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==================================================================== LD(学習障害)ニュース #218 2001.01.01 発行 登録読者数 2,903 LD = Learning Disabilities LD親の会「けやき」編集 1997.9.10創刊 ==================================================================== ▼ LD親の会「けやき」の会員(正・通信・賛助)になってください! ▼ ▲ 詳細はこちら → http://www.ne.jp/asahi/hp/keyaki/join.html ▲ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ 平成13年度国の施策及び予算に関する要望 全国市長会 2000/11/9 ■ ■ 山口県議会平成12年9月定例会でのLD,ADHD関連質疑(抜粋) ■ ■ 奈良県立教育研究所講座「LD児等への援助や配慮の仕方を知ろう」 ■ ■ 石川県学習障害児親の会(PAL)ホームページが開設されました ■ ■ 関東通産局施策紹介「ITバリアフリープロジェクト事業」(仮題) ■ ■ 【新刊】 全国障害学生支援センター編集 『大学案内2001障害者版』 ■ ■ 兵庫県親の会「たつの子」編集 「たつの子の震災」 1996年春発行 ■ ■ 障害者放送協議会 リアルタイム字幕事業 プレス発表 2000/12/25 ■ ■ 豊川市の少年が「アスペルガー障害」との報道に関してプレス発表 ■ ■ 北大広報誌 -学習に困難のある子どもたち- 北大・室橋春光助教授 ■ ■ 【訂正とお詫び】 LDニュース #217 掲載記事に関して 2000/12/31 ■ □ 編集後記 ------------------------------- 23:05 2000/12/31 □ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■□■□ この LDニュース は「等幅」フォントでお読みください □■□■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ 平成13年度国の施策及び予算に関する要望 全国市長会 2000/11/9 ■ -------------------------------------------------------------------- 全国市長会では、2000年11月 9日開催された理事・評議員合同会議で各支部 から提出された議案に基づいて作成した要望案を審議し、平成13年度国の施 策及び予算に関する要望として、41件を決定。そのうち、「義務教育施策等 に関する要望」の中では、「LD、ADHD等の児童・生徒に対する通級制 度の確立を求める」旨の文言が採択されている。 以下、下記サイトからの転載。 http://www.mayors.or.jp/opinion/youbou/h12.11yosan/shabun/29education.htm −−−−−−−−−−−−− 「義務教育施策等に関する要望」 義務教育等の充実を図るため、国は、次の事項について積極的な措置を講じら れたい。 1.学校教育の充実を図るため、新たな教職員配置改善計画を策定し、教職   員の配置の改善を図ること。 2.学級編制基準の見直し、ティームティーチングの拡充などにより教職員   配置を充実するとともに、弾力化を図り、小人数教育を推進すること。 3.専任の司書教諭の配置について、小規模校も含めて措置すること。 4.小学校専科教員の充実、養護教諭の複数配置の促進を図ること。 5.複式学級解消のため、学級編制基準の改善を図ること。 6.特殊学級の学級編制基準を改善するとともに、重度の障害児が在籍する   学級への介助員の配置について措置すること。 7.帰国子女、外国人子女が多数在籍する学校への配置を充実すること。 8.スクールカウンセラー等をすべての小・中学校に早期に配置すること。   また、心の教室相談員について制度化を図り、配置を促進すること。 9.義務教育諸学校における教職員の給与費について、現行の国庫負担制度   を堅持すること。   特に、事務職員及び栄養職員の給与費等については、国庫負担の対象か   ら除外しないこと。 10.LD(学習障害)、ADHD(注意欠陥・多動性障害)等の児童・生徒   に対する通級制度の確立を図ること。 11.情報教育関連機器整備、教材費に対する財政支援措置の充実を図ること。 12.新しい学習指導要領の移行期間において「総合的な学習の時間」を実施   し、これまでの教科の枠を超えた特色ある教育が展開できるよう、所要   経費について財政支援措置を講じること。 13.幼稚園の運営及び施設・設備整備に対する財政措置を拡充すること。 14.幼稚園と保育所の一元化について、抜本的・具体的な制度の見直しを早   急に進めること。 15.遠距離通学児童・生徒、寄宿舎入居児童・生徒の保護者の負担を軽減す   るために要する経費について財政措置を講じること。 16.21世紀を支える青少年の健やかな育成のため、教育における家庭、地域、   学校の果たすべき役割と連携のあり方及び関連する諸制度について検討   するとともに、都市自治体の取組みに対し必要な支援協力を行うなど、   さらに積極的に対処すること。   特に、少年等による一連の凶悪事件や恐喝事件に関しては、速やかな対   策を講じること。 17.義務教育諸学校等において児童、生徒または幼児の教育に供しているテ   レビのNHK放送受信料免除措置を継続すること。  以上要望する。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ 山口県議会平成12年9月定例会でのLD,ADHD関連質疑(抜粋) ■ -------------------------------------------------------------------- 山口県議会平成12年9月定例会でのLD関連質疑(抜粋) −−−−−−−−−− http://www.pref.yamaguchi.jp/gyosei/kengikai/gijiroku/h12_9_teirei/honbun/9-13/10.htm 質問者 友田有議員(自由民主党)  二点目は、障害幼児教育相談室についてです。  近年、研究が進み、医学的にも障害の判定範囲が広がってまいりました。  中でも、LD(学習障害)児やADHD(注意欠陥多動性障害)児、自閉 症や自閉的な傾向のある子供などに関心が高まってきており、子供を持った 母親も、幼児期からのいろいろな子供たちからのサインを見きわめ、相談し、 早期の療育にかかることが重要になってまいりました。  このような中、養護学校においては、その地域の施設や行政と積極的に交 流し、意見交換や情報交換の機会をさらに増すなど、この相談室の機能を充 実していく必要があると思われますが、その果たす役割や体制についてどの ように考えておられるのか、お伺いいたします。 −−−−−−−−−−− http://www.pref.yamaguchi.jp/gyosei/kengikai/gijiroku/h12_9_teirei/honbun/9-13/14.htm 牛見正彦教育長 答弁(抜粋)  本県では、全国に先駆けまして、特殊教育諸学校に「障害幼児教育相談室」 を設置をいたしまして、主として就学前の幼児の教育相談に応じまして、年 間二千件を超える相談を受けておるところでございます。  県教委といたしましては、障害児の早期の教育相談が極めて重要であると、 このように考えておりまして、現在、医師、保健婦、児童相談所職員、養護 学校教員等からなる協議会を設けまして、「早期教育相談等のあり方に関す る実践研究」に取り組んでおりますが、今後、医療・福祉・教育のかかわり 方についても検討いたしまして、学校としての望ましい教育相談体制の確立 を図り、「障害幼児教育相談室」の充実に努めてまいりたい、このように考 えております。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ 奈良県立教育研究所講座「LD児等への援助や配慮の仕方を知ろう」 ■ -------------------------------------------------------------------- http://www.kenkyu.tawaramoto.nara.jp/hp/kaiho11.htm を参照。 講 師 大阪教育大学教授 竹田 契一 氏(医学博士) 日 時 2001年1月27日(土)     受付 9時00分〜  講演 9時30分〜12時00分 会 場 奈良県立教育研究所 対象者 県内在住、もしくは県内に通勤している人 定 員 200名 申込法  はがき又はFAXの場合は、講座名「学習障害児等への援助や配      慮の仕方を知ろう」、名前(ふりがな)、住所、電話番号を書い      て下記まで。      電話の場合は直接開放講座係(07443−3−8903)まで。 申込先  〒636-0343 奈良県磯城郡田原本町秦庄22−1      奈良県立教育研究所 開放講座係      FAX(専用) 07443−3−8909 申込期間 2000年12月1日(金)〜2001年1月10日(水) 受講料は無料です。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ 石川県学習障害児親の会(PAL)ホームページが開設されました ■ -------------------------------------------------------------------- http://www.geocities.co.jp/NeverLand/1880/pal.html 石川県学習障害児親の会 (PAL) ------------- パルとは  Parents (両親) And Learning Disabilities (学習障害) の意味を持っています。石川県に住む学習障害あるいは、それに似たその周 辺の子ども達を持つ親の会で1994年5月に発足しました。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ 関東通産局施策紹介「ITバリアフリープロジェクト事業」(仮題) ■ -------------------------------------------------------------------- http://www.kantou.miti.go.jp/sesaku/jouhou/itjigyou.html から転載。 (1) 事業の概要 障害者高齢者等にとって利用しやすい情報通新機器・システムの開発及び実 証実験を行うことにより、障害者・高齢者等がIT経済・社会に積極的かつ 円滑に参画していけるような環境を整備する。 (2) 公募の対象 障害者や心身機能の低下した高齢者等にとって使いやすい情報機器・システ ムの開発及び実証実験について重点テーマを設定して公募を行う。その他有 効なテーマの提案についても公募の対象。 (3) 応募要件 ○申請者は、法人格を有し、かつ、開発・生産能力を有する企業・団体。 ○プロジェクトについては、「事業の計画性」、「実証・評価実験」、「事  業の継続発展性」、「技術の社会性」を要件。 (4) 公募期間 平成13年1月9日(火)〜平成13年2月16日(金) (5) 事業規模  ○総事業額  約5億円(1プロジェクト5千万円を上限)            (契約形態は委託契約) ○採択プロジェクト総数 10件程度 −−−−−−−−−−− http://www.kantou.miti.go.jp/sesaku/jouhou/itjuten.html 【参考】<重点テーマ> 以下の重点テーマについては、いずれも既存製品(パソコン、情報端末等) の改造を要求することなく、接続できたり利用できることを前提とする。 ● 読み書き障害補助システム 学習障害や知的障害等により、電子テキストを読んだり、文章を作成するの が困難な場合が多い。このため、漢字能力に応じた辞書レベルの設定、音声 による読み上げ等の文章の読み書きを容易にするような補助システムの実現 が望まれる。 【対象例】学習障害、知的障害、認知能力の低下した高齢者など ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ 【新刊】 全国障害学生支援センター編集 『大学案内2001障害者版』 ■ -------------------------------------------------------------------- 『大学案内 2001障害者版』が発刊されました。 全国障害学生支援センター編集 発刊 2,600円 http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi?bibid=01970616 全国障害学生支援センター Nation-wide Support Center for Students with Disabilities (NSCSD) http://www2s.biglobe.ne.jp/~t-tsubas/NSCSD/ 大学案内2000障害者版 WEB掲載版 http://www2s.biglobe.ne.jp/~t-tsubas/NSCSD/dg/daig_index.htm ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ 兵庫県親の会「たつの子」編集 「たつの子の震災」 1996年春発行 ■ -------------------------------------------------------------------- 1995年1月17日発生した「阪神・淡路大震災」から6年が経ちました。兵庫県 親の会「たつの子」が、震災の翌年に編集した文集「たつの子の震災」が、 下記で紹介されています。(プライバシー保護のため、全て匿名となってい ます。)  http://www.sanynet.ne.jp/~tatunoko/sinsai/sinsaiFrame-1.htm ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ 障害者放送協議会 リアルタイム字幕事業 プレス発表 2000/12/25 ■ -------------------------------------------------------------------- 障害者放送協議会放送研究委員会から、下記のプレス発表(厚生省関連)が ありましたので、転載させていただきます。 読売新聞12月27日朝刊にも記事が載りました。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−  プレスリリース 2000年12月25日 障害者放送協議会放送研究委員会                           委員長 河村 宏 リアルタイム字幕送信事業の開始について  障害者に関わる中央19団体で構成する障害者放送協議会(村谷昌弘会長) は、障害者が情報にアクセスする権利を確立するために、著作権法の改正 (「著作権法及び万国著作権条約の実施に伴う著作権法の特例に関する法律 の一部を改正する法律」)を推進し、文化庁と協議を重ねてまいりましたが、 本年5月8日に念願の法改正が実現しました。  本法律の施行日である平成13年1月1日午前零時を期して、文化庁長官より 新たにリアルタイム字幕送信事業者に指定された社団法人全日本中途失聴・ 難聴者団体連合会および財団法人日本障害者リハビリテーション協会は、リ アルタイム字幕送信事業を開始いたします。 ● リアルタイム字幕とは 現在、テレビ放送等で字幕の付いた番組は大変限られています。聴覚障害者 など、テレビ放送等の音声を聞くことができない人は、放送の映像を見るこ とはできても、情報を理解することが困難です。 テレビ放送等の音声を聞くことができない人のため、これまでインターネッ トなどのネットワークを使って、音声を字幕化し送信する活動が、ボランテ ィアの手によって行われていました。しかし、字幕を送信するためにはその 都度著作権者の許諾を得なければなりませんでした。 今回の著作権法の改正により、政令で指定された事業者は「専ら聴覚障害者 の用に供する」目的で、テレビ番組など「放送され、又は有線放送される著 作物の音声」を字幕化してインターネットで送信を行うことが、著作権者の 許諾を得ずに行うことができるようになりました。これがリアルタイム字幕 です。 お問い合わせ先 日本障害者リハビリテーション協会 情報センター長 河村 宏  090-4740-4574 または 03-5273-0601               E-mail rtcap@mx.normanet 関連情報URL    http://www.normanet.ne.jp/~rtcap/ -------  障害者放送協議会構成団体一覧 (平成12年12月25日現在) 1. 社会福祉法人 日本身体障害者団体連合会 2. 社会福祉法人 日本盲人会連合 3. 社会福祉法人 日本盲人社会福祉協議会 4. 財団法人 全日本ろうあ連盟 5. 社団法人 全日本難聴者・中途失聴者団体連合会 6. 社会福祉法人 聴力障害者情報文化センター 7. 社会福祉法人 全日本手をつなぐ育成会 8. 財団法人 日本知的障害者福祉協会 9. 財団法人 全国精神障害者家族会連合会 10. 社会福祉法人 全国精神障害者社会復帰施設協会 11. 全国社会就労センター協議会 12. 共同作業所全国連絡会 13. 身体障害者福祉センター全国連絡会 14. 日本障害者協議会 15. 社会福祉法人 全国社会福祉協議会 16. 社団法人 日本自閉症協会 17. 全国要約筆記問題研究会 18. 全国LD(学習障害)親の会 19. 財団法人 日本障害者リハビリテーション協会 問い合せ先  事務局:(財)日本障害者リハビリテーション協会       企画部企画課長 金丸           TEL 03−5273−0601 FAX 03−5273−1523 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ 豊川市の少年が「アスペルガー障害」との報道に関してプレス発表 ■ -------------------------------------------------------------------- 日本自閉症協会東京都支部アスペルガー部会(高機能自閉症・アスペルガー 症候群児者親の会)が、2000年12月26日付けで、厚生省記者クラブにて以下 のプレス発表をいたしました。同部会の許諾を得て転載いたします。 −−−−−−−−−−−−−−−−− 報道関係の方々へのお願い [ 豊川市の17才少年が「アスペルガー障害」との報道に関して ] 12月23日に各新聞等報道機関で愛知県豊川市の事件の少年が「アスペルガー 障害」との記事が掲載されました。私達親は今回の事件の被害に遭われた方 に対し深く哀悼の意を表すとともにこのような犯罪を心から憎むものです。 ただ私達アスペルガー症候群の親達はその報道がもたらす影響について大変 心を痛めて、心配しております。 私達はこの事件の報道にあたられる方々に次のことを配慮してくださいます ようお願い致したいと思います。 (1)アスペルガー症候群は真面目な子が多く、ほとんど犯罪とは結びつか    ないと思います。健常者の犯罪率から考えて、少ないと言えるのでは    ないでしょうか。 (2)今、アスペルガー症候群がどのような障害であるかということは社会    的にほとんど知られてはおりません。今回の報道ではアスペルガー症    候群の一面しか伝えていないと感じられる記事もあり「アスペルガー    症候群」=「危険」というイメージを与えかねない危惧を感じます。    障害特性を理解されていない一般の方々にアスペルガー症候群という    言葉だけが、悪いイメージを持って一人歩きしてしまわないかという    懸念を禁じ得ません。 (3)アスペルガー症候群児・者は言語の理解能力を普通に持っている人達    です。非常に感じやすい面もあり、今回の記事が本人達に与える影響    が心配されます。本人達が不安を増大させないように、報道への配慮    を切にお願いします。特に視覚刺激を強く受けることから「アスペル    ガー」という人目を引く見出しは避けて頂きたたいと思います。 (4)親達は日頃、アスペルガー症候群の障害特性を社会に理解してもらえ    ずに、悩み傷ついています。この報道で親達はさらに社会の正しい理    解が得られにくくなるのではないかとの心配を増しております。皆様    にもアスペルガー症候群児・者を理解してくださるよう心からお願い    いたします。 (5)アスペルガー症候群児・者の中には成人になるまで障害と知らずにい    た者も多く見受けられます。かれらは周囲から理解されずに非常に孤    独な生活を送っていることが想像されます。これは一つはアスペルガ    ー症候群に対応する医療機関が非常に少なく診断までなかなかたどり    着かないため、また教育や福祉に関係する方々でも彼らを理解してい    る方は限られているためです。医療、教育、福祉関係者の方がもっと    理解を深め、連携して彼らを支えるなら、彼らはより柔軟に社会に適    応し、安定して生活できるものと思います。 以上のことをご理解頂いて今回の報道にあたられますよう私達親は皆様にお 願いしたいと思っております。                       2000年12月26日             日本自閉症協会東京都支部 アスペルガー部会            (高機能自閉症・アスペルガー症候群児者親の会) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ 北大広報誌 -学習に困難のある子どもたち- 北大・室橋春光助教授 ■ --------------------------------------------------------------------  北海道大学広報誌 Academia Populi 研究紹介 室橋春光助教授  「学習に困難のある子どもたち」が下記サイトから閲覧できます。  http://www.hokudai.ac.jp/bureau/populi/edition06/academia.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ 【訂正とお詫び】 LDニュース #217 掲載記事に関して 2000/12/31 ■ -------------------------------------------------------------------- LDニュース #217 掲載記事に関しまして、読者の方より以下のようなご意見 の投稿をいただきました。ご指摘の通り、当該引用部分につきましては、配 慮に欠けた内容・表現でありましたので、削除していただきますようお願い 申し上げます。また関係各位の皆さまにはご迷惑をおかけいたしましたこと、 お詫び申し上げます。なお、バックナンバーにはシステムの仕様上やむを得 ずそのまま掲載がされておりますこと、一言申し添えておきます。 −−−−−−−−−−−−−−以下投稿(本文)−−−−−−−−−−−− LDニュース(#217 2000.12.27 発行)記事「主婦殺害の少年『責任能力は限 定的』精神鑑定結果−名古屋家裁」において、 −−−−−−引用開始−−−−−−  犠牲者の方や遺族には大変気の毒であるが、犯人の少年が偶然「アスペル  ガー症候群」を持っていたかもしれないということであり −−−−−−引用終了−−−−−− 上記引用部分についてですが、このような記載は不適切な表現・内容である と思います。このような表現・内容は、まさに遺族の被害感情を逆撫でする 以外、なにものでもない表記です。まるで、「被害者は相手がアスペルガー 症候群の少年だったので運が悪かったということであり」と捉えかねない表 現であり、被害者や遺族には耐えられないものと思います。 LDニュースはこの種障害を理解するため大きく貢献しており、この分野で は半ば公的なものとして捉えている読者が大半だと思います。それにもかか わらず、このような一方にのみ加担するが如き誤解を招く表現はLD理解の 道を閉ざすことにも成りかねないものです。私は検察官を職業としており、 様々な被害者や遺族の方々と接していますが、今回の表現は遺族にとって耐 え難いものと思います。どうか今後、この点にもご配慮の上掲載をお願いし たいと思います。 次に、この事件及び今回の件についての所感を述べたいと思います。(以下、 意見にわたる部分は私見であることを予め申し添えます。) 1 発達障害を知るに至った経緯及び犯罪との関連性等について 私は検察官として犯罪の捜査・公判などの仕事をしています。札幌に赴任し ていたときにLD親の会を知り、入会して学習障害をことを知りました。ま た、子供が高機能自閉症であったことから、LDの外、高機能自閉症、アス ペルガー症候群、ADHDなどについても研鑽する機会があり、現在、仙台 でLD親の会、高機能広汎性発達障害親の会、ADHD親の会の事務局や顧 問などをしています。 このようにして各障害についての認識が深まるにつれ、犯罪を犯した側、あ るいは被害者側の立場にある方の中にも、これらの障害を有しているのでは ないかと思われるケースが少なからず存在することが分かってきました。当 事者の生育歴などを聴取した際、これまで児童相談所や病院などでこれら障 害についての判定を受けていたことが判明するケースなどもあり、何らかの 関連性があるのではないかと考えていました。 しかし、これまで、例えば当事者やその家族、弁護士などから、これら障害 を有していることや、それが犯罪の成否に関係するという主張はまだまだ少 ない状況にあり、今後、障害を抱えている方の人権を尊重するため、法律的 な支援体制を構築することが必要不可欠と考えます。そして、社会一般にお いて、これら障害に対する認識と理解が十分でないことと同様に、司法の場 においてもこれら障害が十分に認識されているとは言い難く、更なるが研鑽 が必要であると思いますし、私自身もその啓発に尽力したいと考えています。 2 今回の事件及び報道等について ところで、今回の事件を起こした17歳の少年の精神鑑定の結果アスペルガ ー症候群であったことが大きく報道され、アスペルガー症候群が世間の耳目 を集めていますが、このことについて以下の点について憂慮しています。 ひとつは、LDニュースでも指摘しているように、アスペルガー症候群が正 しく認識されずに誤解され、その障害を抱える方やそのご家族などが偏見の 目でみられるのではないかという点です。この事件を起こした17歳の少年 はアスペルガー症候群と診断され、責任能力については心神耗弱(しんしん こうじゃく)と判断されています。「心神耗弱」について若干説明しますと、 刑法では心神喪失(しんしんそうしつ)と心神耗弱(しんしんこうじゃく) について規定があります。 心神喪失とは、精神の障害により、自分が行っている行為の是非や善悪を弁 別する「能力がない」状態、または、この弁別に従って行動する「能力のな い」状態をいいます。そして、心神喪失者は常に責任無能力者とされ、刑法 第39条1項の規定により、その行為は処罰されません。これまでの裁判例 では、精神病に罹患して病状が重篤である場合や重症の痴愚段階にある場合 などに心神喪失と認定されています。 これに対し、犯行時精神の障害により自分が行っている行為の是非や善悪を 弁別する「能力が著しく低下」していたり、この弁別に従って行動する「能 力が著しく低く」なっている状態を心神耗弱と言います。この場合、責任能 力が完全ではないという意味で限定責任能力と呼ばれ、刑法第39条の2の 規定により、その刑が減軽されます。刑が減軽されるとは、犯罪を行って裁 判を受ける場合でも、判決で言い渡される刑が通常の場合よりも軽くされる という意味になります。ちなみに心神喪失者の場合、責任無能力でその行為 は処罰されませんから、捜査段階で心神喪失が明らかな場合、裁判を行うこ とはありません。そして、その本人は病院に収容されることが一般的です。 今回、17歳の少年は精神鑑定の結果、アスペルガー症候群と診断された上 で、本件犯行時、心神耗弱状態にあり、限定責任能力と判断されましたが、 新聞報道等の中にはアスペルガー症候群と報じた上で、限定責任能力の部分 を殊更を全面に打ち出したものも見受けられることから、読者は、アスペル ガー症候群の人はみんな心神耗弱で判断能力が欠けていると誤解するおそれ がある点、憂慮すべきことと考えます。 アスペルガー症候群の障害の内容や程度が個々人によって様々であることは 言うまでもなく、今回の鑑定結果も「犯行時」は心神耗弱の状態と認定した だけで、常に心神耗弱と認定した訳ではないのですが、今回の報道でアスペ ルガー症候群に関し、限定責任能力と言う言葉や心神耗弱という言葉のみが 一人歩きしてしまい誤解を招くことが憂慮されます。 2番目は、アスペルガー症候群が誤解され、偏見を受けることにより、この 障害を抱える子供の親御さんなどが、子供の在籍する学校や地域の方或いは 職場などにアスペルガー症候群であることを表明したり、理解を求めるのが 困難になるのではないかという点です。 私も、障害を抱える子供の父親ですから、その障害のことを学校や地域の理 解を得るためにこれを話そうとした際、偏見を持たれてしまい、誤解を受け るのではないかと不安になり、結局あいまいにしてしまうのではないかとい う気持ちを持つことは痛いほどよく判ります。しかし、そのことで子供自身 が適正な教育を受ける機会を逸してしまうことになれば、結局、子供自身が 不利益を被ることに帰着するという不幸な結果を招きかねません。今回取り 沙汰されているアスペルガー症候群についてこれまで一生懸命これを支援し ている方々の活動が結果的に制限される事態になるのではないかと憂慮して います。 3番目は17歳の少年の側に報道が傾きすぎて、被害者の気持ちが配慮され なくなる恐れがある点です。ご承知のとおり、この事件は5月1日午後6時 ころ、愛知県豊川市内で主婦が少年に頭部を金づちで殴られた上、首や顔な ど約40か所も包丁で刺されて殺され、帰宅直後のご主人も切りつけられる などをして傷害を負った事件です。そして、ご主人は事件直後に「一生懸命 に働いてきた妻を、何の関係もない犯人の残忍な犯行によって失ったことに、 言葉にならない悲しみを感じています」と書面で心境を伝え、その後、事件 を思い出したくないと取材にも口を閉ざし、現在リハビリを続けておられま す。 自分の妻が目の前で惨殺され、自らも傷害を負ったご本人の精神的な苦痛が どれほどのものか、私達がこれを想像することすらできない程、深刻なもの であることはいうまでもありません。それは今回の事件を自分が遭遇した事 件と立場を替えて考えれば判ることです。このように言いようのない悲しみ のただなかに現在もおられる方がいることを忘れてはならないと思います。 17歳の少年がアスペルガー症候群と知って、その悲しみが癒えるでしょう か。アスペルガー症候群だから犯行に及んだのか、どうして適正な療育が施 されなかったのかという疑問や無念の思いが募るばかりではないかと推察い たします。 今後、少年は医療少年院に入院して更正の道を歩むことになりましたが、今 回の事件の被害者の方は、あのような形で無惨にも自らの「生命」を、そし て「人生」を絶たれたもので、無念の思いで一杯だったことは当然で、添え る言葉もみつかりません。このような見地からすれば、今回、LDニュース に掲載された「犠牲者の方や遺族には大変気の毒であるが、犯人の少年が偶 然「アスペルガー症候群」を持っていたかもしれないということであり」と いう書き方が、被害者側に立たれされておられる方々の心情を十分にくみ取 り、これに配慮した記載方法といえるのでしょうか。編集部としての見解を お聞かせいただきたいと思います。             藤原 靖 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ □ 編集後記 ------------------------------- 23:05 2000/12/31 □ -------------------------------------------------------------------- 新年おめでとうございます。いよいよ21世紀の幕開けです。皆さまにとっ て良い年となることをお祈り申し上げます。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ LDニュース記載内容を転載される場合は必ず下記までご連絡下さい ■ 「けやき」連絡先 E-mail: keyaki@box.club.ne.jp [1999.03.12 更新] 「けやき」URL: http://www.ne.jp/asahi/hp/keyaki/ [1998.07.31 更新] i-mode URL: http://www.ne.jp/asahi/hp/keyaki/i/ [2000.05.10 更新] LDニュースのバックナンバーの閲覧については以下のサイトからできます http://backno.mag2.com/reader/Back?id=0000000592 [2000.12.21 更新] LDに関する情報交換・意見交流・質問は「LDフォーラム」をご利用下さい LD-FRM http://www.ne.jp/asahi/hp/keyaki/LD-FRM/ [2000.08.17 更新] ■ 編集者は掲載内容に関して最終保証責任を負うものではありません ■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ LD NEWS は「まぐまぐ」 http://www.mag2.com/ を利用して発行しています

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