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==================================================================== LD(学習障害)ニュース #225 2001.01.17 発行 登録読者数 2,932 LD = Learning Disabilities LD親の会「けやき」編集 1997.9.10創刊 ==================================================================== ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ 21世紀の特殊教育の在り方について(最終報告)5 2001/01/15 ■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■□■□ この LDニュース は「等幅」フォントでお読みください □■□■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ 21世紀の特殊教育の在り方について(最終報告)5 2001/01/15 ■ -------------------------------------------------------------------- 第4章 特殊教育の改善・充実のための条件整備について 2 特殊教育関係教職員の専門性の向上 2−1 特殊教育教諭免許状の保有率の向上及び     今後の免許状の在り方について -------------------------------------------------------------------+ 1.可能な限り早期にすべての盲・聾・養護学校の教員が特殊教育教諭免 |   許状を保有することが必要であり、設置者である各都道府県教育委員 |   会等の積極的な取組が求められる。このため、各都道府県等において |   は、特殊教育教諭免許状の保有率等を踏まえ、特殊教育教諭免許状の |   保有率向上の目標と計画を策定し、次のような取組を進めること。  |   a.教員採用に当たって特殊教育教諭免許を有する者の採用を基本とす |   ること。 b.教員配置に当たって免許保有等の要件を明確にしたり、 |   配置後一定期間に免許を取得するよう促すなどの工夫をすること。  |   c.認定講習の充実や情報提供などに努め、教員が計画的に単位を修得 |   する機会が得られ、免許が取得できるようにすること。       |                                   | 2.国は、各都道府県における特殊教育教諭免許状保有率の状況を踏まえ、   全国的に必要となる保有者数を把握するとともに、各都道府県教育委 |   員会等の免許状保有率の向上のための目標と計画及び改善状況等を調 |   査し、教育委員会等における取組を支援すること。国立特殊教育総合 |   研究所において、情報通信技術を活用し、講義を配信するなど引き続 |   き認定講習の充実に寄与すること。また、学校種ごとに定められてい |   る免許のほかに盲・聾・養護学校のすべての校種において教授するこ |   とを可能とする「総合免許状」については、関係者の意見を聴取しな |   がら検討すること。                       | -------------------------------------------------------------------+ (1) 盲・聾・養護学校の教員については、児童生徒等の障害の状態に応じて、  特別な教育的ニーズに応じた教育を行う必要があることから、小・中学校  等に比べて特別な専門性が要求される。このため、盲・聾・養護学校の教  員は、小・中学校等の教員のいわゆる基礎免許状に加えて、盲・聾・養護  学校の学校種ごとの特殊教育教諭免許状の所有が必要とされている。 しかし、この特殊教育教諭免許状を保有していなくても盲・聾・養護学校  の教員となることができる特例が設けられていること等から、現状では盲  ・聾・養護学校の教員の特殊教育教諭免許状の保有率は、盲学校21%、  聾学校31%、養護学校52%となっている。 各都道府県ごとの特殊教育教諭免許状の保有状況をみると、例えば養護学  校でおよそ9割から3割までかなりのばらつきがみられるが、保有率の高  い県では、特殊教育における専門性の重要性を十分認識した上で様々な取  組によって保有率の向上に努力し成果を挙げている。 具体的な取組としては、例えば、採用について、特殊教育諸学校の試験区  分を設け当該免許の保有を条件とするとともに、やむなく当該免許を有し  ない者を採用せざるを得ない事情がある場合でも、できるだけ早期に免許  取得を求めているところがみられる。 また、小・中・高等学校との間で人事交流を行う場合には、特殊教育に意  欲があり、実践的な指導力を有する教員を配置するよう努めており、当該  教員が特殊教育教諭免許状を有していない場合には、免許状を取得するよ  う促しているところもみられる。 さらに、特殊教育教諭免許のための認定講習について、例えば盲・聾・養  護学校を講習会場とするなど、教員が受講しやすくなるよう配慮するとと  もに、近隣の県との間で認定講習の開設情報を交換し教員に提供したり、  受講希望者を相互に受け入れるなどの工夫をしているところもみられる。 (2) このような実情を踏まえ、可能な限り早期にすべての盲・聾・養護学校  の教員が特殊教育教諭免許状を保有することが必要であり、設置者である  各都道府県教育委員会等の積極的な取組が求められる。このため、各都道  府県教育委員会等においては、特殊教育教諭免許状の保有状況や学校の状  況等を踏まえ、具体的な改善の目標及び計画を策定し、その実現に向け、  人事管理、教職員研修、教育指導など総合的な観点から次のような採用、  配置、研修等を通じた取組を積極的に進めることによって、特殊教育教諭  免許状の保有率を向上させる必要がある。 第一に、盲・聾・養護学校の教員の採用に当たって、教員養成課程で特殊  教育を修め、当該免許を有する者の採用を基本とする必要がある。 第二に、教員の盲・聾・養護学校への配置に当たっては、当該免許の保有  その他の要件を明確にしたり、当該免許を保有していない教員を継続的に  配置する場合には、3年間など一定期間に当該教員が免許を取得するよう  促すなどの工夫をする必要がある。 第三に、現職教員の当該免許の取得については、地元の大学や近隣の都道  府県等との一層の連携を進め、認定講習の充実や情報提供などに努めるこ  とにより、教員が計画的に単位を修得する機会が得られ、免許が取得でき  るようにする必要がある。 なお、特殊学級や通級による指導担当の教員についても、児童生徒の障害  の種類、程度に応じた教育の専門性が必要であり、特殊教育教諭免許状の  保有者を充てたり、特殊学級や通級による指導担当の教員が特殊教育教諭  免許を取得するよう促すことにより専門性を高める必要がある。 (3) 国は、各都道府県における特殊教育教諭免許状保有率の状況を踏まえ、  全国的に必要となる保有者数を把握するとともに、各都道府県教育委員会  等が策定する特殊教育教諭免許状の保有率の向上のための目標と計画及び  それに基づく毎年の改善状況等を調査し、教育委員会等における取組を支  援する必要がある。また、国立特殊教育総合研究所は、情報通信技術を活  用し、教育委員会と連携を図って講義を配信するなど引き続き認定講習の  充実に寄与する必要がある。さらに、放送大学においても、上記の特殊教  育教諭免許状の保有率の向上のための目標と計画等の状況を踏まえるとと  もに、免許取得ニーズの動向を見極めつつ教育職員免許法の特殊教育に関  する科目に対応する科目の開設が期待される。 また、児童生徒等の障害の重度・重複化や多様化が進んでいる中で、特殊  教育教諭免許状が、盲・聾・養護学校に分かれていることが現実に合わな  い状況が生じている。こうしたことを踏まえ、今後、複数の障害に対応し  た専門性と実践的指導力を有する教員を養成するため、学校種ごとに定め  られている免許のほかに盲・聾・養護学校のすべての校種において教授す  ることを可能とする「総合免許状」について関係者の意見を聴取しながら  その創設について検討する必要がある。 なお、これらの取組の進展による特殊教育教諭免許状の保有率の状況を踏  まえつつ、将来的には、盲・聾・養護学校の教員は必ず特殊教育教諭免許  状を保有しなければならないようにすることについても、検討していく必  要がある。 2−2 研修の充実 -------------------------------------------------------------------+ 1.障害のある児童生徒等の教育を支えるすべての教員が職務や役割など |   に応じて力を発揮できるよう研修の在り方を見直し、国と都道府県等 |   が協力して教員の資質の向上に努めること。            |                                   | 2.盲・聾・養護学校の教員の専門的な指導力の向上を図るため、研修目 |   的や研修者の特性に応じて適切な研修プログラムを策定すること。ま |   た、インターネットや衛星通信など情報通信手段の活用を工夫し、研 |   修事業の成果を効果的に普及し、活用すること。          |                                   | 3.特殊学級担当教員及び通級指導担当教員については、都道府県教育委 |   員会等において免許状を保有する教員を配置したり、特殊学級や通級 |   指導教室を設置する小・中学校に、特殊教育の理解の深い校長や教頭 |   を配置するなど人事上配慮するとともに、研修の全体計画に位置づけ、   経験年数やニーズに応じて計画的、体系的な研修プログラムの提供に |   努めること。                          |                                   | 4.今後、すべての教員が障害のある児童生徒等とその障害に関する理解 |   と認識を深める必要があり、都道府県教育委員会等においては、初任 |   者研修等の中で、盲・聾・養護学校において研修を実施することを検 |   討すること。また、通級による指導を受けている児童生徒の学級担任 |   に対する研修の機会を設けること。                |                                   |   学習障害等の児童生徒等への教育的対応について、国立特殊教育総合 |   研究所において専門的な研修を実施するとともに、都道府県において |   専門家の巡回相談事業を活用し事例研究などを進めること。     | -------------------------------------------------------------------+ (1) 児童生徒等の障害の状態等に応じたきめ細かな指導を行うためには、特  殊教育担当教員の資質の向上が必要である。このため、これまで、文部省  及び国立特殊教育総合研究所においては、種々の特殊教育に係る指導者講  習会や喫緊の課題に関する研修を行い、都道府県教育委員会等は職務経験  に応じた研修や専門教科等に係る基本的な研修を行うなど、それぞれが役  割分担して研修体系の整備に努めてきた。 盲・聾・養護学校の教員については、各都道府県の特殊教育センター等に  おいて、初任者研修、中堅職員研修、新任校長・教頭研修、自立活動、専  門教科、訪問教育、通級による指導など、経験、職能等に応じた研修が行  われている。 特殊学級担当の教員及び通級指導担当の教員についても、都道府県教育委  員会等では、特殊学級担任等を対象とした研修を行っているところが多い  が、特殊学級担任が他の教員に任せて学校外で研修を受けることが難しか  ったり、研修の内容も、受講者の経験や力量などの幅が大きく、多様なニ  ーズに十分応じたものになっていないなどの問題がある。 また、小・中学校の教員については、障害のある児童生徒や基本的な指導  上の配慮事項などへの理解が求められており、都道府県の特殊教育センタ  ー等において、特殊教育に関する情報を広く提供するための公開講座を実  施したり、学校において、校内研修に特殊学級の研究授業を盛り込むなど  理解・啓発に努めているところもある。しかし、通常の学級の教員が特殊  教育に関する研修を受ける体制は、必ずしも十分ではない。 このような状況を踏まえ、今後、障害のある児童生徒等の教育を支えるす  べての教員がそれぞれの職務や役割などに応じて十分力を発揮できるよう、  研修の在り方を見直し、国と都道府県等が協力して教員の資質の向上が図  られるようにすることが必要である。 (2) 盲・聾・養護学校の教員を対象とした研修については、児童生徒等一人  一人の障害の状態に応じた専門的な指導や障害の重複化に対応した一層き  め細かな指導ができる力の向上を図るため、それぞれの地域や学校の実態  を踏まえ、特殊教育に関する最新の情報や、必要に応じ福祉、医療、労働  などの関連分野と連携を図った研修の機会などを提供することが求められ  る。また、より高度な専門性や実践力を身に付けるため平成13年度から  実施される大学院修学休業制度を積極的に活用することが望まれる。 また、盲・聾・養護学校において専門性の高い教育の充実を図るためには、  特殊教育に対する十分な知識と深い理解を有する者を校長や教頭に配置す  るよう配慮するとともに、校長や教頭に対する研修の充実を図ることが求  められる。 さらに、他校種から盲・聾・養護学校への転任を希望する教員に対しても  計画的な研修が望まれる。 このため、都道府県の特殊教育センター等において、研修の目的や特殊教  育の経験年数などの対象者の特性に応じて一層適切な研修プログラムを策  定することが必要である。 また、インターネットや衛星通信など情報通信手段を活用したり、都道府  県主催の研修の受講修了者が市町村主催の研修の講師になったり、各学校  の校内研修において他の教員を指導するなどの工夫により、研修事業の成  果が効果的に普及し、活用されるようにすることが重要である。 (3) 特殊学級担当教員及び通級指導担当教員については、特殊教育に対する  基本的な理解、障害を改善・克服するための指導方法、児童生徒とのかか  わりや保護者への教育相談の心構えなどの知識・技能等の専門性が不可欠  である。しかし、一般的に、通級指導担当教員は、比較的経験豊富な指導  力のある教員が配置されることが多いが、特殊学級担当の教員については、  地域によっては、経験の少ない若手の教員が配置されたり、学校内の教員  が交替で担当していることから、特殊教育に関する専門性が必ずしも十分  でない場合もあるとの指摘もある。 地域によっては、研修を行うに当たって、研修希望のある学校に指導者を  派遣し特殊学級における校内研修会を行ったり、特殊学級の担任が養護学  校の授業に参加して実践的な指導力を身に付けるようにするなどの工夫を  しているところもある。 都道府県教育委員会等においては、特殊教育教諭の免許状を保有する教員  を特殊学級担当教員等に配置したり、盲・聾・養護学校との人事交流を推  進するなど、人事上の配慮を積極的に行うとともに、教職員研修担当者と  特殊教育担当者が連携を図り、特殊学級担当教員等に対する研修を全体の  研修の中に位置づけ、特殊学級担当教員等の経験年数やニーズに応じて計  画的、体系的な研修プログラムを提供できるよう努める必要がある。また、  特殊学級や通級指導教室を設置する小・中学校には、特殊教育に理解が深  い者を校長や教頭として配置することや、すべての小・中学校の新任の校  長や教頭に対する研修の充実を図ることについて配慮することが求められ  ている。 市町村教育委員会においても、都道府県教育委員会等と役割分担しながら、  特殊学級担当教員等の研修の機会の充実を図ることが期待される。また、  小・中学校の校長は、特殊学級担当教員等の専門性の重要性を認識し、学  校全体で協力して特殊学級担当教員等の研修の機会の充実に取り組むこと  が必要である。 (4) 小・中学校における通級による指導を受ける児童生徒の増加や学習障害  等への対応が求められていることや、盲・聾・養護学校と小・中・高等学  校等、特殊学級と通常学級との交流を進め、障害のある児童生徒等と障害  のない児童生徒等との交流を積極的に推進する上で、今後、校長や教頭を  はじめ、通常の学級を担当するすべての教員が障害のある児童生徒等とそ  の教育に関する理解と認識を深めることが必要となっている。 幼稚園、小・中・高等学校等の教員については、普通免許状の授与を受け  る場合の教職に関する科目として障害のある児童生徒等の心身の発達及び  学習の過程が含まれることとなり、また、小・中学校の普通免許状取得希  望者は、盲・聾・養護学校や福祉施設における介護等体験を必ず行うこと  とされたところであり、今後は、普通免許状取得者の特殊教育に関する理  解が深まることが考えられる。 また、教員養成大学等においては、障害のある児童生徒等の発達や学習の  過程などに関する科目の開発を行ったり、授業の内容や方法の改善を図る  ための組織的な研修や研究の充実に努めている。採用後も、都道府県教育  委員会等において、初任者研修等の中で、盲・聾・養護学校において研修  を実施することを検討することが望まれる。 なお、身体に障害のある者が教員になることは、児童生徒等の障害者に対  する理解を深めるとともに他の教員の特殊教育に対する関心を深め、学校  全体として障害のある児童生徒等への指導体制の充実が図られるという観  点から極めて重要であり、各都道府県教育委員会は、教員免許状を保有す  る障害者を積極的に公立学校教員に採用することが望まれる。 また、通級による指導を受けている児童生徒の学級担任が、通級指導担当  教員と連絡を密にしながら児童生徒の特別な教育的ニーズに配慮した指導  を行うことができるよう、通級による指導に関する理解や障害のある児童  生徒への指導上の配慮事項などについて研修の機会を設けることが必要で  ある。 特に、学習障害等の児童生徒等への教育的対応について、関心が高まって  おり、こうした新たな課題に関する教員の理解と指導力の向上を図ること  が必要となっている。 学習障害等については、まだ実態が十分明らかになっておらず、指導方法  等についての調査研究を行っている段階にあり、必ずしも指導方法が確立  しているとはいえない状況である。また、地域によっては、専門の指導者  も確保できない場合もある。 このような状況から、ほとんどの都道府県等において学習障害等に関する  研修が行われているが、研修日数が短く、研修内容は理解・啓発や実態把  握が中心になっている。 このため、今後、国立特殊教育総合研究所においては、学習障害等に関す  る専門的な研修を実施する必要がある。また、都道府県においては、国が  各都道府県教育委員会に委嘱して行っている学習障害に関する専門家の巡  回相談事業を活用し、事例研究などを進めることが期待される。 (5) なお、今後、国立特殊教育総合研究所を中心に、全国の特殊教育センタ  ー等が連携を図り、研修事業等に関する情報交換や研究協議等を通じて教  員研修の一層の充実に寄与することが必要である。 国立特殊教育総合研究所においては、その総合的、実践的な研究の成果を  生かし、全国の特殊教育の指導者を対象とした講習会や喫緊の課題に関す  る研修を一層充実するとともに、全国の特殊教育に関する研修事業の情報  をインターネット等を通じて提供したり、情報通信ネットワークを活用し  て研修の講義を配信するなど、各都道府県における研修の充実を支援する  ことが求められている。 都道府県の特殊教育センター等では、研修事業の充実を図るとともに、そ  の成果を効果的に普及し、校内研修や自主的な研修を支援するため、イン  ターネット等により研修情報や公開講座の要旨などの情報提供をしたり、  マンツーマンで教員の相談に当たるなどの取組を行うことが望ましい。 3 特殊教育を推進するための条件整備について -------------------------------------------------------------------+ 1.児童生徒等の「生きる力」を育成するための教育内容や方法の多様化 |   や、障害の重度・重複化や多様化に対応するため、教育委員会におい |   ては、盲・聾・養護学校や小・中学校等における施設のバリアフリー |   化を含む学校施設の整備充実に努めること。            |                                   | 2.盲・聾・養護学校等における特殊教育に係る設備については、新学習 |   指導要領における改善内容に対応した教材の整備や最新の情報技術  |   (IT)に対応した教材の整備を図ること。              |                                   | 3.特殊教育に関する就学奨励については、近年の社会の変化等を踏まえ、   対象経費や負担割合等について関係団体等の意見を聞きながら必要な |   見直しを検討すること。                     | -------------------------------------------------------------------+ (1) 近年、国際化や情報化などの社会の変化に対応し、児童生徒等が自ら学  び自ら考える力などの「生きる力」を育成するため、教育内容や教育方法  の多様化を工夫したり、家庭や地域との連携を促進することが求められて  おり、学校施設の整備についても、こうした観点から改善が求められてい  る。また、盲・聾・養護学校は、児童生徒等の障害の重度・重複化や多様  化、教育内容や指導方法の変化等への対応についても求められている。こ  のため、文部省においては、平成10年度、平成11年度に自立活動の充  実、特別教室の充実、屋内運動場の車いす利用への対応など、盲・聾・養  護学校の各施設の整備に必要な経費を補助する国庫の基準面積について全  面的な改定を行ったところである。 また、学校施設については、障害のある児童生徒等が支障なく学校生活を  送ることができ、障害の種類と程度に応じたきめ細かな教育が展開できる  ようにすることが必要であることはもちろん、地域社会における学校活動  や交流活動を行う場として利用される公共的な施設であることから、高齢  者や障害者が円滑に利用できるよう施設のバリアフリー化を進めることが  必要である。このため、国においては、盲・聾・養護学校や小・中学校等  が、エレベータやスロープ等障害のある児童生徒等の学習環境を整備する  ための施設整備について、国庫補助の対象として必要に応じて整備を図っ  てきたところである。なお、今後は、就学指導の在り方の見直しに伴い、  例えば、車いすを使用する肢体不自由児が小・中学校に就学する場合もあ  り、学校施設のバリアフリー化はますます重要となってくることが考えら  れる。 さらに、児童生徒等の障害の重複化に伴う学級数の増加や高等部の生徒数  の増加などにより、普通教室や職業実習にかかる施設・設備が不足してい  る学校があるとの指摘もあり、盲・聾・養護学校の施設について、障害の  状態及び特性や発達段階等に応じ必要となる学習・生活のための環境を整  える必要がある。また、盲・聾・養護学校の寄宿舎は、入舎した障害のあ  る児童生徒等が毎日の生活を営みながら、生活のリズムをつくるなど生活  基盤を整え、自立し社会参加する力を培う重要な場であり、老朽化した施  設・設備の改善を図るとともに、情報機器の整備等やバリアフリーの推進  などを行い、居住環境の向上に十分配慮する必要がある。 以上のような状況を踏まえて、教育委員会においては、盲・聾・養護学校  や小・中学校等における施設のバリアフリー化を含め児童生徒等の教育的  ニーズに応じた必要な学校施設の整備充実に努める必要がある。 (2) 特殊教育に係る設備については、盲・聾・養護学校等に、スクールバス  や集団補聴装置、点字器具等を整備する場合に国が補助を行ってきたが、  今後、ノンステップ等の低床型のスクールバスの要望が増えることが予想  される。  また、例えば、コンピュータ等情報機器の活用や知的障害養護学校高等部  の専門教科「流通・サービス」の新設など、新しい学習指導要領で改善を  図った内容に対応した教材・設備を整備する必要がある。さらに、盲・聾  ・養護学校において、児童生徒等の特別な教育的ニーズに応じた指導を可  能にするため、インターネット等を用いた情報ネットワーク環境や一人一  人の障害に対応した最新の情報機器等の設備を計画的に整備することが必  要である。その際、児童生徒等の障害に応じた情報機器等の整備の指針に  ついて検討する必要がある。  教育委員会においては、こうした教材等や最新の情報機器等の整備の必要  性を踏まえ、これからの盲・聾・養護学校等の教育に必要な設備の充実に  努める必要がある。 (3) 盲・聾・養護学校や特殊学級に在籍する児童生徒については、「盲学校  ・聾学校及び養護学校への就学奨励に関する法律」等により、障害のある  児童生徒の就学の機会が阻害されることのないよう、保護者の経済的負担  能力の程度に応じて、交通費や修学旅行経費、学用品費、寄宿舎費等につ  いて、保護者が負担する経費の全部又は一部を国及び地方公共団体が負担  している。本制度については、近年の社会の変化等を踏まえ、対象経費及  び負担割合等について関係団体等の意見を聴取しながら必要な見直しを検  討する必要がある。 (4) 私立の盲・聾・養護学校等は、障害のある児童生徒等の教育に積極的に  取り組み、特色ある教育を行っている。これまで国は、私立の盲・聾・養  護学校の教育条件の維持向上や、児童生徒等の経済的負担の軽減を図ると  ともに、私立学校経営の健全性を高めるため、経常費を中心に補助を行っ  ているが、今後、一人一人の特別なニーズに応じた教育の充実を図るため、  私学助成の一層の充実を図ることが必要である。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ LD NEWS は「まぐまぐ」 http://www.mag2.com/ を利用して発行しています

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