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==================================================================== LD(学習障害)ニュース #174 2000.06.30 発行 登録読者数 2,558 LD = Learning Disabilities LD親の会「けやき」編集 1997.9.10創刊 ==================================================================== ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ 【新刊】バークレー先生の「ADHDのすべて」 2000/6/25 ヴォイス社 ■ ■ 第145国会 衆議院青少年問題に関する特別委員会会議録1999/04/15 ■ ■ 第146国会 衆議院 文教委員会 会議録 [抜粋]  1999/11/09 ■ ■ 第147国会 参議院 予算委員会 会議録 [抜粋] 2000/03/13 ■ □ 編集後記 ------------------------------- 20:51 2000/06/29 □ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■□■□ この LDニュース は「等幅」フォントでお読みください □■□■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ 【新刊】バークレー先生の「ADHDのすべて」 2000/6/25 ヴォイス社 ■ -------------------------------------------------------------------- 以下のような新刊書の案内を編集担当者からいただきました。 −−−−−−−−−−−−−− 【書 名】バークレー先生の「ADHDのすべて」 【原 題】Taking charge of ADHD:     The complete, authoritative guide for parents.(1995) 【著 者】ラッセル A.バークレー Russell A. Barkley, Ph.D.      マサチューセッツ大学医療センター心理学主任精神・神経学教授 【訳 者】海輪由香子 都立大人文学部卒(心理学専攻)翻訳業 【監 修】山田 寛 東大医学部卒(精神科医)           都立松沢病院勤務後ヤマダ神経科クリニック開業 【出版社】株式会社 ヴォイス      〒106-0031 東京都港区西麻布3-24-17 広瀬ビル2F      TEL 03-3408-7473 FAX 03-5474-5808 【発行日】2000年6月25日 【定 価】2,800円(本体) 【 ISBN 】4-900550-88-4 【目 次】 序  ADHDの子供をもつ親のための基本理念  第1部  ADHDを理解する   第1章  注意欠陥多動性障害とは   第2章  ADHDに関する新しい理論   第3章  ADHDの原因は何か   第4章  ADHDとはどういう障害か   第5章  ADHDの子供との家庭生活  第2部  ADHDを引き受けて立ち向かう       −最終決定権をもつ親としてうまくふるまうには   第6章  子供にADHDの診断を受けさせる   第7章  評価に際し知っておくべきこと   第8章  ADHDの診断に対処する   第9章  ADHDの子供を育てるときの十の方針   第10章  とくに両親のために−自分自身のケアの仕方  第3部  ADHDの子供との毎日−アメリカの家庭・学校での対処法   第11章  行動を良い方向へ導く八つのステップ   第12章  家庭での対応−問題の解決法   第13章  友達とうまくつき合えるようにする   第14章  ADHDの子供の思春期   第15章  学校へ行く−スタートでつまずかないために   第16章  学校と家庭で教育効果を高める−幼稚園から高校まで   第17章  学校での成績にとらわれない  第4部  ADHDの薬物療法   第18章  刺激剤による薬物療法   第19章  そのほかのADHDの薬  インタビュー  日本のADHDの状況と今後の展望  医療機関・支援団体・教育関係相談口リスト  参考図書 ・編集協力 えじそんくらぶ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ 第145国会衆議院 青少年問題に関する特別委員会会議録1999/04/15 ■ --------------------------------------------------------------------  注1)会議録から、小田晋参考人の「参考意見」の発言部分を抜粋。  注2)小田晋氏は国際医療福祉大学教授 −−−−−−−−−− ○小田参考人 お招きいただいて光栄です。  私は精神科の医者でございますので、精神科医になりまして直後、東京医 療少年院というところの技官を務めました。その後、犯罪精神医学の研究室 に勤めながら東京少年鑑別所、練鑑の鑑別技官を十年務めまして、最近は、 精神鑑定という形であるいは御両親からの相談という形で少年問題にかかわ っています。  その間に少年は随分変わってきました。少年法制定当時の昭和二十年代の 少年非行観では、今日の少年問題は扱えないんじゃないかという印象がだん だん強くなってきました。  今日の荒れる教室とか学校崩壊とか対教師暴力、いじめの深刻化、非行、 犯罪の凶悪化という一連の現象についての誤った処方せんというのがありま して、これは、私たち医者の立場からいえば、誤った診断からきていると思 います。  つまり、一つは管理教育及び受験戦争、学力偏重の教育が落ちこぼれを生 み、子供たちのストレスを増加させているんだから、まずこれを取り除くこ とが必要です。子供たちの問題行動は子供たちの欲求不満に基づいているん だから、直接に問題行動を解決しようとしても対症療法にすぎない。子供た ちの自主性を認めることが第一で、例えば一斉着席授業をやめる、成績評価 を廃止する、学校での国旗の掲揚、国歌の斉唱をやめる、学校に子供の解放 区を設けて、そこに教師は立ち入れないというようにし、子供の自主性を重 視するようにすれば子供のストレスが緩和されるので問題行動は減るであろ う。それ以外のそのためのアドホックの措置は一切むだであるというもので ありました。  この種の議論の中には、例えば神戸小学生殺害事件の犯因は、コンビニも なくディスコもない清潔な地域環境が子供に欲求不満をもたらしたことにあ るという議論がありまして、これを唱えた方の議論は、今日、行政の中でも かなり重視されていると聞いています。  もちろん、青少年白書平成十年版に見られる青少年をめぐる現状と問題と か、それから第百四十五回国会衆議院青少年問題に関する特別委員会におけ る総務庁長官説明要旨、平成十一年三月三十一日、これに見られる政府の現 状認識はこれとは異なっておりまして、おおむね正しい認識に立脚している のでありますが、しかし、上記の議論は余りに声高であり、有力なマスメデ ィア、大学関係者、精神科医、法律家の一部によってありとあらゆる形のさ まざまなバリエーションによって主張されるので、現場では混乱を来してお りまして、いかなる方針が一応打ち出されても、国会において明確な立法措 置、附帯決議、その他の対策が打ち出されない限り、具体的な効果は中和さ れて消滅してしまうおそれがあると思います。さらに、行政の一部も、これ らの議論に同調したり妥協するのを良心的、先進的であると考える傾向があ るようであります。  感情的で、一見もっともらしい議論によるのではなくて、具体的に考えて みれば、上述のような議論はその前提を欠いていることがわかります。  いわゆる管理教育、受験偏重の教育の弊害をだれも否定しません。否定し ませんが、今日の子供たちの荒れの原因が子供たちのストレスの増大に帰せ られるかどうかについては疑問があります。  つまり、社会病理学的に見て、ある集団に限って加わっている社会的なス トレスは、その集団における自殺率の向上にまず反映をします。例えば企業 の経営者、管理者の自殺率は、職業別に見た人口比から見れば最も少ない部 類に属するのでありますが、それでも企業の倒産件数とかなりてきめんに対 応します。  平成六年以後のいわゆるバブル崩壊の影響は、男性の中高年者の自殺率の 急上昇として表現されています。第二次世界大戦後の家庭の変化、高齢化社 会の影響は、一貫して変わらない七十歳代のとりわけ女性の自殺率の上昇に 示されています。二十歳未満の青少年の自殺者数は、昭和三十年代初頭まで 一貫して年間二千四百人前後でありまして、この年齢層にピークがあるもの を日本型と呼んでいました。しかし、このピークは、昭和三十四年以後ほぼ 急激に消滅しています。加齢とともに人口十万人当たり自殺率も上昇するハ ンガリー型に変わります。昭和五十年代以後、五十歳代の男性のみにピーク が来て、六十歳代で一たん下降するというフィンランド型に変わっています。 その間、少年総数の著しい増加にもかかわらず、二十歳未満の自殺者数は五 百人前後を動いていません。これは、お手元に配付した資料がございますが、 その一番最後に警察白書から転載しておきました。岡田有希子現象と言われ るようなタレントの自殺の信号作用に誘発される自殺が一過性の自殺の増を もたらしているだけです。  一般に、自殺率の高い国は殺人率も低く、その逆も真であると言われてい たのですが、日本は両者とも低いと言われてきたのに、少年犯罪率だけが上 昇の傾向にあり、凶悪犯、殺人、強盗、強姦及び放火と、粗暴犯、暴行、傷 害、脅迫、恐喝で逮捕された少年の数、検挙人員に占める少年の割合が増加 傾向にあります。平成十年における少年非行の人口比は、英国についに追い ついています。  もちろん、自殺は一件でも痛ましいことです。とりわけいじめを原因とす る自殺の増加は重大問題なんですが、これに対する対策はむしろ学校内にお ける恐喝、傷害などの犯罪に早期に対処することが必要であるということは、 愛知県西尾市立東部中学校での大河内君の自殺事件の教訓が示しているとお りです。  要するに、少年非行、校内暴力、不登校等の問題行動については、いわゆ る欲求不満攻撃、フラストレーションアグレッション説に基づく説明、二番 目が社会的な抑制機能の低下、つまりアノミー説、三番目は児童生徒の欲求 不満耐性の低下、いわゆるフラストレーショントレランス説の三つの説明可 能性があるわけなんですが、このうち、いわゆるフラストレーションアグレ ッション説、欲求不満が攻撃に向いているという説は、今日成立しないケー スが多くなっていると思います。社会的な抑制機能の低下、つまりアノミー 説、それから子供の方の欲求不満耐性の低下の成立する可能性が高いことが わかります。この辺が取り違えられて議論されているように思います。  とりわけ学校崩壊、対教師暴力、少年非行など攻撃的な問題行動が増加の 傾向を示した期間は、政府が児童の権利条約を批准し、学校現場で体罰禁止 の規制が厳しくなり、偏差値教育の弊害が強調され、少年法の適用に関して 法律家、特に弁護士の側からの発言や具体的事例についての関与が増大する など、むしろ児童や生徒に対する管理的な圧力は減少の方向をたどった時期 と同期しています。  もちろん、人権を守ることはいかなる場合でも重要です。これらの措置が 不要であったというわけでもありません。児童生徒が人権の意味を正しく理 解すれば、長い目で見て、他者の人権や権利の乱用の抑制が期待できるとい うこともあるだろうけれども、しかし、少なくとも、現在のところ、現在ま でにとられてきた許容的な措置、これは許容主義、パーミッショニズムと言 うんですが、許容的な措置は青少年の問題行動を抑制する方向には働いてい ません。むしろ、これは上記の二、三の仕組みを通じて促進的に作用してい るとさえ言えるんだと思います。  最近の教育現場とか少年補導とか矯正の現場での動向は、いわば許容主義、 パーミッショニズムの方向に沿ったものであったと言っていいだろうと思い ます。それは、場合によっては拡張解釈され、誤用された自由と、人権の名 のもとに、子供の社会的成長のために必要な抑制能力や畏敬の心を根こそぎ にしてしまうように作用したんです。  それは、認識的には、つまり考え方の上からは、次の三つの間違った考え 方の上に立っています。  一つは、子供の心は白紙かあるいは天使のようなものであり、社会の管理 や抑圧や競争主義が子供に不満や攻撃性を蓄積させ、それが犯罪、非行、無 気力の原因となる。学校現場に今導入されつつあるカウンセリングも多くは この考えに立ち、来談者、やってくる子供のことですが、子供を受け入れる ということをその主要な方法としています。  二番目は、子供の心は社会の反映であり、社会が悪く、例えば成人が汚職 その他の不正をするから子供が悪いことをするのである。  三番目は、人権を尊重し、子供の自由の範囲を拡大するのは世界的な動向 であり、日本も国際化のためにそれに追随すべきであるというんです。  しかし、現実には、現在の青少年の問題行動に関する限り、この一、二、 三はいずれも実際は成立しないようです。  一つは、人間の行動についての精神医学的、心理学的な見方や治療や行動 修正の技法は、近年は、世界的にはむしろカウンセリング理論よりも行動科 学的な観点が有力です。  人間行動は、基本的にはそれによって何が結果として期待し得るかという ことに左右されるわけで、とりわけ情報化社会の今日、子供は校内暴力、い じめ、非行、薬物乱用についてこの程度のことをすればこの程度の反応を期 待できるという相場ないしスタンダードに敏感になっています。もうそろそ ろ十八、二十歳になるから暴走はやめようやというようなことを本当に口に 出すんですね。そうして、バックレ同盟というのが北海道にありまして、お 互いに暴走をしてもそんなことはしていないと言い張ろうということで、口 裏合わせを初めから合意していた集団さえあります。  保護主義と誤解された人権の名のもとに重大な非行が処分されず、しら切 り、ごね得、口裏合わせ、こういう言葉があるんですが、これによって中学 卒業までは何をしても見て見ぬふりをされるか、あるいは不処分とか保護観 察で通ってしまうということでは、かえって遵法精神や法意識を喪失させた まま社会に送り出すことになります。それは保護の名にも教育の名にも値し ません。  二番目は、成人たちの汚職や不正が、それを大人たちが行っている間は子 供たちに何も言う資格がないというふうに拡大解釈されるのでは、およそ理 想社会があり得ない以上、理想社会が成立するまで教育はあり得ないことに なります。そのような議論は議論の名に値しないと思います。  国際化の議論が実際あるのでありますが、そして、それは場合によっては 国際条約の名によって主張されるんですが、今日の人権先進国を含めての教 育や少年問題についての動向に逆行します。教室での一斉着席授業、基礎学 力の重視、校内暴力に対する教師の物理的対応を一定の限度で認めること、 これは英国ですが、非行に対するより厳しい対処等は英米を含めた先進国の 動向です。児童の権利条約にも、これに抵触する条文は存在しません。  ゆとり教育の名のもとに中高校終了時の基礎学力が低下し、自由の名のも とに生徒の団体行動における規律を守る能力が消滅するなら、我が国の現在 の経済を辛うじて支えている製造業勤務者の能力は低下せざるを得ないんで す。教育は企業のために奉仕すべきではないということはよく唱えられます けれども、市場経済とそれを支える産業を効率よく作動させるということに は国民的な合意が存在すると言っていいのではないでしょうか。  許容主義の一つの動向として、依存性薬物、特に大麻、マリファナの乱用 を合法化し、かつ少女売春を援助交際という風俗として美化して、これらに 対する法規制を撤廃しようという動向が存在しました。この際には、マスメ ディアまでを利用して、少女たちに自分たちは限度を心得てやっていると言 わせ、自治体の条例制定を妨害しようという有力な運動さえ存在したんです。  少なくとも援助交際が少女売春にすぎず、それに伴うすべての社会病理を 生み出すことが判明した今日でも、そのような運動、言論を行った人たちは 責任を感じている兆候はありません。もちろん、少女買春は性的虐待の一つ として買春者を罰することも必要なんですが、少なくとも違法行為を行った 者として少女をも補導の対象にするのでなければ、少女たちの倫理観の崩壊 を社会として防止することに手をかしたことにはなりません。  さらに、子供はその発達段階に応じてふさわしい教育を受けなければなり ません。乳児期には全面的な愛と受容によって情性を育て、幼児期にはしつ け、少年期には教え、思春期には考えさせ、同時に法と宗教の存在に直面さ せることが必要で、このプログラムが逆転しています。むしろ、乳児期にお ける母子の接触が不十分で、幼児期になってから、勉強勉強、早く早くとい って介入をする子育てというのが大変問題だと思います。  現状認識及び対策に関しては、とりわけ初め申し上げましたような三月三 十一日の総務長官説明要旨、青少年白書における提言は評価できるんですが、 次のような具体的な問題を指摘してみたいと思います。  一つは、乳児期における母親剥奪状況。つまり、乳児期において母親を剥 奪してしまいますと、子供の情緒的成長が阻害されるという議論についても、 またこれは異論はあるんですが、異論がないのは例えば哺乳動物、特に霊長 類の場合なんですが、霊長類の子供を母親から全く引き離して、哺乳瓶を突 き出してミルクを吸わせて育てるという育て方をしますと、この猿は長じて も成人の猿の仲間に入れません。ほかの猿を無差別に攻撃するので、さらに 向こうから攻撃されて、自分のおりの中に帰って、体を情動的に揺すってい るという猿になります。さらに、こういう猿も子供を産めるんですね、雌な らば。その子供を決して育てません、引き裂いてしまいます。母性愛はそう いう状況では育たないんです。  そういう状況をつくらないために、今日、母親自立ということが強く主張 されている時代ではある。でも、母親に対する援助、子供を連れての職場託 児所の試みというのは、特に看護婦さんが多くて、看護婦さんが圧倒的に売 り手市場である医療機関では現在成功しています。あるいは子育てNPOと いうようなボランティアまたはファンドの組織の援助が必要だと思います。  それから第二に、女性の自立への社会的プレッシャー、社会的にむしろ現 実の必要以上にプレッシャーが加えられていますので、それが母親としての 本能の抑圧を伴うことがないような、男女を含めての生物としての人の維持 発展、家族の価値、親としての意識を育てるような教育は、教育のすべての 段階で必要です。  今、むしろ、小学校、中学校、高校、大学と段階が上昇していくにつれて、 実は母親には、母性本能というのは本能ではないというような、これは間違 った理論ですが、そういう理論を唱える教官が多く、そういう教育がなされ ているということが問題なんですが、大学でも親業講座というようなものも 考えられていいんです。大学にフェミニズム講座があるんなら、大学に親業 講座ができてもいいんじゃないかと思います。  幼稚園、保育園、保育所段階での最低限のしつけの必要性は確認される必 要があります。しつけない、やり過ぎない保育という美名のもとに、今日、 自由保育というのが行われておりまして、これが実は小学校段階での学級崩 壊の原因に結びつくことを避けたいと思います。  実は、これは日本教職員組合の教研集会で出てきた話ですが、小学校低学 年の学級崩壊は、その地域の自由保育を行っている保育園、幼稚園から何% ぐらいの子供がやってくるかということとかなり密接に相関するという話が 出ているぐらいです。  さらに、教室にじっと座っていられない子の原因はさまざまですけれども、 注意欠落多動症候群、ADHDという子供がありまして、この場合、その子 に引きずられて子供全体が落ちつかなくなってしまう、低学年において教室 崩壊が始まってしまうことがあります。こういう場合、メチルフェニデート という薬物が有効で、米国においてはこの薬物はかなり高頻度に使われてい ますが、日本ではこの薬を精神科医が使おうとしても、子供を薬漬けにした くない、カウンセリングで治してくださいというような無理難題を言われる ので、日本では米国に比べて使用数が少ないんです。米国においてはこの薬 物はかなり高頻度に使われています。家庭における愛の欠如、しつけの欠如 から暴れ回る子になっている場合もありまして、注意欠落多動症候群の場合 でも、軽ければ着席の習慣をつけることができます。  子供の体に教師が手を触れるということを絶対禁忌とする方向に東京地方 裁判所の判決が拡張解釈されつつあるということが、低学年における荒れる 教室化をもたらしているんだろうと思います。それは必ずしも教師の教育能 力だけの問題じゃありません。何が体罰であり、そうでないか、英国の前例 等を参考にしてガイドラインの作成が必要だと思います。  それから、非行寸前のボーダーライン級の生徒に対して、中学は出席停止 以外の手段は何も持っていないということが問題です。  さらに、女教師ナイフ殺人事件等一連のナイフ殺人の背後には、普通の子 が切れたのではなくて、脳波異常に伴う腹部発作及び不機嫌状態や行為障害 が目をつぶって見過ごされていた事例が存在します。  上述のADHDやこの種の事例、さらに思春期における性衝動の高進が犯 罪に結びついた性衝動の事例等には、単なるカウンセリングも教師の理解も 無効なことがあります。精神科校医の採用、とりわけ犯罪精神医学的な素養 と小児精神医学的素養をあわせ持った専門家の養成と配置、養護教員の複数 化と精神医学的教育の重視、学校カウンセラーには来談者中心技法のみなら ず犯罪心理学的、非行臨床的危機介入の技法を教えることが必要です。  少年非行に対しては、校内外を問わず、速やかに必要な処遇が行われるこ とが必要で、これに目をつぶり大目に見ることが保護主義で人権擁護である と考えられてはいけません。現在提案されている少年法改正はなお不十分で、 思春期の加速化、その他発達段階の変化に相応し、かつ非行の重大性をも考 えた刑事処分年齢の引き下げ、家庭裁判所の決定が余りにも加害者優先的で あると考えられた場合の被告側の抗告権の拡大、とりわけ被害者遺族の訴え による検察審査会の介入を可能にし、精神障害を有し、非行がそれに関係す る場合、裁判所が受診を命ずる治療的保護観察の制度化ぐらいは最低限必要 です。  学校は、少なくとも覚せい剤と麻薬や凶器が持ち込まれる場所であっては なりません。一斉所持品検査はすべての民間航空の乗客に対して行われてい ることだし、学校でこれを行うことが違法であるとも、生徒との信頼関係を 破壊することであるとも考えられないということを確認する必要があるだろ うと思います。  現在の学校は、社会変動、文化変容の中で、二十一世紀への軟着陸を模索 しているところです。ここで対応を誤り、社会の解体、学校の解体をもたら してはいけません。そのためには、一見理由がありそうに見えることでも、 それが実行されたときどういう実際的影響があるか、そういうことを予測す ることが必要だと思います。  超過してしまいました。申しわけありませんでした。(拍手) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ 第146国会 衆議院 文教委員会 会議録 [抜粋]  1999/11/09 ■ -------------------------------------------------------------------- ○肥田委員 今の御答弁と関連しまして、統合教育について少しお尋ねした いと思います。  障害を持つ子供たちは、その障害の種類や程度によって盲・聾・養護学校 に就学しております。  実は、先日ですが、「アイ・ラヴ・ユー」という映画がつくられました。 これは、聾者と聴者、要するに耳が聞こえない人と耳が聞こえる人、その人 たちが協力して映画をつくり上げるわけですね。それの主人公でありますヒ ロインの女性がこういうことを言っているのです。その方は耳が聞こえない のですね。一番不安になったことは、要するに、耳が聞こえるたくさんの人 の中に自分がほうり出されたときだと。聾学校では安心でしたとおっしゃる のですね。これは私、大変大事な発言だと思って実はそのテレビを見ており ました。  これはやはり、学校を卒業して突然社会に出てくると、聾学校に分離され ていた自分たちを迎え入れてくれる余地が社会にないように感ずるというわ けですね、たくさんの人がみんな耳が聞こえるものですから。ですから、大 変危険に満ちた世界であるように見えるらしいのです。幼いときから通常、 普通の学校で学んだり健常児とともに育っていれば、そうしたことは余り危 険と感じないし不安も感じられないだろう、そう思うわけです。  要するに、教育分野でバリアフリーがおくれているのじゃないかと私は思 うのです。省庁によっては今バリアフリーに取り組んでいらっしゃるところ はたくさんございますけれども、文部省の障害児と健常児の分離教育はやは り時代の流れに沿わないのじゃないかというふうに私は思います。  障害も個性だ、そういう考え方に立つならば、やはり今文部省が決断をさ れるときじゃないかと思うのですけれども、大臣、いかがでしょう。 ○中曽根国務大臣 統合教育についての御質問でありますけれども、欧米を 中心として行われておりますいわゆる統合教育は、障害のある子供について、 可能な限り通常の学校で教育を受けることができるようにすると同時に、児 童生徒の障害の状況に応じて、特別な学校、学級における指導も行うことと しておるものでございます。  我が国におきましても、障害のある子供が障害のない子供と一緒になって、 運動会やあるいは文化祭、またはクラブ活動等を実施することなどによりま して、さまざまな交流活動の充実に努めているところでございます。  また、今回改訂いたしました盲・聾・養護学校やそれから小中学校等の新 学習指導要領におきましても、交流教育というものについて充実を図ったと ころでございまして、今後とも交流教育の推進に努めていきたい、そういう ふうに思っております。 ○肥田委員 もう交流教育と言っている場合じゃないような気がするのです。  実は、健常児にとっても、障害を持つ子たちの痛みなんかを本当に日常的 に感じる、その日々の繰り返しが私は大事だと思うのですけれども、大臣、 個人的に今どう思っていらっしゃるのでしょうね。 ○中曽根国務大臣 障害のある子供さんが、障害の種類とか程度とかそうい うものにかかわらずに、障害のないといいますか、通常の学級で障害のない 子供さんたちと勉強するということ、つまり統合教育でございますけれども、 これは、障害のある子供さんが適切な教育を受けて社会参加、自立に必要な 力を養うことを困難にする可能性があるのではないか、必ずしも適切な教育 効果が上がるとは考えられないと思っております。 ○肥田委員 私は全く反対の立場をとりたいと思います。というのは、先ほ どの「アイ・ラヴ・ユー」のヒロインの女性がおっしゃっていたように、自 立していくための教育とおっしゃいましたけれども、やはりそれが困難なの ですね、聾学校に隔離されてしまうと。  ですから、やはり行政的に区分するのではなくて、子供たちの選択に任せ るというところまで踏み込んだらどうかと思うのですけれども、いかがでし ょう。 ○中曽根国務大臣 障害のある児童生徒の能力を最大限に伸ばして可能な限 り積極的に社会に参加する人間に育てるよう教育を行うために、就学すべき 学校の決定に当たりましては、その障害の種類と程度、これを十分に考慮す る必要があると思います。このため、学校教育法施行令に規定されておりま す教育措置基準に基づいて、障害の程度の重い児童生徒は盲・聾・養護学校 で、それから、障害の程度が軽い児童生徒は小中学校の特殊学級等で適切な 教育を行うこととされております。  教育委員会におきましては、この教育措置基準に基づく就学指導を適切に 行うことが必要でありますけれども、就学指導を行うに当たりましては、一 方的に教育措置を行うのではなくて、保護者の皆さん方の不安や悩みにもこ たえて、そして、理解と協力を得る教育相談や就学相談が十分に行われるこ とが大切であると考えております。  なお、今後、各教育委員会におきます就学指導等の実情をよく踏まえなが ら、障害児本人または保護者の意向に十分配慮した就学指導のあり方につい て検討していきたい、そういうふうに思っております。 ○肥田委員 文部省が第一歩を踏み出されるときはそう遠くないように私は 思っておりますので、ぜひ私の意見をこれからも述べさせていただきたいと 思います。それでは、学習障害児の教育についてもう一つお尋ねします。  学習障害児、LD児ですね、その調査研究協力者会議が、この七月に文部 省に「学習障害児に対する指導について」という報告を出しました。この報 告では、やはり専門家不足、要するに学習障害というのは一種の機能不全な のですね。ところが、その子供が怠け者であるとか、勉強に身が入らないと か、集中力がないとか、その子供にとっては適切でない評価がされているわ けです。ですから、このLD児につきましてはやはりもっと積極的に、調査 協力校をたくさんつくっていくとか、それから専門家をもっともっと配置し ていくとか、何かもう少し早い対策が必要じゃないかと思うのですが、大臣、 いかがですか。 ○中曽根国務大臣 今委員おっしゃいましたとおり、ことしの七月には学習 障害児に対する指導についての報告書がまとめられました。  そこで、学習障害の定義、それから学習障害児であるかどうかの判断基準、 さらに学習障害児に対する指導方法の基本的なあり方などに関する報告が示 されたところでございます。  文部省といたしましては、この報告を受けて、学習障害児に対する指導方 法のあり方についてさらに調査研究を行うとともに、各学校における指導体 制を整備することによりまして学習障害児に対する指導の充実に努めてまい りたい、そういうふうに考えております。 ○肥田委員 くれぐれもお願いしておきますけれども、今度もまた障害児を 一カ所に集めてほかから隔離するというようなことのないようにお願いした いと思います。 ○中曽根国務大臣 十分先生の御意見を参考にさせていただきたいと思いま す。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ 第147国会 参議院 予算委員会 会議録 [抜粋] 2000/03/13 ■ -------------------------------------------------------------------- ○大野つや子君 次に、LD児、御存じでしょうか。引き続き文部大臣にお 伺いいたしたいと存じます。  平成九年十一月のニューズウイーク誌に、「学べない子供 「学習障害児」 をどう支えるか」と題する記事がございました。そこに、学習障害、いわゆ るLDの早期発見がその子の将来を決め、適切な指導、教育が与えられない 場合に、行動や情緒の問題も起こしやすく、学校を中退する子供も学習障害 のない子供の二倍、やがて犯罪に走るケースも少なくないとの記載がござい ます。  文部省では、学習障害、LDについての定義や背景、見解も示しておられ ますが、文部行政上認知していることと思います。ただ、アメリカでは、一 九六〇年代からLDの研究が進み、LD児に対する公的援助が定められてい ると聞いております。  我が国においては、LD児に対する教育体制がどのように定められ、どの ように行われているのでしょうか。どんな支援体制がなされているのか、国 民の多くは知らないと思います。  そこで、文部行政において、LD児教育にどのような具体的な施策をとっ ておられるのか、今後どのような施策を講じられる御予定があるのか、お聞 かせをいただきたいと思います。 ○国務大臣(中曽根弘文君) 学習障害児、いわゆるLD児でございますけ れども、この学習障害児とは、一般に、全般的な知的発達におくれはないけ れども、読み書き等のうち特定のものの習得と使用に著しく困難を示す子供 たちを言っております。  このLD児の教育につきましては、文部省といたしましても調査研究協力 校を指定しておりまして、指導方法に関する実践的な研究を行うとともに、 これらの成果を踏まえて、理解、啓発のパンフレットや指導用冊子を作成、 配布したりして指導者のための講習会等も行っているところでございます。 私の手元にこういうふうなパンフレットもありますけれども、(資料を示す) こういうものをつくりまして講習会等で広く指導を今しているところでござ います。また、この学習障害児に関する調査研究協力者会議、これを平成四 年から開催いたしまして、昨年の七月に報告書をまとめたところでございま す。  文部省といたしましては、この報告を受けまして、平成十二年度から十五 県に委嘱をして、今、学習障害児に対する判断基準等について実証的な研究 を行うとともに、教育委員会や各学校に対して専門家の巡回指導を行うこと としております。平成十二年度からでございます。また、国立特殊教育総合 研究所におきましても、この指導方法について調査研究を行うこととしてお りまして、これらの調査研究を行うことによって学習障害児に対する指導の 充実に努めてまいりたいと思っております。  御指摘のように、ニューズウイークにも記事が出ておりましたし、アメリ カ等に比べまして大分おくれておりますけれども、今この学習障害児の問題、 私ども大変重要と深く認識して、今後この問題に全力で取り組んでいきたい と思っております。 ○大野つや子君 大臣、ありがとうございました。どうぞよろしくお願いを 申し上げます。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ □ 編集後記 ------------------------------- 20:51 2000/06/29 □ -------------------------------------------------------------------- 前号に引き続き、国会議事録から収集してみました。ADHDのことが国会で議 論されはじめたのは、つい最近ですが、その取りあげられ方には少々疑問を 感じるのは、編集者一人でしょうか?ご意見・ご感想をいただけますと嬉し いです。。。。。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ LDニュース記載内容を転載される場合は必ず下記までご連絡下さい ■ 「けやき」連絡先 E-mail: keyaki@box.club.ne.jp [1999.03.12 更新] 「けやき」URL: http://www.ne.jp/asahi/hp/keyaki/ [1998.07.31 更新] i-mode URL: http://www.ne.jp/asahi/hp/keyaki/i/ [2000.05.10 更新] LDニュースのバックナンバーの閲覧については以下のサイトからできます http://jazz.tegami.com/backnumber/frame.cgi?id=0000000592 [LDNSBK] LDに関する情報交換・意見交流・質問は「LDフォーラム」をご利用下さい http://www.ne.jp/asahi/hp/keyaki/HTML/LD-FRM/INDEX.html [LD-FRM] 読者用「掲示板」 http://www.simple1-j.com/k-bbs/kbbs.cgi?bn=110201 ■ 編集者は掲載内容に関して最終保証責任を負うものではありません ■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ LD NEWS は「まぐまぐ」 http://www.mag2.com/ を利用して発行しています

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