ■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ 第161回国会 参議院 内閣委員会 第9号 議事録(抜粋) 1 2004/12/01 ■ □ 編集後記 ------------------------------------ 00:46 2004/12/09 □ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■□■□■ この LDニュース は「等幅」フォントでお読みください ■□■□■ ■ LDニュースへ講演会等のイベント情報の掲載を希望される方へ・・・ ■ ■ 詳細は下記サイトをご覧下さい。原稿は適宜編集する場合があります。 ■ ■□■□■ http://www.ne.jp/asahi/hp/keyaki/HTML/sample.html ■□■□■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ 第161回国会 参議院 内閣委員会 第9号 議事録(抜粋) 1 2004/12/01 ■ ------------------------------------------------------------------------ [転載もと] http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kaigirok/daily/select0101/161/16112010058009c.html −−−−−−−−−−−−−−−−−− -----------(前略)----------- ○委員長(高嶋良充君) 次に、発達障害者支援法案を議題といたします。  本案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。 ○神本美恵子君 民主党・新緑風会の神本美恵子でございます。発達障害者支援 法案につきまして御質問させていただきます。  この発達障害者支援法案というものが立法された。これは議員立法という形で、 超党派で議員の皆様方が、これまでの障害者関係の法律や施策の中で谷間に置か れてきていたいわゆる発達障害児・者に対する支援が必要だということで、御努 力をなされて作られた法律案であるということは承知しております。  実は、この内閣委員会で、さきの通常国会では障害者基本法の改正につきまし て審議をいたしました。それからまた、これまでの障害者施策全体の中でこの発 達障害者支援法案というものがどのように位置付くのか。私もこの改正障害者基 本法を議論する際に、やはり障害者に対する厳然としてある今の差別をなくして いくこと、あるいは障害の有無にかかわらず一人一人の人権が尊重されて、この 社会の中で自己実現をし、社会参画をし、幸せな人生を地域の中で生きることが できる、そのために障害者施策の基本として、基本法には何を盛り込むべきか、 何がどういう方向を目指すべきかというようなことを議論してまいりました。  国際的な流れも、社会の中で障害の有無にかかわらず構成員として自己実現を していくという、いわゆるインクルージョンという方向が示されておりますので、 そういった観点から、この発達障害者支援法案というものを読ませていただいた ときに幾つかの懸念事項を感じておりますので、この法案の成立を待ち望んでい らっしゃる方々が多くいらっしゃることも十分承知しながら、それを受けて立法 をされたという議員の皆様の御努力にも敬意を表しながら、あえて懸念事項を幾 つか申し上げ、御質問をさせていただきたいと思います。  実は、私も議員になる前、小学校の教員をしておりまして、その中でいわゆる 障害、様々な身体的な障害や知的障害、自閉症と言われるような子供さんたちも 一緒に学んできた経験があります。その中に、よく考えてみますと、ここで定義 されている発達障害と言われるような子供さんも、ああ、あの子がそうだったの かなと思うような子供さんもいらっしゃるんですけれども。  例えば、普通の通常学級の中でその子が奇声を上げるとか、机にじっと座って いないで授業中に動き回るとか、そういったときに、私も担任の一人として最初 は、この子に個別に付き添ってくれる先生がいたらどんなにいいだろうと、学級 全体を考えながら思ったことがあります。あるいは、授業参観のときにその子が 大きな声を出すと、保護者の中には、あんな子、何でこの学校に来ているの、あ んな子は障害児学校、特殊学校があるんだからそっちに行けばいいのにというよ うな声も幾つも聞こえてきました。  しかし、一緒に子供たちと、ほかの子供たちと一緒に生活する中で、だんだん 奇声の声が小さく、大きな声で叫声を上げるというような、そういう声が小さく なったり、それからほかの子たちがその子のことを理解して、一緒に遊んだり学 んだりできるようになってくるというようなことも経験しましたので、この発達 障害者支援法案というものが、これまで光が当てられなかった、谷間に置かれて いたという人たちへ光を当てる趣旨で作られたにせよ、そのことが、もしかした らこれまで障害、これまでの障害児と言われてきた人たちに当てられている差別 と同じようなことにならないかということを懸念しながらの御質問でございます。  ちょっと前置きが長くなりましたけれども、それで、この改正された障害者基 本法では、その一条に、障害者の自立及び社会参加の支援ということが明記され ております。また、第三条では基本理念として、何人も、障害者に対して、障害 を理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない ということが明記されてございます。この発達障害者支援法案でも、目的の中に、 自立及び社会参加に資するようというふうに明記をされております。  先ほど言いましたように、国際的な議論の方向性としても、障害をあるがまま に受け入れて、あるがままに受け入れて、その本人の自立とそれから社会参加を 阻む環境的な要因をこそ取り除いていくべきだというような方向に、環境的な阻 害要因を取り除くための支援サービスというような方向に行っていると思うんで すけれども、本法案における自立と社会参加、あるいは差別禁止、権利擁護とい ったこのことについて基本的にどのようにお考えかということをお尋ねしたいと 思います。 ○衆議院議員(山井和則君) 今の神本議員の質問にお答えをさせていただきま す。  今御指摘のように、本法案が障害者基本法の枠内に位置付けられているかどう かというのは非常にやっぱり重要なことだと思います、今までの障害者施策の積 み上げというのが非常に重要でありますから。その点で、この法律は障害者基本 法の枠内に位置付けられ、改正障害者基本法の趣旨はこの法律にも及ぶもので当 然あります。  改正障害者基本法を踏まえて、この法案の第一条で、発達障害者の自立及び社 会参加に資するよう支援を図ることとし、また第十二条で、発達障害のために差 別されること等権利利害を害されることがないようにするため、権利擁護のため に必要な支援を行うものと明確にしてあります。  この法律案の成立により、発達障害者の自立及び社会参加や、発達障害者が発 達障害を理由により差別を受けることの禁止、その権利擁護がより一層促進され ることを期待しております。  以上です。 ○神本美恵子君 ありがとうございました。  是非とも改正障害者基本法、これもまだまだ十分なものとは思えませんけれど も、その目指している方向性の中でこの支援法もあるんだということを確認いた だいたと思います。  次に、具体的に条文に沿っていきたいんですけれども、この発達障害の定義に ついて、第二条で、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習 障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害というふうに定めら れております。  これは厚労省にお伺いしたいんですけれども、発達障害というのが脳機能の障 害との関連で確かに医学的にそういう説明がなされる場合が多いことは承知して おりますけれども、これはあくまでまだ予測の段階であって、確定されたもので はないというふうに聞いております。そういった段階のものを、法律の中で発達 障害とは脳機能障害であるというふうに断定されているその、断定というか、こ こで定義付けようとしているその根拠は何なのかということを一点と、それから、 政令で定めるものをいうというふうになっております。この政令で定めるといっ た場合の基準は何なのか。それから、その定める場合、どのような手順でこの発 達障害であるというような対象が決定されるのかという点についてお伺いをしま す。 ○政府参考人(塩田幸雄君) 発達障害とは、必ずしも知的障害を伴わないわけ ですけれども、例えば他人との人間関係を築くのが困難であるなどの特徴を有す る障害とされておりまして、自閉症、アスペルガー症候群、学習障害、注意欠陥 多動性障害などがこれに当たると言われております。WHOの国際疾病分類、I CD10と申しますけれども、におきましても心理的発達の障害等に分類され、定 義がされているところでございます。  自閉症に関しまして、過去には母親の愛情不足が原因と主張されたこともあり ましたけれども、現在ではこれらはいずれも脳機能の何らかの障害に基づく発達 の障害と理解されております。現時点では原因を特定するには至っていませんけ れども、脳の画像解析あるいは脳内ホルモンとの関係などについて研究が進めら れていると理解しております。引き続き、厚生労働科学研究などにおきまして発 達障害の原因解明と治療法の開発について研究を進めてまいりたいと考えており ます。  今後、政令におきまして具体的な対象範囲の検討を行うに当たりましては、既 存の障害者福祉施策との関係あるいはこの法案の趣旨を踏まえまして、専門家を 始め関係者あるいは広く国民の声を伺いながら、パブリックコメントの聴取など も行いながら丁寧に対応してまいりたいと考えております。 ○神本美恵子君 ちょっと私、理解がよく、最初の方、その定義のところ、WH Oの定義、WHOがこの発達障害について定義をしているんでしょうか。もう一 度お願いします。 ○政府参考人(塩田幸雄君) WHOの国際疾病分類で詳細に疾病ごとに考え方 とか分類がされているということでございますが、これ自体が政令の根拠になる ものではございません。それも参考にしながら、この法案にありますように、先 ほど申し上げましたように、専門の先生とかいろんな方の御意見を聞きながら政 令は検討してまいりたいということでございます。 ○神本美恵子君 ですから、要するに脳機能障害であるというような定義はされ ていないんですよね。ですから、ですからというか、そういうまだ根拠が明らか に、原因が明らかになっていない、何を、どの範囲を発達障害というかというふ うなことが判断基準が明確になっていないものを法律で定義付けていいものかと いうことに対する疑問を呈しているわけです。  これは、もう私のところにもこれ是非通してほしいというファクス、メールと、 これは本当に今慌てて通すべきではないと、もっと慎重に考えてするべきだとい うようなファクスをたくさんいただいているんですけれども。そのいただいた中 で、科学的にきちんと定義付けられないものを発達障害というふうに、小さい段 階にあなたは発達障害ですというふうにレッテルを張られて、発達障害があるか らというふうに薬をたくさん投与されて、そのために自分を自殺に追い込んだり うつ状態になったりというような事例がありますというようなこととか、それか ら、以前アメリカで銃の乱射事件があって大きな社会問題になったその背後に、 この発達障害の早期発見、早期支援という名の下に薬漬けにされた子供たちだっ たというようなことも、これ事実かどうか知りませんが、そのいただいたファク スの中にあるんですね。  ですから、そういったことを考えますと、この二条で定義されているものが、 まだ予測の段階のものをこういうふうに定義して、そういった方向に行くんでは ないかという懸念を私はまだ抱いております。  それから、それで、厚労省の資料の中に小中学生の六%がこの発達障害の疑い といいますか、の子がいるというふうに調査室からいただいた資料の中にあった んですけれども、その六%というのはどういうふうな調査で出てきたものなのか 教えていただきたいと思います。 ○衆議院議員(福島豊君) 先生の御指摘について、立法者の立場からこれ是非 コメントをさしていただいた方がいいと思いますので、発言をお許しいただきた いと思います。  一つは、脳の障害であるということについて確立されていないのではないかと、 こういう御指摘であろうかというふうに思います。  自閉症にしましても注意欠陥多動性障害にしましても、現在の様々な精神医学 的な、また神経科学的な研究ではその機能の異常というものが指摘をされている、 それが私は共通の認識だろうというふうに思います。ただ、しかしながら、確定 をしていないというのは、その原因が一体どこにあるのかということについては それを確定するまでには至っていないけれども、ただ、画像で見れば、例えば脳 の様々な代謝の状態でありますとかそういうものに変化が見られる、これも一つ の所見でありますし、脳波の異常も往々にして合併することもあると、そしてま た様々な病理学的な診断におきましても、これもまた知見が様々なんであります けれども、いろいろなことが報告されております。ですから、研究者の共通する 認識は、何らかの機能的な障害がベースになってこういうことが起こってきてい るということではないかと思います。  ただ、問題は、その何らかの機能的障害というのが一体どこなのかということ についてはまだ諸説があって確定するに至っていないと。ですから、まあ推定さ れるという言い方になるわけでありますけれども、しかしこのことは、研究者の 間で大方のコンセンサスとして何らかの障害があると、機能的な障害があるとい うことを否定するものではないと私は理解しておりますし、そうした考え方に基 づいて本法案における提案をさしていただいたと、これがまず第一点でございま す。  そしてまた、こうしたことがレッテル張りになるのではないかという御指摘だ と思います。  これは大変大切なことでありまして、何のためにこの法案を提出したかという のは、こうした障害というものを早期に発見をして、そしてそれを支援をすると、 むしろその支援をするというところが大切なんであります。この子はかくかくし かじかの、例えばICD10の分類でいえばこういう疾病であると、こういう障害 であると、こういうことを決め付けるということが大切なのではなくて、むしろ それに対しての早期の支援をいかに図るのかと、ここのところに力点があるわけ であります。  ですから、先ほど薬漬けという話がありましたけれども、多分これはADHD に対してのアメリカでは非常に薬物療法というものが広く行われておりまして、 これに対しては賛否両論があるということも事実であります。日本では同じよう な状況にはなっていませんけれども、こうした診断でありますとか治療でありま すとか、こういうことについては当然、レッテル張りをしてはいけないのと同様 に、本人そしてまた保護者の方の意向というものを十分配慮しながらやっていか なければいけないということもこの法案の中には書き込ませていただいておりま して、要は、どのように早期から対応するのかということが大切だと、そういう 考え方に基づいて立法作業を行ったということであります。 ○政府参考人(山中伸一君) 先生から、子供たち、学校に学ぶ子供たちの六% 程度というその数字をどういう形で出てきたのかというお尋ねでございましたが、 平成十四年に文部科学省が調査を実施いたしまして、学習障害、注意欠陥多動性 障害、高機能自閉症等、通常の学校に在籍します特別な教育的な支援を必要とす る可能性のある子供たち、この全国的な状況を把握しようと、それで今後の支援 のための基礎資料としようということで実施したものでございます。  調査方法といたしましては、約四万人でございますけれども、小学校一年から 六年、中学校一年から三年、この児童生徒を対象にいたしまして、質問事項を提 示いたしまして、これに基づいて担任の教師と複数の教員の判断によって回答を していただいたというものでございます。  では、その質問項目でございますけれども、これにつきましては、学習障害あ るいは注意欠陥多動性障害等、研究者の間で信頼性の高いアメリカのチェックリ スト等、こういうものを基にいたしまして教育心理学あるいは児童精神医学等の 専門家の調査研究会で検討を加えまして、あるいは学習障害等の関係団体の代表 の方からも意見を伺った上でそういう質問項目を作成したというものでございま す。  また、調査基準につきましては、質問の試行によって信頼度を確認すると、あ るいは外国の調査で利用された基準というふうなものも参考にして設定したとこ ろでございます。そのような形で約四万人の子供たち、で、これはあくまでも担 任の教員の回答に基づくのでございまして、医師の判断、診断とか、そういうも のを経たものでございませんので、直ちに障害と判断することはできないと思い ますけれども、それによって六%程度の割合で通常学校に在籍しているというこ とが明らかになったということでございます。 ○神本美恵子君 今、最後におっしゃったそのことなんですよね。あくまで担任 がその質問項目で判断した数字ですので、この六%が独り歩きをすることを私は 非常に懸念をしておりますし、私は担任をしていたとさっき言いましたが、その 立場からすれば、そういうふうに思いたくはありませんけれども、この子は発達 障害なんだと、だから私が何かできる問題ではないというふうに、そういうこと にこの数字が使われていくのではないかという、そういったおそれが皆無ではな いということを申し上げておきたいと思います。  時間がもう本当にありませんので大急ぎでいきたいと思いますが、次に、やっ ぱり文部科学省に、この早期発見ということで、第五条二項に学校保健法におけ る健康診断という、多分就学時健診のことだと思いますが、この法律が成立する ことによってどのように変わるのか、もう簡潔にお願いします。 ○政府参考人(山中伸一君) 健康診断の件でございますけれども、現在、学校 保健法施行令等でその項目とか方法について書いてございますけれども、具体的 な、より具体的な留意点については健康診断マニュアルというふうなものも作り まして、そこで示してきたところでございます。  発達障害につきましては、現時点で判断基準が必ずしも確定しない、あるいは 診断のためにある程度の期間の観察が必要であるということもございますので、 現在の就学時の健康診断だけで十分に発見することについては困難な面があろう かというふうに思っております。  こういうことも踏まえまして、今後、発達障害の早期発見のために、保護者の 了解を得まして、就学前の子供の状態についての情報の提供を受けること、ある いは専門家の判断を必要に応じて求めるといったこと、そういうことをしますと ともに、専門家の御判断、御意見等も伺いながら、就学時の健康診断のマニュア ル等についても必要に応じた見直しというものもしていきたいと思っております。 ○神本美恵子君 今行われている就学時健康診断の場が、障害があるかないかと いうようなことで進路を決められてしまうというような強制力が非常に働いてい るということも含めて懸念しますので、次に立法者の方にお伺いしたいんですが、 この第五条四項で、児童及び保護者の意思を尊重するとともに、必要な配慮をし なければならないというふうにありますけれども、これは最大限尊重されるべき、 もうある意味で決定権は児童、保護者にあるというふうに受け止めていいのか。 また、五条三項の発達障害の疑いがある場合、継続的な相談や早期に医学的、心 理学的判定を受けるかどうかの判断も含めて、児童、保護者に決定権があるとい うふうに解釈してよろしいのでしょうか。 ○衆議院議員(山井和則君) 基本的にはそのとおりであります。  この発達障害児への発達支援を行うに当たっては、発達障害児の選別やレッテ ル張りにならないよう、児童及び保護者の意思が十分に尊重されねばならないの は言うまでもないことであります。このような趣旨を踏まえ本法案三条三項が規 定されており、また就学時の健康診断等においても、委員御指摘の第五条第四項 の規定により、児童及びその保護者の意思が最大限尊重されるものと考えており ます。さらに、継続的な相談や早期に医学的又は心理学的判断を受けるかどうか の判断についても、これも第五条四項の規定により、児童及び保護者の意思が最 大限尊重されるものと考えております。 ○神本美恵子君 ありがとうございました。  次に、第七条と八条に関連してですけれども、七条では保育の実施ということ で、これについては他の児童と共に生活することを通じて図られるようというふ うに、ともに生活することによって保育を実施するというふうに書かれておりま す。ところが、八条の教育のところでは、その障害の状態に応じ、十分な教育を 受けられるようにするためということで、ちょっと保育と表現が違っております けれども、これはなぜなのか。これは文科省、文科省はいいです。じゃ、立法者 の方。 ○衆議院議員(山井和則君) 正に、ここは議員立法の過程で修正をしたところ でありまして、委員御指摘のように、第八条に教育を受ける者が発達障害を有す るかどうかにかかわらず共に学ぶことに配慮しつつという文言を当初は入れてい たわけでありまして、これは当然、発達障害の有無にかかわらず、一緒に学ぶこ とが望ましいという判断によったわけであります。  しかし、その後、各党の協議の中で、この文言がかえって発達障害を有する者 とそれ以外の者を分けて教育されているという現状があるということを逆に想起 させるんではないかということでありまして、ほとんどの教育の場においてはと もに学んでいるという、通常の学級で、発達障害の児童もほとんどが通常の学級 で学んでいるという現状を踏まえて、この文言を削除すべきという合意がなされ ました。誤解を避けるためであり、発達障害児が一緒に教育を受けることは当た り前のことであるというふうに当然考えております。 ○神本美恵子君 削除された経緯は分かったんですけれども、七条、八条と続け て読んでいくと、学校に上がったら、上がるというか、保育から教育になったら これはともに学ぶことは前提じゃないのだなと普通なら考えてしまうんです。な ぜそう考えるかというと、今の障害児教育、日本の施策が分離、別学ということ がもう大前提になっていますので、どうしてもそういうふうに考えてしまうとこ ろの懸念を持ちます。  障害者基本法の教育の部分でも、それから附帯決議でも繰り返し、分け隔てら れることなく、これからはともに学ぶ教育の方向を目指すんだということが書か れておりますし、サラマンカ宣言のインクルーシブ教育もそうですし、それから 今議論されております障害者権利条約もそういった方向で、選択権は親にあると、 ニーズは親が判断して選択するんだというようなことも書かれております、議論 されておりますし、それから、OECDの学力到達度調査、PISA調査でも、 この障害児教育は統合教育をやっているところの方が学力到達度も上位にあると いうような結果が出ております。  そういったことから考えても、是非、私はその発達障害者の、この法案は対象 はそうですけれども、これまでの障害児と言われる子供たちもそういった方向に 教育が向けられていくべきだというふうに思って、この後、たくさんそのことを 言おうと思ったんですけれども、文科省に最後に、今文科省は特別支援教育とい うことでガイドライン、この小中学校におけるLD、ADHD、高機能自閉症の 児童生徒への教育支援体制の整備のためのガイドラインというものを作られてお りますが、これはいわゆるLD、ADHDの子供たちのみが対象にされておりま す。ですから、統合教育的な特別支援教育というものの中身が、従来の障害を持 っている子供たちは対象外にされるのではないかというふうな懸念も障害児の親 御さんたちからたくさん届いているんですけれども、そこはどういうふうな関係 になるんでしょうか。 ○政府参考人(山中伸一君) 先生御指摘のガイドラインでございますけれども、 これは発達障害につきましては、先生も御指摘のように、従来、学校教育におい ても障害としてとらえられていなかった学習障害等の、学習障害につきまして、 これを障害として認めていって、学校教育の中でも把握していって、学校の教育 あるいは教育関係者もそういう学習障害ということを持つ子供たちにしっかりと した支援体制を整備していこうということを考えたところでございます。  こういう課題、文部省で学習障害についての検討を始めましたのは平成四年で もございましたし、緊急にかつ重要に取り組むべき課題ということから、学習障 害につきましてのガイドラインを今年の一月に作成いたしまして、そして各学校 あるいは教育委員会あるいは関係機関とも連携しながらしっかりとした体制を組 んで、連携して取り組んでいこうということを示したものでございます。  一方、文部科学省におきましては、学習障害の児童を含めまして、障害のある 児童生徒一人一人の教育ニーズに対して適切な教育を行っていこうと、そういう 考え方で特別支援教育というものを推進しようということを考えておりまして、 障害のある子供たちに対する支援体制のモデル事業というようなものも実施して いるというところでございます。  この中では、各学校の校内委員会の設置、あるいは学校の中での特別支援教育 のコーディネーターの指名、あるいは一人一人の子供たちの障害に応じた指導を 行うための個別の教育支援計画といったもの、そういうものを策定いたしまして、 小中学校全体、学校教育全体の中で障害のある子供たちに対しての支援をしてい こうということは進めているところでございます。 ○神本美恵子君 冒頭、立法者の方も、これは改正障害者基本法の枠内にあるも のだ、その趣旨の下で作られるものだということをおっしゃいました。そのとき の附帯決議で、この教育の部分については、分け隔てられることなくということ と、それから、共に育ち学ぶ教育を受けることのできる環境整備を行うこととい うのを付けております。  文部科学省は、是非とも、この発達障害者の、障害児の子供たちやあるいは従 来の障害児の子供たちがともに学ぶことができる環境整備、それは冒頭私も経験 から申し上げましたけれども、やはり学校の中で個別のニーズにこたえられるよ うな人的配置がどうしても必要です、そのことの御努力を是非お願いしまして、 質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。 ○岡崎トミ子君 続いて、民主党・新緑風会の岡崎トミ子でございます。よろし くお願いいたします。  これまで制度の谷間にあった子供たちあるいは保護者、こうした人たちに対し て行き届いた配慮がなされるようになる、そのことを強く望みます。そして、わ がままだと決め付けられてしまったために適切な対応を受けることができなかっ たというような状況が続いてまいりました。育児が間違っているからだと言われ て、決め付けられた保護者の皆さんたちに対しても理解と支援の輪が広がってい くということを私は強く希望しております。  しかし、今も指摘されましたように、様々な心配される点が指摘されておりま して、特に運用には最大限の注意を払っていかなければならないと思います。殊 に、今教師としての経験から神本先生がおっしゃっておりましたけれども、障害 があるという理由でその子供たちだけに特別支援を行うという、そういうことに なりますと、かえって学級の中で、あるいは学校全体の支援のバランスをなくし てしまう、崩してしまうというようなことを本の中でも示しているものがござい ました。  同じように教師にかかわりを持ちたいという子供たちが一杯いるわけですから、 教師がその子供たちだけにかかわるということに、対応の違いに不公平感を持つ という子供も出てくると。そのときに、子供たち自身と、それから支援を必要と している子供たち、それから学校全体の在り方というのは、これはもう車の両輪 だと、そうすると、子供たちが見違えるように生き生きとなったのだというよう な、今文科省がおっしゃったモデルケースでやっているところなんでしょうか、 先生たちが一杯悩んで頑張っておられる結果としてそのようなことに書かれてあ るものがございました。  そこで、提案者に確認をしておきたいと思いますけれども、児童の権利条約の 精神に立って、児童の権利の最善の利益を図らなければならないというこの精神 ですね、それは子供たち自身にとっての最善であるんだということについて、ま ずこの必要性についてお伺いしておきたいと思います。 ○衆議院議員(宇佐美登君) 岡崎委員からの御質問にお答えをさしていただき たいと思います。  児童の権利条約、いわゆる子どもの権利条約に関してですけれども、私も、九 三年、議員になったときに最初にこの議論、児童にするのか子どもにするのかで 大分もめた大切な条約でありますのでよく内容も把握さしていただいております が、いわゆる子どもの権利条約の第三条第一項で、子どもの最善の利益の第一義 的な考慮というものがうたわれているわけでございますから、今回のこの法律に おいても、運用に当たって、発達障害児、発達障害者本人の意見を十分に尊重し て、本人の利益に最もかなう支援が行われるべきものであると考えておりますし、 本法案の発達障害者は、発達障害児を含むものであると、第二条第二項に書いて あるとおりでございますので、発達障害児の支援に当たっては本人の意思表示が 当然尊重されるべきだと考えております。 ○岡崎トミ子君 続いて定義でありますけれども、この発達支援は、発達障害者 に対して、その心理機能の適正な発達を支援して、円滑な社会生活を促進するた めに行う発達障害の特性に対応した医療的、福祉的、教育的援助を行うと、この ようになっているんですけれども、どのような支援が適切な支援であるのか、個 々のケースで柔軟に判断される必要があると思いますが、いかがでしょうか。ど のような援助をどのような仕方で行うのかということの判断については、今おっ しゃってくださいましたけれども、本人そして保護者、そうした意思を最優先す べきだと考えますが、いかがでしょうか。 ○衆議院議員(宇佐美登君) 岡崎議員の御指摘のとおりでありまして、まず、 最後の、後の方の質問からお答えさしていただければ、本法の第三条第三項に、 正に発達支援の内容及び方法についての判断に際しては、発達障害者本人及びそ の保護者の意思ができる限り尊重されなければならないと明示をされているとこ ろであります。  同時に、発達支援が行われるに当たって、発達障害者の乳幼児期から成人期ま での各ライフステージ、それぞれの時期において生活全般にわたる支援が不可欠 であり、その支援については、発達障害を持つ方々のそれぞれの障害の特性に応 じて、その一人一人の本当に特徴、特性、そういったものに合わせて行われるこ とが重要であると考えています。 ○岡崎トミ子君 本人が訓練して変わるというようなことが強制されない、周り が、社会全体が、自分たちが変わっていってきちんと支援していく、適切な情報 を提供して、適切なアドバイスを受けて、そして周り自身が、やはりその本人自 身の希望が達成されるような、そういうような環境を作っていかなきゃいけない というふうに思います。  早期発見と早期支援ということについて、神本さんも触れておりましたけれど も、診断を契機とする治療の強制、あるいは不合理な差別の温床となる可能性が 心配だということ、私のところにもたくさんのメールが届いておりました。  そこでやはり、改めてなんですけれども、投薬の強制あるいは副作用の心配と いうようなことがありますので、こういった面で強制されないということに関し てお聞きしておきたいと思います。一方では、早期に診断されて早期に治療に当 たることができて、家族が結束して本当に助かったと、そういうようなメールも 届いておりますけれども、まず心配な面に関してお聞きしておきたいと思います、 厚生労働省。 ○政府参考人(塩田幸雄君) 早期発見、早期支援が治療の強制とか不合理な差 別につながってはならないというのは御指摘のとおりだと思います。そうした観 点から、法案の中ででも、児童や保護者の意思を尊重するという趣旨が何度も規 定されていると理解しております。  したがいまして、発達障害の早期の医学判定などに当たりましては、障害のレ ッテルを張ることではなくてその後の適切な支援につなげるためのものであるこ とでありますとか、強制されるものではないことなど、この法案ができますと、 法案の内容について各都道府県などに通知を出すことになりますけれども、その 趣旨をきちんと通知の中で明らかにし、法案の趣旨が現場で生かされるような運 営がなされるよう、今後努力してまいりたいと思います。 ○岡崎トミ子君 そこでなんですけれども、今その発達障害をきちんと診断して くれるというお医者さんの数は全国で二百人というふうに聞いているんですけれ ども、子供十万人当たりの児童精神科医、その数は、九六年の調査ですけれども、 スウェーデンでは十二・五人、スイスでは十二人に対して日本は〇・三五人しか いないという、こういう状況なんですね。  現在の制度では、子供にかかわる医療というのはすべて高収入につながってい かないということのために、小児科自体が大変少ない状況にあるし、減りつつあ るというふうにも聞いていて、大変厳しい状況の中で働かれているわけなんです けれども、けがとか病気とかレントゲンとか、そういう場合の検査とか薬の処方 は割と短時間で病院の利益に結び付けることができるんですが、この発達障害の 子供たちの診察に当たっては、お医者さんのほかに臨床心理士が必要だったり、 多くのスタッフが必要になってくる。  そういう中で、お医者さんだけではない判断というのがすごく大事なんですが、 そこの充実がまちまちだし、障害でも、その人、子供、それぞれによって千差万 別なために、今度は家族に対するカウンセリングもきちんとしていかなきゃいけ ないし、慎重な診療が必要だし、民間の病院の中では現在の保険制度では大変厳 しい状況だなというふうに思っているんですけれども、こういう状況で、児童精 神科として自分はやっていきたいという、そういう学生が、専門医ですか、そう いう人たちが増えるということがあり得るのかなというふうに思いますし、発達 障害者、特に子供の発達障害に対する具体的な施策の検討ということについては どのようなことをお考えになっていらっしゃるのか、伺っておきたいと思います。 ○政府参考人(塩田幸雄君) 御指摘ありましたように、我が国では、発達障害 など、子供あるいはその親の心の問題に対応できる専門的な知識あるいは技能を 持つ児童精神科医、あるいは小児科医が極めて少ない現状にあるのはおっしゃる とおりでございまして、そういった専門の人材の確保を図るということが重要で あると考えております。この法案がその一つの契機になればと期待し、またその 法案の趣旨を生かせるよう、厚生労働省としても努力してまいりたいと思ってお ります。  そうした観点から、本年度内に検討会を設けまして、小児科及び児童精神科の 領域における専門医の確保対策について具体的な検討を行いたいと思っておりま す。また、平成十七年度の厚生労働科学研究におきまして、子供の心の問題に専 門的に対応できる医師などの確保や育成に関する研究の実施、養成プログラムの 開発などを行うことを予定しているところでございます。また、国立精神・神経 センターなどにおきまして必要な専門家スタッフの研修にも努めてまいりたいと 思っております。  それから、診療報酬などでの配慮も今後必要だろうと思いますが、現行の保険 点数におきましては、自閉症等の精神疾患を有する児童に対する計画的な治療の 提供、外来診療におけるカウンセリングの評価が行われているところであります けれども、この法案の成立の趣旨も受けまして、今後、発達障害等に対する診療 報酬につきましても、中医協におきます議論を踏まえつつ、適切な評価に努めて まいりたいと考えております。  今後、各般の対策を充実してまいりたいと考えております。 ○岡崎トミ子君 その際に、仕組みの透明化というのは大事だと思います。専門 家医だけの判断ではなくて、親も納得できるということがすごく大事だと思いま すし、その専門家の判断が早期に行われた場合には、やはり説明責任が後からき っちりできるということをやっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。 ○政府参考人(塩田幸雄君) 発達障害の診断は医療の観点のみだけでなくて、 いろんな専門家の御意見を聞きながら判定すべきものだと考えておりますので、 御趣旨のとおり運用してまいりたいと思います。 ○岡崎トミ子君 次に、提案者に発達障害者支援センターについて伺いたいと思 いますが、これを新たな天下り先にしないということは十分押さえていただきた いと思います。  この機能を果たすものとして私は期待をしていきたいとは思うんですけれども、 これ年間二千五百万円の低予算ですよね。そして、設置箇所も不十分だと言われ ている中です。ですから、今後専門性の高い機関として役割を果たせるようにし ていく必要があると思いますけれども、多様な発達障害児、発達障害者、そして 保護者、本人の気持ち、ニーズに適応した運営がこの中では必要だというふうに 思います。つまり、センターの独走にならないということは大事だと思っており ますが、いかがでしょうか。 ○衆議院議員(宇佐美登君) 平成十四年度からこの自閉症・発達障害支援セン ターの整備が進んでいるわけでございますけれども、現在十八都道府県十九か所、 福岡県だけ今二か所あるんですけれども、この現状を考えると、できる限り早期 に四十七都道府県すべて、残り、ですから二十九の県があるわけでございますけ れども、まずそういったところに配置していくことが重要であると思いますし、 二千五百万円の予算については、参議院、衆議院、党派をすべて超えて、政府に 対してこれを働き掛けていくしかないわけですので、是非一緒にやっていきたい ですし、提案者としては望むところでございます。  また、自閉症・発達障害支援センターについては、相談支援、療育支援、就労 支援を担当している職員が配置されていますが、今後は、委員御指摘のように、 職員の専門性が確保されるような研修などにより、その質の向上を図っていくべ きだと考えています。  最後に、独走にならないようにというのは正にそのとおりであります。今後も 発達障害者支援センターが発達障害児や保護者等のニーズにきっちりと対応して いく、即した形で支援を行っていくよう、政府に対して、これもまた提案者ばか りではなく、皆様方と一緒になって働き掛けていきたいと思っております。  最後に、天下りの問題を御指摘されていましたけれども、ここは本当に大変重 要なところでございまして、専門性は有するけれども、といって簡単に天下りを 認めていくべきものではございませんので、こういった行革の観点も必要であり ますけれども、同時にしっかりとした、委員御指摘の親御さんたち、そして御本 人たちのニーズに即したセンターの運営というものを働き掛けていきたいと思っ ています。 ○岡崎トミ子君 多様な生き方を助けるもの、そして権利擁護のために先頭に立 って闘ってくれるところ、それが私は発達障害者支援センターでなければならな いと思っておりますので、その点よろしくお願いしたいと思います。  ここでの従来の自閉症・発達支援センターと同様に、知的に遅れのある自閉症 児、自閉症者も対象となるということでよろしいでしょうか。この法案での支援 の対象には知的に遅れのある自閉症児、自閉症者を含む、そういう考えでよろし いか、確認しておきたいと思います。厚生労働省です、はい。 ○政府参考人(塩田幸雄君) 知的障害の有無にかかわらず対象になると理解し ております。 ○岡崎トミ子君 続いて、このむき出しの強制でなくても、十分な情報を提供し ないで本人や保護者を不安に陥れるというようなことがあってはなりませんし、 他の選択肢を選ぶことを応援するその努力がなかったために、実質的には有無を 言わされなかったと、進路を決められてしまったと本人や保護者が感じることが ないようにすべきだと思いますけれども、厚生労働省、いかがでしょうか。 ○政府参考人(塩田幸雄君) 発達障害者にかかわらず、障害者福祉におきまし ては自己決定とか自己選択というのがキーワードであります。発達障害者に対す る支援についても十分な情報提供をし、当事者の方が選択できるように、発達障 害支援センターあるいは様々な福祉施策を通じまして支援を強化していきたいと 思っております。 ○岡崎トミ子君 この発達障害者の自立及び社会参加に資するために支援を図っ ていくんだと、発達障害者の福祉の増進に寄与することがこの法案の目的だとい うふうにされているわけなんですが、この発達障害者の教育と訓練、そして仕事 の面ですね、就労に向けた情報提供を行うだけではなくて、発達障害者を社会の 一員として受け入れることができるように、社会そのものを変えていかなければ ならないと思います。  そこで、社会全体がその理解を深めていく、差別をなくすために、まず学校、 職場、地域社会の中で、その中でのその変化を促していって、そしてこういう子 供たちが参加できるような条件整備が必要だというふうに思いますけれども、こ れは発達障害者にかかわらず、一般の人たちに対する、障害者一般に対する施策 としても大変重要な点の一つだというふうに思っております。  我が子のことが理解できないということで大変苦労されて苦しんで、周囲の人 から発達障害を理解してもらえないという二つの苦しみがある中で、本人も家族 も苦しんできたということがありますけれども、そのために、行き着くところ、 大変残念なことには虐待に遭ってしまう、あるいは無理心中にもつながっている というような現状もありますので、保護者を孤立させないという意味でも、社会 全体に対する啓発というのが大変重要になってくると思います。  この点について、どうでしょうか、本人の訓練ではない、周りを変えていく、 社会全体を変えていく、そのための啓発が重要だという点についてお伺いしてお きたいと思います。 ○政府参考人(塩田幸雄君) 発達障害の方々は地域の理解があれば普通に地域 で暮らせる方々でございます。そういう意味で、地域のいろいろな方々が発達障 害についての御理解をしていただくことが重要だと思います。例えば、商店の方 々、駅員の方々、警察の方々、いろんな町のいろんな方々に正しい理解をしても らうことが重要であると思っております。  これまでも厚生労働科学研究におきまして、こうした発達障害理解のためのパ ンフレットを全国の警察などに配付するとともに、全国数か所で警察官への研修 など、いろんな研修をやってきたところでございますが、今回新しい発達障害者 支援の法律ができることでありますので、こうしたパンフレットも最も新しい考 え方で見直したいと思いますし、警察官などへの研修などについても拡大して、 いろんな形で理解が深まるように努力してまいりたいと考えております。 ○岡崎トミ子君 その理解という面で、子育ての面での理解を深めていくために、 一般的な子育て支援の中で支援が可能になるように、その担当者に対して発達障 害の理解と支援プログラムについての研修が必要だと思いますが、いかがですか。 ○政府参考人(塩田幸雄君) 発達障害児の方々には専門的な支援が必要という 面もありますけれども、いわゆる育てにくい子供という側面も有しておられます ので、普通の子育ての中でも対応していくことが非常に重要だと思います。そう いう意味で、一般の子育ての支援をされる担当の方々に正しい理解をしていただ くことが非常に重要でございます。  これまでも保健師等に対する手引書の配付などを行ってまいりましたが、平成 十七年度の概算要求で、こうした法案の議論がされていることも踏まえまして、 都道府県、政令市の担当者、保健師、保育士などに対する指導者の研修、あるい は実務の研修といった内容の概算要求を盛り込んでおりまして、その予算の確保 を図りましてそうした研修活動の充実に努めてまいりたいと考えております。 ○岡崎トミ子君 次に、就労の面での理解でありますけれども、大変発達障害者 の皆さんたちはその困難に直面しているわけなんですが、殊にハローワークにま ず行きましたときに、職員の方がアスペルガー症候群ですとか自閉症の方ですと か知識がないわけなんですね。そこで努力が足りないというふうに職員にしから れてしまう、傷付いて働く意欲がなくなってしまうというのが度々あったという ことですから、そうした理解を深めていくためには職員の研修が早急に必要だと いうふうに思いますし、一人一人就労のそのあっせんの仕方もあるように思いま すけれども、これはどんなことを考えていらっしゃいますか。 ○政府参考人(金子順一君) お答え申し上げます。  ハローワークにおきまして発達障害者の就労支援をこれから進めていく上にお きましては、御指摘いただきましたように、発達障害者に関する正しい理解とい いますか、それから就労支援のための具体的なノウハウ、こういったものをやは りハローワークの担当の人を含め職員に十分周知をして、正しい理解を持って対 応してもらうことがわけても重要であろうと思っております。  このため、本法案の成立後におきましては、法の趣旨あるいは発達障害に対す る正しい理解といったようなことにつきまして全国のハローワークに周知するた め必要な通達を発出いたしますとか、近々に全国会議の場もございます、こうし たところを活用したり、あるいは職業紹介を担当いたします専門官の研修もござ いますので、この場でよく研修をいたしまして職員の理解を深めてまいりたいと、 このように考えております。 ○岡崎トミ子君 よろしくお願いいたします。  そして、この雇用支援を実体法に反映させるためには障害者雇用促進法の改正 が必要になっていくだろうと思いますけれども、現在の法定雇用率、これまだま だ下回った状況でありますから、このことを改めていかなければなりませんし、 現在確保されているその仕事というのが、例えば身体障害者あるいは知的障害者、 こういう人たちが保護されるところで、法定雇用率というところで当てはまる人 たちなわけなんですが、余り小さなパイの中で発達障害者が入って分け合う、奪 い合うというようなことになってはなりません。  仕事の確保ということを今お願いをしているわけなんですけれども、その確保 というのが今までのレベルよりもやはりアップしていくという、確保されればい いということで割と低めの水準で確保されたのではいけませんので、そこが十分 に配慮されているということで是非お願いをしたいと思います。  雇用については十分配慮されるという点で伺いたいと思います。 ○衆議院議員(宇佐美登君) 今日もここに各党の提案者が並んでいるわけでご ざいますけれども、ここは一致しているところでもちろんございまして、今ある、 障害者で雇用されている方で、この雇用率も含めて、発達障害者の方が入ってき て、その少ないパイ、現状は今少ないパイを、それを分け合うということではな くて、発達障害者の方がプラスしてより働く環境、働く場が与えられるようにあ るべきだということは、皆さん、本当にこの提案者の皆さんが一致しているとこ ろであり、その思いを込めて作られた法案でございますので、政府に対して我々 も一緒になって働き掛けていきたいと思っています。 ○岡崎トミ子君 よろしくお願いいたします。  警察に伺っておきたいと思いますが、犯罪等による発達障害者の被害を防止す るためとあります。発達障害児、発達障害者は様々な事件あるいは事故に巻き込 まれやすく、また巻き込まれた場合にちゃんと対応してもらえなかった。それは、 なかなか自分のことを説明することができない、あるいはコミュニケーションを 取りにくいという、そういう状況にあるわけですから、適切に対応するために支 援が必要だというふうに思います。  今もちょっと話はありましたけれども、警察とか消防、公共交通機関、消費生 活相談機関、地域の商店、コンビニ、福祉専門家ではないいろんな機関の人たち に対してこれを理解してもらうことが必要だと思いますけれども、警察がまず一 番、その点、駆け込んでいくところかな、対応するところかなというふうに思い ますので、どのようなことを考えていらっしゃるか、お教えいただきたいと思い ます。 ○政府参考人(安藤隆春君) お答えいたします。  警察では、現在、障害者の方々に対しまして保護の立場からの適切な警察活動 を徹底するために、警察学校における教育や警察署などにおきます職場研修を通 じまして、部外の専門家の招聘とか、あるいは知的障害者施設における介助実習、 さらには、先ほどもお話がありました警察官向けハンドブックの活用などによる 教育を推進しているところであります。  警察といたしましては、発達障害者支援の重要性を認識し、また今回の法制定 の趣旨も踏まえまして、今後とも、発達障害者の被害防止に努めますとともに、 事件、事故に巻き込まれた場合に適切に対応できますように、発達障害者の特性 を個々具体的に理解させる教育の一層の推進に努めてまいる所存でございます。 ○岡崎トミ子君 済みません、具体的に交番、警察、いろいろ様々にありますけ れども、その理解を深めるために、先日はちょっとパンフを見せていただきまし たけれども、大体どのぐらいの箇所に徹底してそういうものについて配られ、ま た言葉としても研修されるのかということだけを確認しておきたいと思いますが。 ○政府参考人(安藤隆春君) 平成十三年の十一月でございますが、全国の都道 府県警察本部の各課、警察署各課ですね、あるいは各交番、駐在所に対しまして 合わせまして二万一千二百部を配付しております。これを配付するだけでなくて、 先ほども申しましたように職場の研修を通じまして具体的にこういう御指摘のよ うなパンフで、障害者の方々が来られた場合にやはりコミュニケーション不足と かいろいろありますので、そういう場合に的確に対応するように、細かくですね、 指導するように努力しておりますが、こういう法制定がございますので更に努力 をしてまいりたいと思っております。 ○岡崎トミ子君 続いて、その発達障害者のライフコースを通じての支援なんで すが、もう一時期ではなくて、保育園、小学校、養護学校、就労と、こういうふ うに今までは環境が変わるたびにゼロから支援体制作りというのは全部親が頑張 ってやってきたわけなんですが、一生涯を通じた支援ということを考えていくわ けですから、これは医療、福祉、教育、そして労働、垣根を越えた支援体制が必 要となってくるんですけれども、一体この連携をしていくのは、一体だれがコー ディネートをするのか、それから関係機関をどういうふうにつないでいく役割を 関係者が作っていくのか、この点、厚生労働省に伺います。 ○政府参考人(塩田幸雄君) 発達障害者の支援に当たりましては、御指摘あり ましたように、医療、福祉、教育、労働などの垣根を越えた支援体制が必要だろ うと思いますし、かつライフサイクルを通じた一貫した支援が必要だろうと思い ます。  こうしたことについては優れた実践例がありまして、例えば滋賀県の甲西町に おきましては、教員の経験のある方が福祉課の職員も兼ねてコーディネーターの 仕事をやられておりますし、また横浜市の自閉症・発達障害支援センターの例で は、就労支援の経験のある職員が各機関を調整する役割を果たしておられます。  地域によっていろんな方がコーディネーターの役割を果たされると思いますけ れども、来年度の概算要求で文科省と厚労省が一緒になって地域でモデル事業を 行うことになっておりまして、こうした事業を通じましていろんなタイプのコー ディネーターの活動というのが広がっていくことが期待できると考えております。 ○岡崎トミ子君 一言だけ。  これから運用されるに当たっては、絶えず見直していく、謙虚な形で見直して いくということが大変大事だと思いますけれども、そのチェック機能というのを 是非よろしくお願いをしたいと思います。  ありがとうございました。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ □ 編集後記 ------------------------------------ 00:46 2004/12/09 □ ------------------------------------------------------------------------ 衆議院 内閣委員会 発達障害者支援法案 関連質疑 2004年11月24日 (衆議院ビデオライブラリ) 参議院 内閣委員会 発達障害者支援法案 同付帯決議案 審議 2004年12月01日 (参議院ビデオライブラリ) いずれも下記でご覧になれます。 http://www.ne.jp/asahi/hp/keyaki/2004/0082.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ LDニュースの記載内容に関する質問には原則として回答いたしかねます ■ ■ LDニュースの記載内容を転載される場合には必ず下記までご連絡下さい ■ ■ 編集に際し正確を期していますが最終保証責任は免責とさせて頂きます ■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 親の会「けやき」連絡先 E-mail: keyaki@box.club.ne.jp [1999.03.12 から] ホームページ URL : http://www.ne.jp/asahi/hp/keyaki/ [1998.07.31 から] LD 関連の情報交換・意見交流・質問は下記の「LDフォーラム」をご利用下さい LD-FRM URL: http://www.ne.jp/asahi/hp/keyaki/LD-FRM/ [2000.08.17 から] ★ 挿入されている広告内容や広告主と親の会「けやき」は一切無関係です ★ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ LDニュースは「まぐまぐ」 http://www.mag2.com/ を利用して発行してます

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