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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ LD(学習障害)ニュース #432 2003/03/29 発行 登録(配信)読者数 3,466 ■ ■ LD = Learning Disabilities LD親の会「けやき」編集 1997/09/10創刊 ■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ 【文部科学省】 特別支援教育の在り方に関する調査研究協力者会議  ■ ■  2003/03/28 答申 今後の特別支援教育の在り方について(最終報告) ■ ■                                  ■ ■ 第4章 特別支援教育を推進する上での小・中学校の在り方について  ■ ■ 第5章 特別支援教育体制の専門性の強化              ■ ■ 参考資料                             ■ ■ 1. 「個別の教育支援計画」について                ■ ■ 2. 「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒  ■ ■    に関する全国実態調査」調査結果                ■ ■ 3. ADHD及び高機能自閉症の定義と判断基準(試案)等        ■ ■ 4. 学校数・児童生徒数等の概要                  ■ ■ 5. 特別支援教育体制に関するイメージ図              ■ ■ 6. 特別支援教育の在り方に関する調査研究について         ■ ■                                  ■ □ 編集後記 ------------------------------------ 11:18 2003/03/29 □ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ 【文部科学省】 特別支援教育の在り方に関する調査研究協力者会議  ■ ■  2003/03/28 答申 今後の特別支援教育の在り方について(最終報告) ■ ------------------------------------------------------------------------  今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)が、3月28日午後5時に 公表されました。2回に分けて、その全文を転載いたします。 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/018/toushin/030301.htm −−−−−−−−−−−−−−−−−−− 第4章 特別支援教育を推進する上での小・中学校の在り方について 1 特殊教育に係る小・中学校の制度 (1) 視覚障害者・聴覚障害者以外にも教育の機会を保障する必要性から、昭和  16年の文部省令において、身体虚弱、精神薄弱(現在の知的障害のこと)そ  の他心身に異常のある児童であって特別養護の必要があると認められる者のた  めに教育を行う特別な場として、養護学校とともに、「養護学級」が法制度上  位置付けられた。また、昭和22年に制定された学校教育法においては、小・  中学校に特殊学級を置くことができる旨規定され、いわゆる中軽度の知的障害  者、肢体不自由者、身体虚弱者等に対して、その障害区分ごとに、発達の遅れ  やその特性から学籍を固定して小集団における発達段階に応じた特別な教育課  程や指導法により対応する、いわゆる固定式の場で教育を行うものとされた。  特殊学級の設置目的は上述のとおりであるが、その整備の過程では、知的障害  者等の受入れのための養護学校の整備が十分に進まない中で、障害のある児童  生徒の教育機会を確保するために小・中学校に特別な教育の場として整備が進  められた場合もあった。  また、特殊学級については、その設置の立ち後れから、昭和29年の中央教育  審議会答申においてその計画的設置が提言され、漸次、その整備が進められて  きた。最近は、全在籍児童生徒数の増加傾向に比し、学級数の増加傾向が顕著  であり、一学級当たり2.79人(平成14年5月現在)となっている。  特殊学級では、在籍児童生徒への障害に応じた特別の教育指導に加えて、通常  の学級に在籍する障害のある子どもへの指導を担当する教員の相談支援につい  て、その専門性に応じた役割を果たしている例もある。 (2) 通級による指導は、教科等の指導のほとんどを通常の学級で受けつつ、障  害の状態に応じた特別の指導を特別の場で受けるという指導形態で、平成5年  に制度化され、その対象児童生徒数は大きく増加している。平成5年(5月時  点)に12,259人であったものが、平成10年(5月時点)では倍増し、  平成14年5月現在で、義務教育段階では、言語障害、情緒障害、弱視、難聴、  肢体不自由、病弱・身体虚弱を対象に31,767人が通級による指導を受け  ており、うち言語障害が26,453人を占めている。  通級による指導は、障害の状態の改善・克服を目的とした特別の指導を行うも  のであり、特に必要な場合に教科の内容の補充指導を併せて行うものとされて  いる。また、指導の時間も年間35〜105時間(週1〜3時間が標準)と短  時間である。  なお、平成5年の制度化に当たってはLDを対象とすることについては、定義や  判断基準が明らかになっていない等の理由により引き続き検討すべき課題とさ  れている。  他方、通常の学級に在籍する児童生徒が、特定の時間、特定の場所で教科指導  を含め必要な教育を受ける指導の形態は、学校によっては、LDの児童生徒に限  らず、教科学習につまずきのある児童生徒をも対象に、放課後に自由に参加で  きるいわゆるオープン教室の形で指導を行い成果を上げている事例がある。 (3) 平成14年4月に行われた就学指導の在り方の見直しのための学校教育法  施行令の改正により、就学基準に該当しても市町村の教育委員会が障害の状態  や学校の状況等を踏まえて総合的な判断を行い、小・中学校において適切に教  育を受けることができる特別の事情があると認める場合には小・中学校に就学  することが可能となった。こうした児童生徒については、これまで特殊教育で  培ってきた指導方法、ノウハウを活かすことがますます重要となるため、個別  の教育支援計画の作成を通じた小・中学校の学校全体での指導体制の充実や特  別支援学校との連携協力が重要である。この点からも、学校内及び関係機関や  保護者との連絡調整役として、特別支援教育コーディネーター(仮称)が重要  である。 2 LD、ADHD等の現状と対応 (1) LD、ADHD、高機能自閉症のある通常の学級に在籍する障害のある児童生徒  への教育的対応は緊急かつ重要な課題となってきている。こうした児童生徒が  学級にいる場合、担任教員の理解や経験又は学校内での協力体制が十分でない  こと等から適切な対応ができない、また、時には、学級としてうまく機能しな  い状況に至る事例もある。  これらの児童生徒は多様な障害の状態像を示すことがあり、その状態に応じて  情緒障害、言語障害等の通級指導教室や特殊学級において教育を受けている場  合もあるが、総合的、体系的な対応はなされてこなかった。 (2) LDについては、通級指導教室に関する調査研究協力者会議の報告(平成4  年)で初めてその対応についての検討の必要性が取り上げられ、「学習障害及  びこれに類似する学習上の困難を有する児童生徒の指導方法に関する調査研究  協力者会議」の報告(平成11年7月)により、その定義、判断・実態把握基準  (試案)、指導の方法などが示された。また、平成12年度から、LDのある児童  生徒に対する指導体制の充実事業が全国で展開されてきており、同会議の示し  た定義、判断・実態把握基準等の検証や学校における適切な指導体制の整備に  向けて取り組んでいる。具体的には、小・中学校に校内委員会を設置し学校に  おける実態把握を行うとともに、教育委員会に置かれる専門家チームの意見を  踏まえてLDの判断や適切な教育的対応を決定するほか、専門家による巡回指導  の有効性の検証を行ってきている。  しかしながら、ADHDや高機能自閉症については、その定義や判断基準が明確に  なっていないこと等から学校における適切な対応が図られてこなかった。 (3) LD、ADHD、高機能自閉症により、学習面や生活面で特別な教育的支援を必  要とする児童生徒数は、既に述べたとおり、通常の学級に在籍する児童生徒の  6%程度と考えられること、また、学習上で著しい困難を示すLDと、行動上で  著しい困難を示すADHDや高機能自閉症とが重複している場合があること、LD、  ADHD等については指導内容や指導上配慮すべき点について類似する点も少なく  ないことから、個々の障害ごとにではなく総合的に対処することが適切な場合  も考えられることから、これらの実態を踏まえて効果的かつ効率的に対応する  ことが求められる。 (4) 本調査研究協力者会議では、ADHDや高機能自閉症について、その定義と判  断基準(試案)、学校における実態把握のための観点(試案)、指導方法等  (別添資料参照)について作業部会を設置して検討してきた。今後は、同作業  部会のとりまとめた内容が実際に学校教育の場で効果的に活用できるよう検証  するとともに、学校における適切な指導体制を早急に構築する必要がある。国  においては、上述のLDへの指導体制の充実事業を通じて整備を進めている支援  体制を拡充し、ADHDや高機能自閉症を含めた総合的な支援体制の確立に向けた、  「特別支援教育推進体制モデル事業」を平成15年度より開始することを予定  しているが、本事業を通じて、地方公共団体と連携を図りながら、早急に学校  及び地域における体制整備を図ることが必要である。  ADHDや高機能自閉症は、近年、その教育的対応の重要性が認識されてきている  障害であることから、管理職を含む教職員や保護者等への幅広い理解の推進が  必要である。  また、LDとともに、ADHDや高機能自閉症といった通常の学級に在籍する特別な  教育的支援の必要な児童生徒に関わる教職員に対する研修や相談支援を、国立  特殊教育総合研究所や都道府県等の教育センター等において積極的に行う必要  がある。  LD、ADHD等は、個々の児童生徒により多様な状態を示すことがあり、例えば、  ADHDの児童生徒が同時に高機能自閉症と判断されること、又は、同時にLDと判  断されることもある。このため、これらの児童生徒の教育的ニーズは多岐に渡  ることもあることから、国立特殊教育総合研究所においては、当該児童生徒へ  の具体的な指導方法の実践的な研究を引き続き進めるとともに、これまでの研  究成果や実践事例をとりまとめ活用し易いものにして、学校や都道府県の教育  センター等に対して的確に情報提供することが必要である。 3 学校内における特別支援教育体制の確立の必要性 (1) このように多様な障害のある児童生徒が小・中学校に就学することを考慮  すれば、教職員の理解促進を含め学校全体が組織として一体的に取り組むこと  を確保する体制の構築、特殊教育により培った指導方法・ノウハウの効果的な  活用が不可欠である。また、一人一人の教育的ニーズを把握して適切な教育を  行うための計画を作成し、実行するためには盲・聾・養護学校や福祉・医療機  関等との連携協力が重要である。このことを踏まえて、LD、ADHDなどの障害に  より、通常の学級に在籍する特別な教育的支援の必要な児童生徒への総合的な  支援体制を確立する必要がある。  この点で、LDへの最近の教育実践にもみられるように、校内委員会等による学  校内の体制整備や障害のある児童生徒の実態把握や指導に対して助言を行う専  門家による支援体制の整備に加えて、児童生徒の指導を直接担当する教員等の  学内の関係者、保護者や関係機関との連絡調整役としての特別支援教育コーデ  ィネーター(仮称)による対応や、少人数指導や個別指導を行うチーム・ティ  ーチング(TT)の活用は、今後の支援体制を考える際に重要な要素を提供してい  るといえる。  また、小・中学校に置かれる特別支援教育コーディネーター(仮称)について、  各学校で具体的にいかなる機能や役割を担わせるかは、学校や地域の実情によ  って多様であると考えられるが、少なくとも上述の連絡調整の機能や役割を果  たすことを基本として、迅速かつ効果的に学校における体制整備を進めること  が重要である。また、その職務を学校内において円滑に実施するために出来る  限り指導的な立場にある者がこれに当たることが望まれる。  なお、一般的に言えば、盲・聾・養護学校で指導した、又は、特殊学級や通級  指導教室を担当した経験を有する特殊教育の経験者は特別支援教育コーディネ  ーター(仮称)の候補者であるが、それらのものに限らず、コーディネーター  としての高い資質や能力を有する教員が、特別支援教育コーディネーター(仮  称)となることも考えられる。このため、教員が必要な知識や技能を身に付け  ることでコーディネーターとしての役割を果たすために効果的な研修等につい  て具体的な検討が必要である。 (2) 小・中学校においてこのような体制整備を図るに当たって、小・中学校に  蓄積された人的・物的な資源を効果的に活用することに加えて、非常勤講師や  特別非常勤講師、高齢者再任用制度による短時間勤務の教員等外部人材の積極  的な活用を図るという視点が重要である。また、盲・聾・養護学校から巡回に  よる指導等による支援を効果的に受けるための連携協力も重要であり、その意  味で、これまで特殊教育で培われた教育や指導上の知識や経験を中心に、幅広  い分野の専門的知識や技術を総合的に活用していくことが必要である。  なお、小・中学校においては、学力の向上を目指した個に応じた指導の充実、  不登校やいじめに対する学校内や地域の教育相談体制の充実による対応等種々  の取組が既に行われ、今後、更に充実が図られる予定であるが、これらとの有  機的な連携に十分留意して、適切な特別支援教育体制を構築していくことが必  要である。  また、親の会やNPOの中にはLD、ADHD等の理解の促進等を目的に活発に活動を  行っているものがある。こうした草の根的な活動は、教育の充実や効果的な展  開を図る上で、重要な役割を果たしうるものと考えられることから、親の会等  との連携協力も図りながら取組を行うことも重要なことと考えられる。 (3) 特殊学級は、盲・聾・養護学校の対象でない比較的障害の軽い児童生徒に  対して適切な教育を行う場として設けられたが、この特殊学級については、特  定の児童生徒に対する専門的な指導が可能であるという点を評価する意見があ  る一方で、その在り方については検討すべき点があるとする指摘もある。例え  ば、障害のない児童生徒との交流の重要性に鑑み多くの時間を交流学習にあて  通常の学級に在籍する児童生徒と共に学習する機会を設けている実態を踏まえ  れば、必ずしも、固定式の教育の場を設ける必要はないのではないか、障害の  ある児童生徒の発達や障害等について専門的な知識や技能を有する特殊学級の  担当教員は、小・中学校において重要な役割を担うべき者であり、通常の学級  に在籍する障害のある児童生徒の教育のためにはもちろん、関係機関との連絡  ・調整役となるコーディネーター役として活用されるべきではないか、特殊学  級に蓄積された指導上の知識及び経験並びに設備及び機器は、通常の学級に在  籍する障害のある児童生徒の指導にも広く活かされるべきであり、特定の児童  生徒のみの特別の場として位置付けることは適当ではない、というものである。  このような指摘を踏まえ、特殊教育の中で培われた資源を有効に活用してより  質の高い教育的支援を行うということを念頭に特別支援教育の在り方を考えて  いく中で、特殊学級の在り方を検討することが必要である。 (4) 通級による指導は、通常の学級に在籍する軽度の障害のある児童生徒に対  する特別の指導を行うための制度として設けられ、近年、対象児童生徒数が増  えていることからもそのニーズは高いといえる。しかしながら、障害の状態の  改善・克服を主たる目的としており、LDのように特定の能力の困難に起因する  教科学習の遅れを補う指導が中心となる場合を想定していない、指導時間数が  1〜3時間と短時間であり、LD、ADHD等については適切な対応が困難な場合が  ある、ということを踏まえ通級による指導の制度の目的や指導時間について、  より弾力的な対応ができないか検討する必要がある。 (5) このため、特殊学級や通級指導教室について、その学級編制や指導の実態  を踏まえ必要な見直しを行いつつ、障害の多様化を踏まえ柔軟かつ弾力的な対  応が可能となるような制度の在り方について具体的に検討していく必要がある。  この際、単に、特殊学級や通級指導教室の教員のみで対応するのではなく、学  校内の教員全体の理解の促進と支援体制の構築、非常勤講師や特別非常勤講師、  高齢者再任用制度による短時間勤務の教員等の活用、「特別支援学校(仮称)」  や福祉、医療等関係機関、都道府県等の設置する特殊教育センターに相談し、  指導や助言が受けられるような体制を構築して総合的に対応するための仕組み  づくりに取り組むことが重要である。 (6) 特殊学級の機能として、その制度の本来の趣旨を尊重し、盲・聾・養護学  校の対象とはいえない程度の教育的ニーズを有する障害のある子どもを教育す  る機能を今後も持たせることが適当であり、この場合には、これまでの交流学  習等の実践でも明らかなように、他の子どもと共に学習すること、又は、生活  する時間を共有することが有効であると考えられる。  このため、小・中学校に在籍しながら通常学級とは別に、制度として全授業時  間固定式の学級を維持するのではなく、通常の学級に在籍した上で障害に応じ  た教科指導や障害に起因する困難の改善・克服のための指導を必要な時間のみ  特別の場で教育や指導を行う形態(例えば「特別支援教室(仮称)」)とする  ことについて具体的な検討が必要と考える。 (7) この場合、例えば、小・中学校の障害のある児童生徒は、障害の状態等に  応じてできるだけ自らが在籍する学級において他の児童生徒と共に学習し、生  活上の指導を受け、障害に配慮した特別の教科指導や障害に起因する困難の改  善・克服に向けた自立活動といった特別の指導が必要な時間を、この特別支援  教室において担当の教員等から指導を受けることになる。  特別支援教室の運営形態としては、障害の状態によって、従来の通級指導の対  象となる児童生徒のように週に数時間のみこの教室で指導を受ける場合、従来  の特殊学級における教育の対象となる児童生徒のように週の相当の時間をこの  教室で指導を受ける場合、また、小学校の低学年で集中的に特別の指導をこの  教室で受け、高学年ではほとんどの時間を他の児童生徒と共に学習するという  場合等様々なものが考えられ、従来の特殊教育の機能を包含しつつ弾力的な対  応を可能とするものである。 (8) 今後、小・中学校における障害の児童生徒への対応を考えるに当たっては、  多様な障害種に応じた教育的対応が求められることに留意する必要がある。例  えば、学校における教員等の配置についても、各学校に配置された教員がその  学校の児童生徒の教育を担当する形態に加えて、特定の学校に一定数の教員を  配置し同学校を拠点に他の学校の特別支援教室に出向いて教育や指導を行う巡  回指導の形態等、柔軟な対応について具体的に検討することが必要である。 (9) LD、ADHD等を含め、障害のある子どもで特別の教育的支援を必要とする者  について、上述のような小・中学校での取組に加えて幼稚園、高等学校、高等  教育の各段階において適切な対応を図ることが重要である。  幼児期からの支援を進めるためには、幼稚園全体で支援しあえるような体制の  整備、日頃から保護者への理解推進を進めていく研修等の充実が必要である。  文部科学省においては、平成15年度より都道府県教育委員会と連携して幼稚  園における障害の状態に応じた個別の指導計画の工夫、教職員の協力体制や障  害に配慮した指導体制の在り方等について実践的な調査研究を開始することを  予定しており、こうした取組を通じて、LD、ADHD等についても受入れ体制や、  指導の充実が図られることが重要である。  また、幼稚園と比べて保育所の在籍幼児数が多い実情を踏まえれば、障害に対  応した適切な教育的対応を考えていく上で保育所の役割を軽視することはでき  ない。保育所においても幼稚園と同様の視点から取り組むことが期待され、ま  た、小学校や盲・聾・養護学校の小学部において幼稚園や保育所と日頃からの  情報交換を行うことが就学後に児童生徒一人一人の教育的ニーズに対応した教  育を行う上で重要と考えられる。  また、中学校を卒業した後は、高等学校へ進学する生徒も多いことから、高等  学校においても、LD、ADHD等へ対応した特別な支援体制を構築することや、研  修などを通じて理解推進が図られることが重要である。また、都道府県等の教  育委員会に設置された専門家チームが、必要に応じて高等学校への支援を行う  ことについて検討する必要がある。さらに、養護学校高等部との連携も重要で  ある。  高等教育段階においても、大学において、視覚障害、聴覚障害、肢体不自由等  の学生について、ノートテイカーの配置、講義ノートの作成等の障害に応じた  教育上の配慮、エレベーター、スロープ等の施設や設備面での整備等の取組が  各大学において進められている。また、LD、ADHD等の学生について、大学関係  者の理解の促進が図られ、学生に対し相談支援を行う組織体制についての具体  的検討や個々の学生への支援の内容や方法についての検討が進められることが  重要である。 ------------------------------------------------------------------------ 第5章 特別支援教育体制の専門性の強化 1 総合的な取組の必要性 (1) 障害のある児童生徒に対して適切な教育を行うために、教員等の配置、学  級編制、施設や設備の整備等様々な面で手厚い措置を講じてきたが、盲・聾・  養護学校において、又は、小・中学校における特殊学級等においてそれぞれ指  導の専門性の向上や両者間における連携協力、福祉、医療等関係機関との連携  協力が十分であるとはいえない状況にある。  今後は、校長、教頭をはじめとした教員一人一人の障害のある児童生徒に対す  る理解や指導上の専門性を高めること、組織として一体となった取組が可能と  なるような学校内での支援体制を構築すること、学校外の専門家等の人材を学  校で有効に活用すること、関係機関との有機的な連携協力体制を構築すること  等により、特別支援教育体制の専門性の強化に向けた取組が重要である。  また、国として指導内容や方法の面で重要と考える課題や先進的な課題につい  て、積極的に研究が行われ、その成果が研修等により、各自治体や学校に迅速  に普及させていくことも質の高い教育を行う上で重要な課題である。このため、  国立特殊教育総合研究所、国立久里浜養護学校、関係の大学等を特別支援教育  を推進していく上での資源又は重要な専門機関として捉え、積極的に活用する  総合的な教育研究体制の構築を目指す必要がある。 (2) 担当教員の基本的な資質能力を確保する免許制度は障害のある子どもの教  育を支える上でも重要な基盤の一つである。現行制度において特殊教育免許は  対象となる障害種が特定されているが、近年みられる児童生徒の障害の重度・  重複化や多様化の状況に対応して免許制度についても改善が図られることが重  要である。  国の中央教育審議会教員養成部会において平成13年12月に特殊教育免許の  総合化に関するワーキンググループが設置され、障害種別に対応した専門性を  確保しつつ多様な障害へ対応することが可能となることを目指して特殊教育に  係る免許制度の改善について検討が行われている。現在、本調査研究協力者会  議におけるこれまでの審議状況も踏まえて免許制度の見直しについて調査審議  が行われているが、原則として学校の種類ごとに免許を必要とする現行免許制  度との整合性、学校内外の人材又は機関による総合的な連携体制の構築による  一層質の高い教育の確保や小・中学校等におけるより適切な教育的対応等の観  点も踏まえ、特別支援教育を進める上で適切な制度となるよう同ワーキンググ  ループにおいて具体的な検討が行われることを強く期待する。 (3) 盲・聾・養護学校の教員の特殊教育教諭免許状保有率が十分でないという  実状に鑑み、「21世紀の特殊教育の在り方について(最終報告)」を踏まえて、  各自治体において特別支援教育における専門性の重要性を十分に理解し保有率  の向上に向けた一層の取組が求められる。また、盲・聾・養護学校の教職員、  特殊学級や通級指導教室担当教員について、教育はもちろん、コーディネータ  ーとしての資質・能力の向上のため、地域のニーズも踏まえつつ、国立特殊教  育総合研究所、都道府県等の教育センター、大学等により適切な研修プログラ  ムの提供を行うことが重要である。 (4) 就学前の子どもに対する教育相談や、乳幼児期からの「個別の教育支援計  画」の作成に盲・聾・養護学校の幼稚部や小学部が積極的に関わることが重要  であり、乳児期から療育に取り組む福祉関係機関に対し積極的に協力、支援を  行うことが求められる。また、障害のある者に対し、卒業後の学習機会の充実  のため、盲・聾・養護学校は、関係機関と連携して、生涯学習を支援する機関  としての役割を果たしていくことも重要である。 (5) 障害の状態に応じた適切な教育を行う上で先導的な指導方法の開発等が重  要であり、これまでも国立特殊教育総合研究所、大学等において関連の調査及  び研究が行われてきているが、この成果が円滑に学校において普及し、指導に  活かされるようにすることが重要である。  なお、最近では、脳の発達と学習方法、コミュニケーション等脳科学からの知  見の蓄積を育児や学習指導に活かしていくことが重要との認識の下、国内外で  脳科学と教育との関わりを重視した取組が行われている。文部科学省において  も、個人が有する能力の健全な発達や維持又はその妨げとなる要因を適切に除  去又は克服するとの視点に立って「脳科学と教育」研究を重要な研究分野とし  て捉え、文部科学省内に設置した「脳科学と教育」研究に関する検討会に、ワ  ーキンググループを設けて今後の取組方策等について検討を行ってきている。  言語障害、LD、ADHD等のように脳の発達と密接な関連があるものもあり、障害  のある児童生徒についても脳科学の成果を踏まえて適切な教育的対応を図るこ  とが一層効果的と考えられるものがあるため、現在行われている検討の結果も  踏まえ、教育サイドからの課題の提示を踏まえた「脳科学と教育」研究が進展  することが望まれる。この場合に、国立特殊教育総合研究所等教育に関わる機  関や研究者も積極的な対応を図ることが期待される。 2 国立特殊教育総合研究所の在り方 (1) 国立特殊教育総合研究所は、平成13年4月に独立行政法人になった。  同研究所の独立行政法人への移行に当たっては、平成13年1月の「21世紀  の特殊教育の在り方(最終報告)」において、我が国の特殊教育のナショナル  センターとしての機能を高めることが必要であり、このため、国の行政施策の  企画立案及び実施に寄与する研究の推進と実践的な研究の充実、体系的、専門  的な研修の充実、教育相談活動の研究と教育相談に関する情報提供等の機能の  充実の必要性が提言された。ここで提言された内容は、今後も有効なものであ  る。 (2) 特殊教育をめぐる諸情勢の変化、財政的な事情等を踏まえ、より質が高く、  より社会的要請に対応した研究を効果的に行う必要があり、このため同研究所  は、LD、ADHD、自閉症等の新たな課題の研究への取組はもちろん、国内外の大  学、研究機関等とのネットワークの構築により効果的かつ効率的に研究を実施  するための組織体制の構築が重要であり、社会的なニーズの高い課題について  弾力的に取り組めるような体制を整備することが必要である。 (3) また、同研究所は、長期又は短期研修、講習会等を通じて、学級担任から  指導的な立場にある者も含め教員等の資質の向上のために幅広い分野、領域で  貢献してきた。近年では、都道府県等各自治体における研修も活発に行われる  ようになってきており、今後は、自治体独自で実施することが困難な内容の研  修の開催や自治体の研修活動への協力を行うとともに、また、情報技術の活用  等を通じて、研修活動の一層効率的、効果的な実施に向けて具体的に取り組ん  でいくことが求められる。 (4) このように、障害種にとらわれず、社会的要請に弾力的に対応するという  視点に加えて、地方公共団体や関係機関とのネットワークを通じてその取組を  補完、若しくは、支援する、又は、関係機関との共同研究・事業の企画、調整  する役割を担う機関として、我が国全体を視野に入れて、特別支援教育の研究  や研修を総合的に推進していくという視点が重要である。 (5) 国立久里浜養護学校との連携においても、同研究所は、昭和48年に国立  久里浜養護学校が設立されて以来、重度・重複障害の子どもを中心に、実際的  な研究の推進や研修面における教育実践のための相互協力を行ってきた。これ  により、同研究所の研究や研修活動の成果は、養護学校における重度・重複障  害の児童生徒に対する適切な教育や指導法の確立に活かされ、その学習機会の  保障の実現に大きく貢献してきた。 (6) 今後とも、新たな課題に対応して国立久里浜養護学校との相互協力により  研究、研修活動等に取り組むことが必要であり、特に、これまで養護学校にお  いて様々な教育が実践されてきたにもかかわらず有効な指導方法が十分確立さ  れていない自閉症について、大学等の関係機関との連携を図りつつ、国立久里  浜養護学校との相互協力の充実を図る必要がある。 3 国立久里浜養護学校の在り方 (1) 国立久里浜養護学校は、昭和48年9月に重度・重複障害の児童生徒を受  け入れる国立の養護学校として設置され、国立特殊教育総合研究所との相互協  力の下で、教育研究や研修の充実に取り組んできた。養護学校への就学の義務  化を控えて重度・重複障害の児童生徒の教育や指導の方法を開発することは重  要な政策課題であり、実際的な教育研究や研修面での臨床実践の場として機能  し、当該児童生徒の就学の確保に大きく貢献した。  しかしながら、全国的に養護学校が整備され、また、重度・重複障害の児童生  徒の受入れも進められてきている一方で、国立大学の法人化が具体化し、国立  久里浜養護学校を含め国立学校の今後の在り方が問題となったところである。 (2) 現在、前述のように自閉症の児童生徒に対する教育・指導の方法の開発が  重要な課題となっており、教育研究の成果の体系的な蓄積やそれに基づく研修  等のプログラムの提供等が重要である。「21世紀の特殊教育の在り方について  (最終報告)」においても、自閉症の児童生徒の教育的対応については、知的  障害との違いを考慮しつつ障害の特性に応じた対応について今後も研究が必要  であり、国においては、知的障害養護学校等における効果的な指導の在り方に  ついて調査研究を行う必要があることが指摘されている。  これらを効果的かつ効率的に実施するためには、自閉症の児童生徒の教育研究  を行う場として、あるいは、教員が指導の方法、技術等を実践し体得する研修  の場としての機能を有する学校が必要である。 (3) 近年、国立久里浜養護学校においても自閉症の指導プログラムの開発のた  めの実践研究を進めてきているが、今後は、国立特殊教育総合研究所、大学等  関係機関との連携協力の下で、自閉症の児童生徒の教育研究の場として、又は、  指導や研修の実践の場として機能することにより、我が国の自閉症の児童生徒  への教育的対応についての研究や研修に積極的に貢献していくことが必要であ  る。その場合、自閉症の児童生徒への指導の経験を有する教員を計画的に配置  する等、自閉症の児童生徒への指導を的確に行うために必要な体制整備を都道  府県等とも連携しながら進めていく必要がある。  なお、国立大学等の法人化に伴い国立学校の一つである国立久里浜養護学校の  設置形態の検討が必要となるが、自閉症の児童生徒への指導方法の研究を効果  的に進めるためには、基礎的な研究を含め総合的な取組が必要となること、ま  た、幅広い研究スタッフ、蓄積された研究の成果の活用が円滑に行えること等  にも十分に配慮する必要がある。このため、障害のある子どもの教育について  研究実績の豊富な大学の附属学校とすることにより、大学の基礎研究と国立特  殊教育総合研究所の実際的な研究との密接な連携を確保し自閉症の児童生徒の  教育研究を支える学校としての機能が最大限に発揮されることを期待する。 ------------------------------------------------------------------------ 参考資料 1.「個別の教育支援計画」について http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/018/toushin/030301h.htm 2.「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する全   国実態調査」調査結果 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/018/toushin/030301i.htm 3.ADHD及び高機能自閉症の定義と判断基準(試案)等 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/018/toushin/030301j.htm 4.学校数・児童生徒数等の概要 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/018/toushin/030301k.htm 5.特別支援教育体制に関するイメージ図 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/018/toushin/030301l.pdf 6.特別支援教育の在り方に関する調査研究について http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/018/toushin/030301m.htm ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ □ 編集後記 ------------------------------------ 11:18 2003/03/29 □ ------------------------------------------------------------------------  来週は、お花見に行く予定があります。。。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ LDニュースの記載内容に関する質問には原則として回答はできかねます ■ ■ LDニュースの記載内容を転載される場合には必ず下記までご連絡下さい ■ ■ 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